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なぜラグジュアリーブランドは「No.1訴求」を使わないのか

商品やサービスの宣伝文句として業界問わずよく使われるNo.1訴求(他社や他社商品と比較したナンバーワン訴求)は顧客を引きつける効果が高いのですが、いわゆる超高級ブランドといわれるラグジュアリーブランドの商品には使われません。

理由は以下の2つが考えられます。

  • ブランド戦略・世界観に合わない

  • No.1訴求に魅せられて購入する層がメインの顧客層ではない

ブランド戦略・世界観に合わない

前者は、超高級ブランドが築いたブランド戦略や世界観をNo.1訴求が壊してしまうためです。

製品ごとに4Pを強く意識したブランド戦略で顧客に対する信頼や安心を約束しています。顧客は製品を通じて提供される世界観・価値観に自信を持っています。

ブランドが提供する世界観・価値観は他社比較で相対的に構築したものではなく、ブランド独自に築いたものです。特定のブランドへの憧れやコンセプトへの共感の醸成に他社は含まれず、相対的な「良い・悪い」よりも絶対的な「好き・嫌い」でブランドが顧客に評価されます。

そのため、No.1訴求によってブランドコンセプトを相対化してしまうことはその世界観・価値観を異質なものに変えてしまうことを意味し、これまでの顧客とこれからの顧客への約束を反故にする行為になります。

積み上げて来た信頼が崩れるのは一瞬であり、取り戻すには長い年月が必要げです。それゆえに、ブランド戦略や世界観を捻じ曲げかねないNo.1訴求を使うのは回避すべきものになります。

No.1訴求に魅せられて購入する層がメインの顧客層ではない

後者は、販売戦略の観点からNo.1訴求を使う必要がないためです。

超高級ブランドの商品は当然のことながら高額な商品なので一般消費者が気軽に買うことはできません。顧客層は少なくとも買うだけのお金を用意できる人たちです。

良い意味でも悪い意味でもNo.1訴求は商品を大衆化させる効果があります。超高級ブランドはその希少性が価値の1つであり、それが購買意欲を駆り立てるのですが大衆化はその価値を毀損してしまいます。

また、需要予測においてはブランド愛好者による購入と少しの新規顧客による購入で需給のバランスか取れてしまいます。時には売れ残る商品もありますが、廃棄処分するか、最近では素材の再利用が行われ管理されます。集客のためにわざわざNo.1訴求を使う必要性がありません。

No.1訴求の使い所

ラグジュアリーブランドがNo.1訴求を使わないことから逆説的に一般消費財やサービス向けのNo.1訴求の効果的な使い所が見えてきます。

No.1訴求を効果的に使うには

  • 市場シェアが多いことが価値である

  • 他社商品比較を経て購入される

の2つの特徴を持った商品・サービスであることが必要と分かります。世の中のNo.1訴求を使っている会社の商品・サービスを見るとどれもこの2つが当てはまります。

まとめ

勝ち訴求になりやすい万能的なNo.1訴求もブランド戦略や販売戦略によっては顧客の満足度を下げてしまいます。安易にNo.1訴求を使うのではなく、戦略との整合性を十分に考慮した上で使うようにしていきたいところです。

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