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田口ランディ『ハーモニーの幸せを読んで』 『キツネ憑き男』

突然信心深くなった父親とオカルト話好きのオバ様についてのエッセイである。

「父は依存症のケがあって、なんにでも依存し執着していく。そのころの父は『お弔い』という行為に異常なまでに執着していた。」

著者の父は脳外科手術を受けて性格が変わったというが、脳科学の世界では十分あり得ることらしい。

私自身は今まで親に依存し、友人や会社の同僚にも依存してきた。人はそれを甘えと呼んでいた。私も人に甘えたいという強い願望があったのは確かだが、自分自身にずっと自信がなかったから、他人をあてに生きてきた。そのために私から遠ざかる人もいた。

年を取ると性格を変えるのは難しいと言われるが、私は今性格改造の途上にいる。性格を変える努力は恐怖との闘いでもある。変えたい自分の嫌な性格と面と向かい合わなければならないからだ。自分の嫌な部分を拾い出す作業は心理的なストレスが大きい。そのせいかもしれないが、今自分は適応障害という病と闘っている。この病に勝てたとき、私の性格改造は終わると確信している。

準主役のオバ様がこのエッセイにもうひとつの味付けをしている。いわゆる「霊感のある人」で、「オバ様のなかには、どろどろのオカルトの原液みたいなものが闇鍋状態で沸騰している」。こういう人って誰の身近にもいそうな気がして、親近感が沸く。

最終的にはオバ様の霊能力が発揮されるのだが、著者とオバ様とのやり取りが漫才のようで面白い。

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