ベトナムチーム起業日記:#39. サイゴンのクラフトビール工場
今日は朝早くにGrabタクシーに乗り、1時間かけてホーチミンの北にある工場に向かった。
僕が以前雑談でベトナムはビアホイ(ベトナムにある昔ながらのビール酒場)で自分でビールを醸造したり、ホームブリューの文化があるから自分もベトナムでビールを作ってみたい、というような他愛もない夢を話していたとき、メンバーの一人のVくんが「友達がビール工場で働いているから見学させてもらえるかもしれない」と言い出した。
今回、ダメ元でVくんに頼んでみると、幸運にも本当に見学ができることになった。
指定された場所はホーチミンの空港より北、しかも朝9時頃に来てほしいということで、朝早くタクシーに乗ったのであった。
ホーチミン中心部からでることはほとんどないので、車窓のある意味普通の郊外の風景が新鮮だった。
社内からZoomでクライアントのエンジニアと打ち合わせをしている間に1時間がたち、一見何もないところで降ろされた。
マップの工場のいちと少しだけずれていたのであるき始めると、道路沿いのカフェからVくんが出てきた。
工場は入り口がわかりにくくどこにも工場らしきものは見えないと思ったがVくんにつれられてある敷地に入って奥にいくとそこにビール工場があった。
すぐにVくんが”マネージャー”と呼ぶ初老のおじさんが出てきた。この人が10時から予定があるとのことで、僕たちはここに9時に来たのだった。
マネージャーに日本から持ってきた坂角のゆかりを渡し、案内されるままに工場に入っていった。
写真撮影はOKですか?と聞いてみたが、写真はNGとのこと。写真をここに掲載できないのが残念である。
緑色の天井のすごく高い建物にはいると、昔家の近くの牛舎にあった牛の飼料のような匂いがほんのり立ち込めていて懐かしい気分になった。
中には銀色の大きなタンクが並んでいる。
Vくんの英語力と、僕のビール製造の知識のなさからおじさんがいっていることが理解できない工程もたくさんあったが、水をろ過するタンク、麦を(おそらく)茹でているタンク。醸造させているタンク、などとにかくあらゆる種類のタンクが並んでいる。
タンクの合間を歩いているとビールジョッキ片手に歩いている作業員何人かとすれ違い、さすがビールメーカー、朝からいっぱいやりながら仕事してるんだ!、と感動してみていたら味を見てクオリティのチェックをしているところと説明された。すみません。。
理科室のように試験管が並んでいる部屋があったり、モニターにタンク内部の様子とおもわれるものがグラフィカルに表示されているデスクがあったり、かなりハイテクである。
ただ、大きな工場ではない。大量生産している感じはしなかった。
そんなことをおもっているとVくんがこの会社はクラフトビールだけを作っているんだと言った。
そういうことか。、、は、早く言ってよ!、ここクラフトビール工場なんだ、めちゃくちゃいいところに連れきてくれたじゃん!と感動した。
それでようやく合点がいった。
僕の大学の選考は工場のレイアウトについて学ぶカリキュラムがあったので、その浅はかな知識で見てもこの工場のタンクのレイアウトが大量生産向けではない小ロット生産に向いたレイアウトのような気がしていた。でもちっぽけなビール工場というわけではなく、ハイテク機器で管理されていたり、なんとなく全体に漂うおしゃれさというかクラフトマンシップがあったので、一歩工場に足を踏み入れたときから???だったのだが、謎が溶けた。
そして前を歩く”マネージャー”とVくんに呼ばれていた人は、じつはセールス部門のトップで、Vくんの友達はその人の甥っこだという。
君はなんで情報が小出しなんだいVくん?
僕の地元、豊橋の親戚のおじさんに顔が似ているので、なんか他人と思えないかわいいおじさんだと思っていたら、かなり偉い人だったのだこのおじさん。その人にじきじきに案内してもらっていることに途中から気づいたのであった。
麦やホップを保存している場所などを見学したあと、ウッディなおしゃれなスペースにたどり着くとすでに美しいビールグラスにビールが注がれて重厚な木のテーブルの上に置かれていた。
そこに座って試飲をさせてもらい、豊橋の親戚のおじさん、、ではなくセールス部門のマネージャーからゆっくり話を聞いた。
そこでわかったのはこの工場はホーチミンのクラフトビールメーカーの製造を受託し、OEM供給しているメーカーということ。
ホーチミンのクラフトビールの3割がここで作られているとのことだった。
そうなんだ!、すごい!、と思って、そういえば前回見つけた癒やしのバーで飲んだクラフトビールの写真があることを思いだし、iPhoneのアルバムから探し出して見せると、
「あぁ、これはここで作っているんだよ。」
と教えてくれた。
なんと、、そのバーで飲んだビールで一番美味しかったので忘れないようにそのIPAのクラフトビールを写真にとっておいたのだが、ここで製造されていたとは、、
Vくん、めちゃくちゃいいところに連れてきてくれたのだ。
連れてくる前にもっと、「すごいところに連れてってやる」、くらい言ってもいいんじゃないか。。
「友達がビール工場で働いているから見学させてもらえるかもしれない」
はすごい控えめなんじゃないかと。。
ちょうど2杯目のビールが運ばれてきて、それがIPAだったので、もしかしてこれですか??と聞いてみた。
「これは違うよ、これは販売はしていない特別なIPAなんだ。」
と教えてくれた。開発中の製品なのかな、、このIPAもものすごくうまい。
女性の品質管理担当の従業員がテーブルにやってきた。彼女にいろいろ質問できるよ、と紹介された。
メガネをかけた30代くらいの小柄な女性だが、物腰が堂々としていて英語がうまい。
話を聞くとビールの”味”が好きで、この会社には前身のクラフトビールじゃない量産向けのビールメーカーだった時から長く努めていることを教えてくれた。なんで英語が得意なのか尋ねるとシドニーの大学で食品製造について学んだことを話してくれた。
随分と高等教育を受けて、しかもそんなに若い時から食品製造に興味を持って学問、キャリアを歩んできたなんて、すごいビジョンだなぁ、、と関心して聞いていると、
Vくんが横から
「彼女はこの”おじさん”の娘。」
と言った。
この人も重要人物かい!
若いから優秀な熱血社員と勘違いしてたわ!、将来の社長候補やないかい!
情報は小出しにするVくん、しかもこの人も最初からそう言ってくれればいいのに、ベトナム人共通なのかなこれは。。
その後はパイナップルの入ったフルーティーなビールと、コーヒーの入った実に香ばしい黒ビールを試飲させてもらいすっかりいい気分になったあと1階のボトル詰めのプロセスを熱血社員、否、将来の社長じきじきに案内してもらった。
きれいな水をはったプールから作業員がボトルをとりだして機械にならべそこにチューブからビールが挿入される工程をながめていると、先程Vくんと談笑していたVくんの友達(営業部門トップのおじさんの甥)が通りかかり、Vくんに声をかけて行く。
「彼は僕の上司だったんだ。」
え?、
「僕は昔ここで働いていたんだよ。」
な、なんでそれ最初に言わないのよ??
最後まで情報は小出しのVくんであったが、Vくんのおかげで絶対体験できないような工場見学をさせてもらったのである。
しかし、昔の上司と仲良しだったり、昔働いていて辞めた従業員の紹介者に中を見学させてくれたり、ベトナムの職場の人間関係って良好なところが多い印象。とてもうらやましいなと思った。
将来の社長にお礼を言って工場をでた。
Vくんが「このあたりは僕が働いていたときは田んぼだったんだ」というところには今は家がたくさん建っているが、まだまだ郊外の一本道と言ったところを歩いた。さきほどVくんがでてきたカフェにはいる。こんな郊外の一本道にも素敵なカフェがある。さすがかつての東洋のパリ。
菊が入ったアイスティーを飲みながらVくんとゆっくり話ができた。
つづく。
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