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連載 洋楽今昔③ Stand By Me と Stand By You

"Stand By Me" は1960年代のベン・E・キングの名曲、 "Stand By You" は "Fight Song" で有名なレイチェル・プラッテンが2015年にリリースした佳曲。両者の間には50年もの歳月があるのですが、"Stand By" つながりで今回はこの2曲を強引に比較してみたいと思います。

    Stand By Me
When the night has come and the land is dark
And the moon is only light we'll see
No I won't be afraid, no I won't be afraid
Just as long as stand, stand by me
So darling, darling, stand by me, oh stand by me
Oh stand by me, stand by me

 夜が来て大地が闇に覆われ
 月明りしか見えなくても
 僕は恐れない 恐れることはないさ
 君がそばにいてくれるかぎり
 だから愛しい人よ そばにいて
 僕のそばにいてほしいんだ

               Stand By You
Hands, put your empty hands in mine
And scars, show me all the scars you hide
And hey, if your wings are broken
Please take mine so yours can open too
'Cause I'm gonna stand by you

Oh tears make kaleidoscopes in your eyes
And hurt, I know you're hurting, but so I am
And love, if your wings are broken
Borrow mine so yours can open too
'Cause I'm stand by you
Even if we're breaking down
we can find a way to break through
Even if we can't find heaven
I'll walk through hell with you
Love, you're not alone
'Cause I'm gonna stand by you

 あなたの空っぽの手を私の手に重ねて
 隠している傷を全て私に見せてよ
 ねえ あなたの翼が折れたなら
 再び開くようになるまで私の翼を使えばいい
 私はあなたのそばにいるから

 涙が万華鏡みたいにあなたの瞳に光る
 傷ついてるんだね 私もそうだよ
 愛してる あなたの翼が折れたなら
 再び開くようになるまで私の翼を借りればいい
 私はあなたのそばにいるから
 たとえ打ちのめされても
 私たちはきっと切り抜ける道を見つけられる
 たとえ天国が見つからなくても
 あなたと一緒なら地獄だって歩き通せる
 愛してる あなたは一人じゃないよ
 だって私があなたのそばにいるから

どちらもストレートなラブソングですが、前者が"you"を潜在的な主語に立てて「僕のそばにいてほしい」と願う歌であるのに対して、後者は主語の"I"を顕在化させて「あなたのそばにいるよ」と励ます歌になっています。同じ"stand"でも、両者の立ち位置は微妙に異なっているようです。

統計を取ったわけではなく、あくまで個人的な感触に過ぎないのですが、洋楽にせよ邦楽にせよ、"you"を主語に立てた歌詞よりも、"I"を主語に立てた歌詞の方が、数十年を経て相対的に増えているような気がします。それだけ自分を前面に出すことに臆しない時代になったのか、あるいは、あえて自分を前面に押し立てていかなければ生き抜けないシビアな時代になったのか。おそらくはその両方ではないかと、これも個人的な感触で勝手に思っているのですが、どうでしょうか?

いずれにせよ、どちらも聞いていて元気の出る名曲ですよね。"Stand By"には「そばにいる」という意味の他に「支える」という意味もあるそうです。"you" と "I" が支え合って "we" になる、というストーリーは、時代を超えたラブソングの王道なのでしょう。



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