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シングル・シンデレラ(ショート・ショート)

王子様が持っていたガラスの靴に合っていたのはシンデレラだった。王子様はシンデレラに求婚し、めでたく結婚しましたとさ。

これはその後のお話。
城に迎えらたシンデレラは幸せの絶頂にいた。
“過去の不幸を取り返すくらい幸せになってやる”
シンデレラがそう思ったとして、誰に文句が言えましょうか? シンデレラは素敵な服を着て、豪華な冠を被り、靴はガラスの靴、そして贅沢な食事を毎日食べました。夜のほうも、王子様はシンデレラにはいつも優しく接していました。
“この幸せは絶対逃すものか”
シンデレラは思いました。

1年が過ぎ、王子様は心配し始めました。シンデレラが妊娠しないのです。子供がいないと跡継ぎがいなくなってしまいます。王子様とシンデレラは一生懸命励みました。しかし、また1年が過ぎても子宝には恵まれませんでした。
「おまえには妊娠する能力がないのだ。私は新しい嫁を見つけるから、おまえは城から出ていきなさい」
シンデレラはショックを受けながら、城を後にしました。シンデレラは突然幸せを失ったのです。

子供を生めなかった自分を責めました。
“どうして私は子供が生めないの?”
シンデレラは泣きながら、道に座り込んでしまいました。
「どうしたの? 泣いてないで遊ぼうよ」
顔を上げると、そこにはいかにも軽薄そうな男が立っていました。
シンデレラは自分が嫌で、自暴自棄になっていたので、男についていってしまいました。
そして、ワンナイトラブ。二人は名前も名乗らずに別れました。

それから月日が経ち、シンデレラは体調を崩しました。吐き気が止まらないのです。まさかと思い病院へ行くと、
「おめでとうございます。妊娠です」
と医者は言った。
“私は妊娠できない体じゃなかったの? それならなんで王子様と別れなければいけなかったの?”
しかし、王子様に文句など言えましょうか? 王子様が種なしだなど言ったら、自分が殺されてしまいます。

シンデレラは子供を一人で育てなければいけなくなりました。
“王子様の子供だったら、こんなことにならなかったのに”
“王子様の子供を生んでれりゃ良かったのに”
シンデレラは生まれた子供に「ウンデレリャ」と名付けました。

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