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ため息俳句 秋茄子

 秋茄子の漬け色不倫めけるかな  岸田稚魚


 秋茄子が採れ始めるこの頃に、ふと思い出す句である。
 正直、句意を捉えようとすると戸惑いを感じされられる句だが、作者の目にはそう映ったのである。
 夏の茄子の漬け色と秋茄子のそれと、どうちがうのかも、自分にはわからない。植物というのは強い紫外線から身を守るために、花にしろ、果物にしろ色が濃くするのだと、何処かで読んだ記憶がある。ならば、茄子も夏の紫外線量が、秋口には大分減少する、ということは色が薄くなるとしても不思議ではない。
 それに、不倫はやはり、秋の方が夏より似合う気がする、そこで秋茄子か?
 分からないが、いづれにしろ「不倫め」いて心がときめくのである。そう感じているは作者自身か、虚構の男であろうか。俳句の場合、虚構の主体と云うのは、ありやなしやということもあるのだが。
 茄子漬け女人は、己の妻か、知り合いの人妻か。愛人の場合でも不倫というのか、云わぬのか。なんせ、不倫なのだ。浮気とは違う。
 怪しい句であるのだが、茄子漬けというのは、いかにも家庭の食卓になじむものだが、そんなものに惹かれるとしたら、不倫を仕掛けるのは寂しい男の方かもしれない。
 つまり、紫にまつわる恋の戯れ言、茄子漬けと不倫をつなぎあわせたところが、いかにも「俳諧」である。
 楽しい句である。

 我が菜園でも、秋茄子の収穫が始まった。自分の好物は、焼き茄子と茄子の味噌汁である。

茄子なすび漬け色もよきかな世話女房

秋茄子あきなすび焼く間におーいビールここ

秋風にもし色あれば茄子色なすびいろ



どうも、上三句、お遊びです。それに、小生はほぼ下戸である。「不倫めく」に較べて、月並以下の発想である。