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ため息俳句9 冬土用

 晩年は「晴耕雨読」の日々を送りたいものだと、そんな希望をお持ちの方も少なくないようだ。
 近隣ではあちこちで、後継者が不在、どうせ耕作放棄をするぐらいならと、耕作地を10平米ほどに区画して、家庭菜園用に貸し出している。それが土日休日のみならずけっこうな賑わいなのだ。
 自分も猫の額のごとき小さな畑を耕してしている、これは自家菜園で、親から受け継いだものだ。受け継いだ以上、草だらけには出来ないというのが、農耕民族の末裔である自分のDNAに書き込まれているのか、草原にもできない、やむを得ず野菜を作っている。
 「やむを得ず」というのは、全くの本音で、自分は実は「晴耕雨読」というあれが俗っぽくみえて虫が好かないのだ、もしかして傍目から見て、己が「晴耕雨読のおじいさん」的な存在として認知されたらと想像するだけで、いたたまれない気がする、だから他意なしに自家用野菜を作るのさえ誤解されそうで嫌なのだ。そうとはいえ、そこはあくまで「畑」であるから、野菜作りを逃れることなど、許されるはずもない、故に「やむを得ず」である。
 というわけだが・・・、いい年して自意識過剰でしょ、の、一言で一蹴されるでしょうが。

 くどくど書いたが、本題。
 本日は、冬の土用の内の一日、今年初めの土いじりの期間に当たる。そこで、午前中畑に出たのだった。雑草を三角ホーで採った。というより、根こそぎ削り取るのである。この辺りの冬は、全くの乾期で畑は乾ききっているのだが、ホトゲノザやスズメノカタビラなどが畝の間にびっしりとへばりつくように生えている。これらを処理していたら、可愛い奴がいた。
 季節外れのテントウムシ、一匹。
 通常、テントウムシの越冬は群でするものだと聞いていたのだが、こやつは単独で三角ホーの刃から逃れようしてうろうろしていたのだ。

てんと虫枯れ葉しとねに冬土用


 テントウムシ、元気に冬を越せ。もしも、輪廻というものがあるならば、この「てんと虫」は己の来世の姿かもしれない。 
 ちなみに、ペンペングサこと薺も、代表的な雑草である、・・・食べられるのに。