見出し画像

ピアノを教えられるのか

セントルイスってどの州にあるか、ご存知ですか?
ミズーリ州。
私も、知らなかった。

この地で暮らし始めて、2年。
家を得て、グランドピアノまで手に入れた。
夢が突然叶ってしまった。


ロサンゼルスでは、コミュニティ・カレッジで、ピアノを学ぶ機会を得たが、小さな自宅で、電子ピアノをひっそりと弾いていた。


ここ、セントルイスでも、ピアノを学び続けたい、とコミカレを訪ね、先生を探したが、見つからない。


セントルイスは静かで、物価も安く、住心地は良い。
美術館やジャズ・クラブなどの文化的エンターテインメントも豊富だ。


しかし、ニューヨークやロサンゼルス生活が長かった私にとって、音楽やダンスなどのパーフォーミング系の学校や先生の少なさとクオリティには、失望した。


今は、ネットやズームで、世界中の素晴しい先生と学ぶ事が出来るので、ありがたい。


それにしても、ロサンゼルスでは、
米国籍も無い私が、
当然の如く、公立大学に無料で通い、
当たり前のように、
素晴しい教授から学んでいたな、
と今になって、感謝する。

さすが、州のGDP が世界ランキングで第5位のカリフォルニア州。
州の経済状況を向上させるために、
誰もが、
無償で大学に行けるシステムが定着している。


グランドピアノを得た私は、ネットで学んでいるが、孤独だ。音楽は、一人、家で演奏するものでは無い。


そんな私に、
複数の友人から、
子供にピアノを教えて欲しいと、
よく尋ねられる。


私は、ユダヤ人コミュニティの中で生活している。
ここでは、ユダヤ人の子供達は、
ユダヤ教の学校に通っている。

幼稚園から高校まで、
一般教養の他に、
ヘブライ語と旧約聖書関連の授業があり、
音楽の授業の入る余地は無い。


日本では、幼稚園からハモニカを習い
縦笛やピアニカなども公立学校で習得出来る。

ピアノなどの音楽を、趣味として学ぶ子供も多い。


それに比べると、ここの子供達は、楽器に触れることが皆無だ。親達も、楽器が弾ける人は少ない。


日本では普通、ピアノは音大を出て、
ピアノ教授法を学んだ先生が教えるものだ。

だから、私は、ピアノを教える事を、
2年間、丁寧にお断りしてきた。


最近考える。

このコミュニティーに、
私は何を、貢献できるのか、と。


ユダヤには、こんな格言がある。

If you know alef(ヘブライ語のA), teach alef. 

つまり、自分より知識のない人には、
自分の持っている知識を
惜しみなく与えろ、という事だ。


音楽も、ピアノも全く知らない子供達に、
音楽を奏でるって素晴しい、と思えるように
基礎を教える事は、
私にもできるかもしれない。


音楽は心身を癒し、鍛え、
脳に良い影響を与える、
と科学的にも証明されている。


私は、何を、恐れているのだろうか。


音楽の、素晴らしさや
弾ける喜びを
誰にも負けないくらい経験し、
自信を持って、伝えられる。


苦しんだり、悩んだりしたからこそ、
教えられる何かを
私は、持っているのかもしれない。


私は、ピアノを教えられるのか?

教えても、良いのかな?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?