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現代語訳『さいき』

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御伽草子『さいき』の現代語訳(全訳)です。
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記事一覧

現代語訳『さいき』(補足その2)

 ここでは『さいき』の謎のひとつである「京の女はなぜ佐伯に惚《ほ》れたのか」について、個…

たま
1年前
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現代語訳『さいき』(補足その1)

 ここでは、何度か取り上げてきた「『さいき』改変説」について改めて整理をします。  現存…

たま
1年前
7

現代語訳『さいき』(その25)

 正室の出家を知った京の女はひどく驚いた。 「身分の上下にかかわらず、愛する人を奪われた…

たま
1年前
3

現代語訳『さいき』(その24)

 対面した正室は、目映《まばゆ》いばかりの相手の美貌に胸を衝《つ》かれた。 「何と気品の…

たま
1年前
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現代語訳『さいき』(その23)

 手紙を受け取った女は大いに喜び、すぐに都を立った。その後、豊前国《ぶぜんのくに》にある…

たま
1年前
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現代語訳『さいき』(その22)

『長らくの不義理をどうかご容赦ください。心苦しい日々を過ごしていたところにあなたから消息…

たま
1年前
7

現代語訳『さいき』(その21)

 一通りの準備が整うと、正室は急病を患った振《ふ》りをして佐伯を呼び寄せた。 「体調が思わしくなく、妹への消息《しょうそく》を書けそうにありません。大変恐縮なのですが、代わりに殿《との》の手で一筆したためてくれませんか」 「承知した。取りあえずやってみよう」  佐伯は言われた通りに代筆した。 (続く) ★  正室の策は続き、京の女に疑念を抱かせないよう、佐伯の手で手紙を書かせます。そろそろばれそうな気もしないわけではありませんが、女と別れて三年が経ち、完全に忘れているの

現代語訳『さいき』(その20)

 一計を案じ、鷹狩《たかが》りから帰ってきた佐伯にさっそく相談を持ち掛けた。 「わたくし…

たま
1年前
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現代語訳『さいき』(その19)

 読み終えた佐伯の正室は大きな嘆息をついた。 「何と愛らしく趣《おもむき》のある恋文でし…

たま
1年前
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現代語訳『さいき』(その18)

 手紙の最後に歌と共に、佐伯《さいき》が都を立つ際に形見として渡した鬢《びん》の髪が添え…

たま
1年前
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現代語訳『さいき』(その17)

(続く) ★  女からの手紙(その3)です。  前回(その2)は率直で分かりやすい表現でつ…

たま
1年前
3

現代語訳『さいき』(その16)

(続く) ★  女からの手紙(その2)です。  前回(その1)は枯れた草の例えで疲れ切った…

たま
1年前
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現代語訳『さいき』(その15)

(続く) ★  女からの手紙の内容(その1)です。  迎えどころか便りすらないことに疲れ果…

たま
1年前
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現代語訳『さいき』(その14)

 代わりに手紙を受け取った佐伯の正室は、首を傾《かし》げながら封を切り、綴《つづ》られた言葉に目を通して息をのんだ。 (続く) ★  佐伯に妻がいることが、ここで初めて読者に明かされました。しかも、都で見捨てた女の手紙をいきなり読まれてしまいます。――いわゆる修羅場からのスタートです。  わずか一行に多くの情報が詰め込まれていますが、原文はもっと短く、「内の女房、この文を取りて見てあれば」と、初登場の佐伯の妻が、当たり前のように手紙を受け取り、微塵《みじん》も迷うこと