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現代語訳『我身にたどる姫君』(第一巻)

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王朝物語『我身にたどる姫君』の現代語訳です。
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2018年8月の記事一覧

現代語訳『我身にたどる姫君』(作品紹介)

今回から古典作品『我身《わがみ》にたどる姫君』の現代語訳をお届けします。 恐らくほとんど…

たま
5年前
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現代語訳「我身にたどる姫君」(参考文献)

 今回の「我身にたどる姫君」の現代語訳に当たり、わたしが使っている書籍をご紹介します。原…

たま
5年前
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現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その1)

 移ろいゆく四季折々の景色をつれづれと眺めるのが、姫君の心の慰めだった。  古歌のように…

たま
5年前
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現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その2)

 幼い頃の姫君は、何でもない花や紅葉を見ても特に自分の素性に思いを馳《は》せることはなか…

たま
5年前
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現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その3)

 かつてこの屋敷には姫君と親しく、いつも頼みにしていた弁《べん》の君という乳母がいたが、…

たま
5年前
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現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その4)

 姫君は右も左も分からなかった幼少期に、火影《ほかげ》の下で見た人の限りない美しさがいつ…

たま
5年前
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現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その5)

 月日を重ねるにつれて、姫君の容姿は光り輝くような美しさが増していった。  しかし、粗末な屋敷で育てなければいけないことが尼君にはとても心苦しく、心を澄まして行うべき仏道の勤めもおろそかになっていた。  出自についてほのめかされることもないため、自分から尼君に尋ねるのも小賢《こざか》しいと思う姫君は、ただおおらかに振る舞い、絵物語などで心を慰めたが、「それにつけても世に例のない境遇だ」と悲しく思っていた。 (続く)

現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その6)

 姫君には、弁《べん》の君の次女で侍従《じじゅう》の君という女房が片時も離れずに仕えてい…

たま
5年前
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現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その7)

 姫君たちが暮らしている屋敷は、音羽山《おとわやま》の麓にある。  庭に引き込まれた水も…

たま
5年前
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現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その8)

 ある激しい吹雪の夜更けのことである。  いつもとは異なる人の気配に続き、門戸を叩《たた…

たま
5年前
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現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その9)

 曇ってはいるものの、雪と月光が混じり合いながら降ってくる風情のある空の下、簀子《すのこ…

たま
5年前
8

現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その10)

 次第に明けゆく空の景色に、雪も小やみになったようである。  三位中将《さんみのちゅうじ…

たま
5年前
7

現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その11)

 この尼君は宮の中納言という人の北の方だった。宮の中納言の妹こそが三位中将《さんみのちゅ…

たま
5年前
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現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その12)

 帝は後宮に集まった多くの女たちを積極的に愛したが、その中で皇后宮《こうごうのみや》に向けられた愛情は限りなく、並ぶ者がいなかった。帝は皇后宮のあらゆる縁者に目を掛けたいと思っていたものの、世の常として、有力な後見人がいない皇后宮は非常に苦しい立場にあった。  故院から後見を託された帝は、この上ない容姿の皇后宮を何とか后《きさき》の位に就けることができたものの、一方の皇后宮自身は、中宮《ちゅうぐう》に対する帝の愛情が自分より劣ることを心苦しく思っていた。その不安は的中し、一時