つぶやき 買われるニッポン、の土地

 前項で、インバウンドの視点から日本が安売りされている、せざるを得ない状況を少し書いた。「明治から戦前にかけて蓄積したもの――物心両面の――を浪費した成れの果てが、いまかもしれない」とも。

 モノにもいろいろあるが、わたしがいちばん心を痛めているのは、土地(不動産)だ。日本は言うまでもなく資本主義国で、農地など政策的に保護されている対象を除き、土地の売買も基本的に自由だ。頑張ってお金を貯めれば、あるいはローンの条件を満たせば、広さや立地はともかく原則として誰でも土地を買える。外国人であっても。

 わたし自身がその方面に関心があるからだろうが、外国人や外国資本による日本の土地の購入がメディアで取り上げらるのを時々見聞する。コロナ前の、観光客による「爆買い」は少し落ち着いたように見える一方(もちろん日本での旅行でたくさんお土産を買う外国人は多い)、土地のほうは「爆買い」と言っていい状況が、むしろ高まっているのではないかと思う。

 街なかで、ビルの入り口などで外国人が数人たむろし、案内役の説明を聞いている姿をときどき見かける。その人たちは、一見あまり目立たない。見た目が日本人に近いからだ。しかしよく観察すると、風貌や立ち居振る舞いが日本人のそれとは少し違う。決定的なのは、話す言葉が日本語ではない。

 まあ簡単に言えば、中国語だ。中国語にも、香港人の広東語、台湾人の台湾語や台湾的特徴のある標準語(国語)とさまざまなのだが、まず大陸系の中国語だ。明らかに北京訛りのこともある。

 勝手な想像だ――しかしそれほど外れてもいないと思う――が、その皆さんは大陸から個人で、あるいは企業として日本の不動産を購入に来た方々で、説明しているのは日本の不動産会社で働く、あるいは自身で不動産会社を興した中国の方だろう。日本国籍を取得しているかもしれない。

 聞くところでは、不動産と言ってもマンションの一室や戸建て一棟という単位ではなく(個人ならその規模もあるだろうが)、マンション一棟、ビル一棟単位の購入なのだとか。もちろん違法ではない。合法の、かついまの日本の不動産市場ではむしろ歓迎される取引だ。

 一方、日本(外国)人は中国の土地は買えない。正確に言えば使用権は買えるが年限つきだ(ただしそれは中国人も同じ)。なんかおかしくないか? とわたしはずっと思っているが、「合法」の前では無力だ。

 ご存知の方も多いと思うが、中国の法律では、海外にいる個人や企業も国の政策に協力せねばならず、「いざ」というとき国はその資産も合法的に利用できる。日本の土地所有や使い方と前提がまったく違う。

 飛行機の上から日本の田畑や山林を見るとき、その美しさと、ご先祖たちが耕し手入れしてきた苦労に涙が出る。その土地が、日本人の手から少しずつ離れていこうとしている。日本のあちこちの土地が外国人に「合法的」に所有された先に日本はどうなるのだろう? 政治家のみなさんは、そんな先のことまで考えているように見えない。

追記  日付が変わってしまい、また1から出直しだ~(涙)www

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