夏に聴きたい音楽と短い物語 『熱帯都市/Mellow Summer』
暑中お見舞いにプレイリストと短い物語をお届けします。
Mellow Summer
夏用のプレイリストをお届けします。
ゆっくり過ごす夏の午後をイメージしてセレクトしてみました。午睡の狭間や、夕暮れ前のひと時、ぼんやり過ごすティータイムに、どこの国に居るのかもあやふやになるようなどこか日常から少し浮遊した時間を過ごしてもらえたら嬉しいです。
今、自分が聴きたい曲を選んだら、アジアンテイストとラテンが混在したエキゾチックな感じになりました。これは夏の曲?と言うのもあるかもしれま
せが、細かいことは抜きにして楽しんでくださいね。
🍹🌴
熱帯都市
東京郊外から都心に行くとそこは熱帯の街だった。
ビルの影をつたって日差しを避けながら歩いて行く。
室外機からの熱と南風が混じり合った湿度の高い空気が身体にまとわりつくように重くて、永遠に目的地に辿りつかないような気がしてくる。
ストローハット越し照りつける強い日差し。
見上げると、ビルの屋上に椰子の木が立ち並び、極彩色の鳥が甲高い声を上げている。街を奥へと進むといつの間にか街路樹にはマングローブが生い茂っていた。
あまりの暑さに耐えかねて木陰のカフェに逃げ込んだ。
恰幅の良い主人が、片言の日本語で「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。厨房からはどこの国の言葉か分からないおしゃべりが聞こえてくる。
一息ついて、熱いミントティーを飲みながら額の汗を拭うと、少しまともな気分になった。
しばらくすると、外は突然のスコールで世界が白い霞みに包まれた。
雨風が心地よく体の火照りを鎮めて行く。
ひとしきりの雨が止むと、どこからともなく、風に乗って音楽が運ばれてくることに気がついた。
その遠くからの音に静かに耳を澄ますと、熱帯の森の中に咲く珍しい花を見つけたように、静かなひかりが周囲に灯ったような気がした。
ひかりに包まれながら音楽に身をゆだねていると、身体から重力が遠のいて、ゆるやかなまどろみの中にゆっくりとゆっくりと落ちていった。
『音と暮らし』は地域に音楽など芸術文化を届ける水色デザインが取り組んでいる小さくなイベント企画です。
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