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タイトルと内容の落差がすごい『炒飯狙撃手』

HONZで次々と魅力的なレビューを叩き出す首藤さんは、ノンフィクションだけでなくフィクションについても素晴らしい読み手なわけで。

最近読んだ中ではこれがめちゃくちゃ面白かった、と言われたら読まずにはいられません。とはいえ、タイトルだけ聞いたときには「なんすか、そのドラゴンボールに出てきそうな名前」って言っちゃったけど。

イタリアに潜伏する台湾のスナイパー(工作員)が主人公。なんと表の顔は炒飯店の店主という謎の設定。なんで炒飯なのか、最後まで読んでもわかったようなわからないようなままではあるのだけれど、読み終わった私の心には
●やっぱ腹が減っては戦は出来ないってことよね
●炒飯は練習
ということはきっちり刻みこまれました。
でも相当なオススメがない限りはやっぱり「なんすか、その面白タイトル」と言ってしまいそうなので強く念を押しておくと、アクションも抜群の秀逸スリラーでした。

このスナイパー、命令を受けて難易度の高い場面での暗殺を完了させます。ところがなぜかその後自分が命を狙われる羽目に。潜伏工作員なので、助けを求められる先も限られており、そのギリギリの中での逃亡劇を繰り広げることになります。
一方で、台湾では老伍という刑事が連続不審死を追っています。こっちもなかなかの盛りだくさん設定を抱える人物で、家庭にはちょっとしたいざこざがあり(つつも、ちゃんとそっちも解決に向かって努力する大変家庭的な刑事)、定年まで12日というタイムリミット設定あり。さらに、有能なためヤバい闇に迫ってしまいそちらにも魔の手が伸びる…という状況。

二人はいる国も環境も違うもののその二つの事件は重なっていきます。この刑事がまたいいんですよ、スナイパーの方よりも描写が多かったこともあって、感情移入しやすいのです。
中華もののミステリって名前が漢字だと、読めないものを無理矢理読みに行くような感じがあってあまりのめり込めずにいたのですが、これはそれも気にならず集中して読めました。
設定が設定だけに、続編が出るのかどうかは謎ですがちょっとぜひ手に取ってみてほしい作品です。

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