大切なものたち

大切なものたちを道で見つけては拾っている。みんなその大切なものを、なぜか捨てていってしまうんだ。だから僕が拾っていく。拾った大切なものたちは、部屋で大切に飼っている。ときどき外で自由に遊ばせてやったりもする。

「ゴガガガガ」とか「キヒヒヒヒヒ」とか言って庭で楽しそうに木を破壊したりして遊んでいるのを見ていると、僕も楽しくなる。たまに喉元に噛みついて来たり眼球を引っ掻いてきたりするやつもするけれど、大切なものたちが大切であることに変わりはない。大切なものたちは、見た目は小さくとも、本当は大きいんだ。地球を丸ごと飲み込めるくらい。僕は毎日何かしらをうちに持って帰ってきて食べさせる。大切なものたちはなんでも食べる。ヨットも警察も雨の日の憂鬱も全部食べる。

僕は大切なものたちを精一杯大切にしているつもりだけど、大切なものたちは、大切にされていると感じていてくれているだろうか?捨てられたという悲しみも、少しは拭えているだろうか。

ねえ、大切なものたちよ。君たちは今、幸せですか?僕は君たちと一緒にいれて、幸せだよ。君たちという、大切なものに囲まれて暮らしているから。この幸せも、いつか食べさせてあげるね。