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そのバリアみんなで取り除いていきましょう|令和6年4月から、障害者差別解消法が変わります。

4月1日から「障害者差別解消法」の改正法が施行されました。それにともない、行政機関だけでなく私立学校や民間事業者にも、障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されます。みなさんに関係があることなので、ぜひ読んでいってください。ぺこり。

社会全体の生活様式というのは、多数派の人たちが暮らしやすいようにできています。物理的環境、制度、慣習や文化、観念などが多くの人たちの「当たり前」で作られていくのはある意味自然な流れだったのかも知れません。しかし問題は、そうして作られた環境が、全ての人にとって暮らしやすいものではないということです。多数派の様式では日常生活や社会生活に支障があり、参加・活動することが難しいという少数派の人たちもいるのです。

ここで押さえておきたいのは、「多数派=正しい」ではないということです。あるカテゴリーにおいて、たまたまそういう属性の人が多いというだけです。そして人は、切り取る面によって多数派の立場にも少数派の立場にもなり得ます。条件によって、時の流れによっても状況は変わる。誰もが、多数派側にも少数派側にも、助ける側にも助けられる側にもなりうるお互い様の世の中です。どんな立場になったとしても安心して暮らせるように、今回の改正を機に「障害」とは何なのかをみんなで考えられたらと思うのです。

以前は、「障害」は心身のはたらきの障害によるもので、その人自身にあると考えられてきました(医学モデル)。しかし現在は、障害のある人が日常生活または社会生活の中で受ける様々な制限は、自身の障害のみが原因ではなく、社会の側にある様々な障壁(バリア)によって生じるものと考えられています(社会モデル)。

例えば、車椅子ユーザーは、スロープやエレベーターがあれば一人で移動することができますが、階段しかない状況ではそれができません。階段しかない環境というのは、多くの人が階段を歩いて移動できるという多数派の「当たり前」によってできています。この車椅子ユーザーにとっての階段が「社会的障壁」で、それによって移動できないという「障害」が生じています。

そうした社会の側にある障壁を取り除くために必要な手立てが「合理的配慮」です。障害のある人から申し出があったときに、個別の状況に応じて行われる配慮のことです。

「合理的配慮」とは、分かりやすく言えば、一人ひとりが度に応じた眼鏡をかけられるようにするということ。「みんなが同じ眼鏡をかける」のではなく、「みんなが同じ様に見える眼鏡をかける」という意味合いです。

左:みんなが同じ眼鏡をかけるの意
右:みんなが同じ様に見える眼鏡をかけるの意
同じ景色を誰もが楽しめるような舞台を整える

人の視力はいろいろですが、「みんな平等にしないといけないから全員同じ度の眼鏡をかけて生活してもらいます」と言われたらどうですか?「んなアホな」ですよね。でも実際には、平等という名のもとに「んなアホな」を強いていることが結構あります。「合理的配慮」の提供については、「みんな同じ」条件でスタートラインを揃えるではなく、それぞれに必要な手立てを講じて、参加に向けてのゴールラインを揃えるという発想で進めていくのがいいかも知れません。

合理的配慮の事例や、ガイドラインを示してくれている「内閣府リーフレット」のリンクを貼っておくので、ぜひチェックしてみてください。
「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/gouriteki_hairyo2/print.pdf

合理的配慮とは具体的に
①行政機関等と事業者が、
②その事務・事業を行うに当たり、
③個々の場面で、障害者から「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意思の表明があった場合に
④その実施に伴う負担が過重でないときに
⑤社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずること
とあります。

加えて、合理的配慮の提供に当たっては、障害のある人と事業者等との間の「建設的対話」を通じて相互理解を深め、共に対応案を検討していくことが重要であると記されています。互いに同じ方向を目指して、可能な落とし所を見つけていくことができるといいです。

世の中は多様な人たちの集まりでできています。その一人ひとりに自分らしく生きる権利があります。もちろんこれを読んでくださっているあなたもその一人です。誰にも、大なり小なり生きづらさはあります。多様性の理解とは、それぞれがもつ生きづらさの存在を知ることでもあると思います。

互いの大らかさとみんなの工夫で、生きづらさの壁を少しずつでも取り除いてくことができたなら、世の中は今よりもっと元気になっていきそうな気がします。

以下は、高等学校での合理的配慮についてについて書いた記事です。少しでも参考になればと思います。


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