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現代語訳『さいき』(その20)

 一計を案じ、鷹狩《たかが》りから帰ってきた佐伯にさっそく相談を持ち掛けた。
「わたくしの妹は都でとある男性と一緒に暮らしておりましたが、気の毒なことに他の女に横恋慕され、暇《いとま》を告げられてしまいました。都を離れてこちらを頼りたい旨の文《ふみ》を送って参りましたので、どうか迎えを出させてもらえないでしょうか」
「相分《あいわ》かった。すぐに人を遣わそう」
 佐伯は二つ返事で承諾し、下人たちに支度を急がせた。

(続く)

 策を講じた正室は「京にいる妹が、男に捨てられて困っているので呼び寄せたい」と佐伯に頼みます。言うまでもなくでたらめな作り話で、いくら何でもすぐにばれる嘘ですが、平然と言ってのけます。
 この「思いついたらすぐに行動(問題が発生してもその場で対処)」という超前向きな性格、堂々としていてとてもかっこいいです。

 一方の佐伯はというと、嘘を見破れないだけでなく、自分の不倫を揶揄されたことにもまったく気づいておらず、あっさりと頼みを聞き入れます。ある意味、こちらも大物と言えるかもしれません。

 それでは次回にまたお会いしましょう。


【 主な参考文献 】


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