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蜷川実花展に行って少しモヤッとした話


※本記事は一部展示のネタバレ含みます。


東京の虎ノ門にあるTOKYO NODEで開催されている蜷川実花展に行ってきた。

蜷川実花さんといえば、独特な色彩感で写真や映画を作っている方というのが僕の認識である。

展示の内容としては、蜷川氏がよくモチーフとして用いる「花」や情景的な風景を、写真や投影作品、造花などを組み合わせたものとなっている。

TOKYO NODEには大きな吹き抜けの展示室があるみたいで、その空間を全面的にプロジェクションしたダイナミックな展示があった。

その写真がこちら。

蜷川氏の鮮やかな色彩感に包まれる感覚。

大きめのサウンドも、作品への没入感を高めてくれる。

そんな空間にしばらく身を浸した。


次に印象的だった作品がこちら。

色鮮やかな花が吊り下げられたトンネルの中をくぐっていく体験。

多分ほとんど造花。それもそうか。

この花のトンネル、観覧客が多すぎて人混みを掻き分けていかないと歩けない。

そりゃあ、みんな写真撮りたいからね。

そうして僕がさっき撮ったような、半分は他人が写り込んだ何を撮りたいんだか分からない写真ができあがる。

満足いく写真を撮ろうと粘る人も多い。
そうすると人は流れない。

いくら展示が良くても、人の整理ができておらず、体験としては満足度が半減しているようで勿体ない感じがした。

蜷川実花氏の代名詞ともいえるであろう(?)色彩豊かな花々の写真。

見ているだけで、なんだか気持ちが安らぐ。

他のインスタレーション的な展示はなくても、この写真達だけあればいい。そのくらいのパッションを感じる。

逆に言えば、インスタレーションに埋もれてしまって小部屋に追いやられたこの写真達には少し虚しさを感じてしまう…

こちらは、展示のアイデアに最も感心した作品。



半透明のスクリーンにプロジェクターで投影したものを空間内に何枚も配置することでレイヤー感を演出している。

スクリーンの向こう側の人々はシルエットとして絵の中に映り込んでいる。

この景色が結構幻想的であった。

鑑賞者までも作品に取り込むことのできる展示アイデアにハッとした。

もちろん、投影されている映像自体が美しいのは言うまでもない。


こうやって展示のあれこれを見て感じたこと。

最近の流行かもしれないけど、空間を利用した投影作品(プロジェクターを使って映すやつ)に力を入れていることが伺える。

それが良いとも悪いとも言えないのだけれど、かつてのように美術館で名画の前で佇んでボーッとするような鑑賞の仕方は出来なくなっていた。

それをここに求めるのは少しズレているのかもしれない。

この展覧会には蜷川実花氏に加えて、EiMというメディアクリエイティブ集団が携わっている。

だからこそ、これまでの芸術の鑑賞方法の概念を超えた展示を作り出した結果が本展だったのだろう。

今後、このような技術を駆使した展示が増えていくことは予想できる。

ほんの数年前には予想できなかった表現方法が次々と世の中に繰り出される。

そのような技術を武器にするアーティスト達は日々、移りゆく技術を使いこなそうと奔走する。

いわば、技術競争をアートの舞台で繰り広げているようなものだ。

その一端を本展で目の当たりにした僕は、アナログに描かれた絵画を無性に観に行きたくなった。

白い大きな空間に、2、3枚の大きな絵がポツンと飾られ、その前に佇んであれこれ思索する時間は、人間にとって大切なものであると気づいた。

美術館行きたいなあ。

デジタルな日常に浸りすぎて、かえってアナログなものを欲してしまっている。


掲載した画像の他にも作品はあるので、気になった方はぜひ足を運んで、不思議な空間体験を楽しんでもらいたいです。

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