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ため息俳句 夏の色

 角川版「季寄せ」では、「夏の色」を、(初夏めいてきた風色)とあり、「夏の匂い」「夏の光」「夏景色」が付記されている、こうのは傍題とでもいうのか、よくわからない。「風色」というのは、もともと眺め、景色、風景という意味だから、夏景色でよいようなものだが、もっと人が感覚的に関知する夏の気配、匂いそんなのも指しているとみてよいのかとも思う。
 この云い方で「春の色」、「秋の色」、「冬の色」と四季に渡って季語がある。それぞれの季節の風光、景色をいうのだ。
 ところで、「色」といういう語だが、これが面白いことばである。赤白黄色の「いろ」。顔色の「いろ」。「色情」「好色」「漁色」の「いろ」。女性の美しい容姿、「才色」の「いろ」。そうしてものの様子をいう「景色」の「いろ」。
 最期に「色即是空」の「色」、形にあらわれる物質的存在の「いろ」。
 そんなのを頭の隅におくと、「夏の色」もなにやら複雑なニュワンスを帯びてはこないだろうか。

一列にうつむく子らに夏の色  空茶

ゴミを出す働く主婦に夏は来ぬ

ことなかれ主義の亭主も夏の顔