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記憶冷凍

あなたの記憶、冷凍保存します!
というサービスがあった。

人々は、忘れてしまいたい嫌な記憶
忘れたくない大事な記憶などを
その冷凍サービスに預けた。

その人の寿命が尽きるまで保存が可能だが、好きな時に、解凍して持ち帰ることもできる。

しかしある日、電源の異常で冷凍庫の中の記憶が溶け出してしまった。
溶けた記憶は、持ち主を探して空中に飛び立った。

楽しかった記憶は、弾みながら飛んでいったので、他の人の記憶とぶつかるうちに、混ざり合って記憶が改ざんされてしまった。

楽しい記憶同士は、さらに楽しい記憶になった。

楽しい記憶のエネルギーは大きく、辛かった記憶、嫌な記憶は、楽しい記憶とぶつかると、その記憶があったからこその楽しい記憶へと変化して、持ち主の元に戻った。

それらは頭から消していた記憶だったので、人々は預けたはずの記憶が戻ってきた事に気付かず、改ざんされた記憶が自分の記憶だと思い込んだ。

おかげで、人々はとても幸せな気持ちになった。

本文ここまで 410文字

これはたらはかにさんの企画
♯毎週ショートショートnote
に参加した物です。

嫌な記憶、辛い記憶は、思い出してクヨクヨするより、冷凍して心のどこか遠くに追いやってしまいたい。

何年かして、その記憶さえも私の一部だと受け入れられる日が来る時まで…

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