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#4 考える人は考え昭和の日  谷山花猿

 さて、「不適切にもほどがある」というテレビドラマは、大いに話題になりました。自分も楽しみにしてみていました。
 題名の「不適切」というのは、昭和の時代の価値観や生活習慣は、令和の現在から見ると、不適切としかいえないことが、沢山ありましたねえという意味の不適切でありました。
 そうではありますか、他方で昭和レトロなどといわれて、様々なことがとりあげられ、若者の間にも昭和風のデザインや町並みのファンが少ないと聞いています。
 
 「不適切にもほどがある」の脚本家宮藤官九郎は実に入念に時代背景を描きこんでドラマをを作る人だと常々関心しています。ですからクドカンのテレビドラマときけば、見逃さないようにして録画もセットしておくほどです。今現在の放映中の「季節のない町」も驚くほどに目配りをきかせて現代を描いています。
 そうであるから、「不適切にもほどがある」では、当然のこととして手放し昭和を肯定したり懐かしんだりしていません。これほど、昭和を客観的に描けたドラマはこれまでも余りなかったのではないでしょうか。
 だいたい、昭和と令和の今を較べて、どちらが生きやすいだろうなんて、比較するのは馬鹿げたことです。比較なんて出来ません。
 例えば、昭和時代は、64年間続いた訳ですが、そのほぼ三分の一は、戦争の前夜か戦争下にありました。このこと一つとっても、昭和に生きる過酷さがあったはずです。戦争なんて不適切の骨頂ですからね。
 昭和レトロブームといっても、それらは昭和期の戦後日本、高度経済成長期の日本、その時代の様々な現象に向けられたもののようです。それはそれ、あの「不適切にもほどがある」を手がかりにしてもいろいろと思いは巡らせることが出来そうです。

 この句では、「考える人は考え」とありました。言外にあるのは、考えない人つまり、無関心な人がどれほど多いかという苦い思いです。
 この頃の世相や政治経済の有様をきちんと認識するためにも、昭和時代を振り返ってみることは、大切だろうと改めて思わさせられた一句でした。