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原初思想|僕の建築家人生を総括する理論の構築

まだまだたくさんの仕事をやってきた。昔を拾い出して思い出しながら今を語ることは楽しいのだが、そろそろ100回を超えたのだから次の段階に入りたいと思うようになった。考えてみるとこの未来への遺言もコロナのお陰だったと思う。積極的に生きているとあらゆる事件がいつもチャンスをくれる。この未来への遺言もそうなのだが、物学研究会も古い皮を脱いで新鮮な気持ちで未来に向かうことができている。

この先に、次に始めようとしている「原初思想」を語るのも毎週一回という訳には行かないのだが、一年はかかるのではないだろうか?これも、コロナがきっかけを作ってくれたのだが、もちろん、大学院生だった時代からすでに始まっている。あの頃、気づき暗中模索してきた多くの「思うこと」がコロナのきっかけでどっとつながってきただけなのだ。それはおおよそ、こんな内容である。

まず、この思想は僕の思想というより僕がまとめただけの野生の人の思い、原初人が世界と出会った時に理解してきた自然な思想である。誰とも共有できる思想だと言っていい。インドや中国の古代思想はきっとこんな風に生まれたのだろうと思う。そこからも学んでいる。もう一つは、物学研究会では「産業の文脈から文化の文脈へ」と言っているのだが、その文化の文脈からさえ脱出していたいと思っている。文化などという衣装を着ない裸の思想でありたいと思っている。文化とは記憶と願望の集積だと僕は定義づけているのだが、その記憶や願望はあっても集積し社会化した作法や美意識とは離れていたいと思っている。もっと生理的で本質的なものを探している。

この思想の出発点は建築を脱ぎ捨てて物で考えようとすることだった。物学という概念を発見することから始まっている。おそらく出発点は僕が27歳だったころの、早稲田大学理工科大学院の頃からだろう。そして、GKインダストリアルデザイン研究所で研究生を務めていた頃からの発想である。だから、今、物学研究会で「Kuro Lab」として語り始めてもいる。

思想の内容はざっとこんな感じである。
物があれば間が生まれる。物が無数になればその周りに間を伴いながら壮大な群れができる。群れはその数に限定はないし完成形もない。群れの一つずつの物は主体性を持っている。それぞれが分かれて集合している。その間には猛烈な共振がある。無限の物と物は共振しあってオーケストラのような音楽を奏でている。それも終わりのない音楽だ。脳細胞は1000億から2000億個あると言う、その全てが共振して人は閃きを見せている。人間の身体も細胞の群れなのだが、日本の書院造も神々を意味する「柱」の群れとして作られている。

都市は物質だったが今では人の群れである。世界を群れと考えることで色々な発見がある。創造はないな発見があるだけだ、設計より編集の時代になったな、物質から逃れることが大切であり意味こそ全てだ、空間や時間や世界などの全体概念はキリスト教的なヨーロッパの思想である。自然と言う概念は考え直さないといけない。組織や装置の概念を溶解させて群化することが色々な世界で大切だ・・・。デジタルは世界を群化した。世界の流動性や瞬発力は組織では対応できない。・・・こんな話をしていきたい。

未来への遺言はこれまでの僕の過去を語ってきたが、この辺りで一旦休止して次は未来を語っていきたい。

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《黒川 雅之》
愛知県名古屋市生まれの建築家・プロダクトデザイナー。
早稲田大学理工科大学院修士課程卒業、博士課程修了。
卒業後、黒川雅之建築設計事務所を設立。
建築設計から工業化建築、プロダクトデザイン、インテリアデザインと広い領域を総合的に考える立場を一貫してとり続け、現在は日本と中国を拠点に活動する。
日本のデザイン企業のリーダーが集う交流と研究の場 物学研究会 主宰。

〈主な受賞歴〉1976年インテリアデザイン協会賞。1979年GOMシリーズがニューヨーク近代美術館永久コレクションに選定。1986年毎日デザイン賞。他、グッドデザイン賞、IFFT賞など多数。

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