見出し画像

あなたの日本語はまちがっていますよ 8

8、お花に水をあげる

「あなたの日本語は、まちがっていますよ!」と言いながら、それ自身が間違った日本語を広めているWebページが多くあるので、きちんと指摘して訂正しておきたいと思います。

あげる」は敬語である。「あげる」は「上げる」であり、「いただく」と同じく「頭の上方にかざす」ことが原意である「謙譲語けんじょうご」である。

だから「お花に水をあげる」は「尊敬すべきお花様に、私がへりくだって水を差し上げます。へへぇm(__)m」という意味になってしまう。

尊敬語そんけいご、謙譲語は、対人間の場合にしか使えない言葉である。だから「花」を尊敬し、自分が謙る「水をあげる」は、明らかに間違いなのだ。

「あげる(謙譲語)」の普通表現は「やる」である。最近「やる」を「卑語ひご」あるいは「下品な言葉」という風に勘違いしてしまっている人が多く、「花に水をやる」が乱暴な言葉づかいに感じられるのだろう。

」という言葉があるように、「やる」は普通語である。「お花に水遣りをする」を「お花に水あげをする」などと言うのだろうか。それなら敬語末期である。

「あげる」と「いただく」は、同じ「頭の上にかざす」が原意である。そのうち「あげる」が相手に渡す方向、「いただく」が自分が受け取る方向で、どちらも謙譲語である。

さらに酷い「あげる」に、「(数学で)両辺を2倍してあげると…」などという表現がある。

これの「あげる」を普通表現の「やる」に直すと、「両辺を2倍してやると…」となる。

語感の鋭い人ならこの時点で気づいたであろう。そもそも「両辺を2倍してやる」という表現そのものがおかしいのである。

これは「両辺を2倍する」でよい。そもそも「やる」が不要なのだ。その上「やる」を謙譲表現にして「あげる」にしている。「両辺を2倍してあげると…」は二重に間違った日本語である。

◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆

「あなたの日本語は、まちがっていますよ!」と言いながら自分こそが間違った日本語を垂れ流している人達は、もちろんそのことに全く気付いていない。だからいくら「あなたのその理解こそ間違っていますよ」と指摘したところで、蛙の面に水、決して直しはしないし、「あれ、もしかしたら間違って理解しているのかなあ」という反省もない。そしてそれに騙された人達が、また間違った日本語を広めている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?