二三四

プロフィールはご想像にお任せします。写真は「文字を持たなかった昭和」のメイン人物、ミヨ…

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プロフィールはご想像にお任せします。写真は「文字を持たなかった昭和」のメイン人物、ミヨ子さんです。

記事一覧

文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話15 ご近所

(前項「短いお散歩」より続く)  94歳(ほんとうは95歳)で、脚力がだいぶ落ちているミヨ子さんの歩みはゆっくりだ。会うたびに狭くなっていく歩幅で、少しずつ前に進む…

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18時間前
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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話14 短いお散歩

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの…

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1日前
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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話13 「たまには外を…」

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの…

二三四
2日前

文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話12 ボタン

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの…

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3日前

文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話11 毛糸のチョッキ

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの…

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4日前
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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話10 着た切り雀

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの…

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5日前
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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話9 何十年ぶりかの母の日、余談

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。  このところは、先日帰省した際のミヨ子さ…

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6日前
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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話8 何十年ぶりかの母の日(後編)

(前編より続く)  ミヨ子さんと二人で食べたお昼ご飯の後は、メインイベント。母の日のプレゼントの披露だ。  これまた事前に送り、この日までしまってあったクッキー…

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7日前

文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話7 何十年ぶりかの母の日(前編)

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの…

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8日前
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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話6 原体験

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの…

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9日前
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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話5 残っていると気が済まない?

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。  このところは、先日帰省した際のミヨ子さ…

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10日前

文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話4 お酒

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。  このところは、先日帰省した際のミヨ子さ…

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11日前
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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話3 食欲

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸に庶民の暮らしぶりを綴ってきた。2回ほど寄り道したが、先日帰省した際のミヨ子さん…

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12日前
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文字を持たなかった昭和 鹿児島のお菓子(かからん団子)後編

(前編より続く)  鹿児島の庶民のお菓子「かからん団子」について述べている。庶民の、と言っても作るのに手間がかかり、日常的に登場する食べものではなかった。  わ…

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13日前
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文字を持たなかった昭和 鹿児島のお菓子(かからん団子)前編

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。  ごく最近、ミヨ子さんの様子を見に短い帰…

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2週間前

文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話2 進む認知機能の低下

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸に庶民の暮らしぶりを綴ってきた。  前項からは先日帰省した際のミヨ子さんの様子…

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2週間前
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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話15 ご近所

(前項「短いお散歩」より続く)
 94歳(ほんとうは95歳)で、脚力がだいぶ落ちているミヨ子さんの歩みはゆっくりだ。会うたびに狭くなっていく歩幅で、少しずつ前に進む。十秒が一分ぐらいの感じだろうか。それでいて、いやそれだからか、周りの景色にはよく目が行く。

 背丈もだいぶ縮んだうえ背中が曲がっているミヨ子さんは、140センチほどの体で隣の家を見上げて
「ここは何年か前に建て替えたんだよ。奥さんは

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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話14 短いお散歩

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの様子をメモ代わり書いている。

 前項では、週4回のデイサービス(とたまの病院)以外外出することはなくなったミヨ子さんが、居間の窓から外を眺め「たまには、外をぶらぶらしてみたいねぇ」と(鹿児島弁で)呟いたことについて書いた。それを受けて

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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話13 「たまには外を…」

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの様子をメモ代わり書いている。

 ミヨ子さんの暮らしぶりは、着衣について述べた「着た切り雀」でこう描写した。
――かくして…昼も夜も同じ服を着て居間に座り、ご飯を食べ、眠くなればベッドに潜り、時間がくればデイサービスに行く。合間に、飼わ

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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話12 ボタン

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの様子をメモ代わり書いている。

 前々項では「着た切り雀」、前項では「毛糸のチョッキ」というタイトルで、ミヨ子さんの着衣やその習慣について述べた。それで思い出したことをひとつ付け加えておきたい。

 前回(昨秋)の帰省について記した中で

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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話11 毛糸のチョッキ

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの様子をメモ代わり書いている。

 前項では「着た切り雀」というタイトルで、ミヨ子さんにとって昼夜の区別があいまいになってきて、服のままベッドに寝ころんだり、夜も同じ服で寝ている状態について述べた。寒がりなので重ね着したがることについても

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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話10 着た切り雀

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの様子をメモ代わり書いている。

 1年に1~2回帰省し、合間に電話やビデオ通話でミヨ子さんの状態を窺っているが、直接顔を合わせてみると、いろいろなことが明らかに変わってきていることに気づかされる。そのひとつが、着衣の習慣だ。

 たしか

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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話9 何十年ぶりかの母の日、余談

文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話9 何十年ぶりかの母の日、余談

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。

 このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの様子をメモ代わり書いている。前々項と前項では、何十年ぶりかで母の日を一緒に過ごしたことを述べた。「母の日なんてやったことがない」と言われてがっかりしたことも。

 前項で触れたとおり、ミヨ子さんの末の妹で屋久島に住んでいるすみちゃ

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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話8 何十年ぶりかの母の日(後編)

(前編より続く)
 ミヨ子さんと二人で食べたお昼ご飯の後は、メインイベント。母の日のプレゼントの披露だ。

 これまた事前に送り、この日までしまってあったクッキー詰め合わせとカードを出す。前日鹿児島中央駅の駅ビルで買ったリブ編みの薄手のセーターも。

 「プレゼントが食べ物だけでは寂しい気がする」と、ミヨ子さんと同居するお嫁さん(義姉)に意見を求めたところ「寒がりだから、重ね着に便利な服が一枚あっ

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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話7 何十年ぶりかの母の日(前編)

文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話7 何十年ぶりかの母の日(前編)

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの様子をメモ代わり書いている。

 今回の帰省では、ミヨ子さんがデイサービスに行かない日には一緒に過ごすつもりで段取りをして行った。お昼どき簡単に作れそうな食材も事前に送っておいた。お嫁さん(義姉)も気を使ったのだろう、用事を作って家を空

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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話6 原体験

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの様子をメモ代わり書いている。

 認知機能の低下は進んでいるが、食欲はあり飲み物もしっかり飲んでいる様子を見ていて、出されたものを残しては気が済まないのでは、と推測した。それで思い出したことがあるので、補足しておきたい。ミヨ子さんが以前

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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話5 残っていると気が済まない?

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。

 このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの様子をメモ代わり書いていて、思ったより元気だが認知機能の低下は進んでいること、でも食欲はあり、飲み物もしっかり飲み、用意すればお酒も少し飲むことなどを述べた。

 そんな、なんでも平らげ、飲み干してしまう様子を見ていて思ったのは、

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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話4 お酒

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。

 このところは、先日帰省した際のミヨ子さんの様子をメモ代わり書いていて、前項では元気の源であろう食欲について述べた。目の前にある食べ物には何でも興味を示し、食べようとすることについても。

 ミヨ子さんの場合食べ物だけではなく飲み物も同様で、飲み物を渡すと、鹿児島弁で「ごい

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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話3 食欲

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸に庶民の暮らしぶりを綴ってきた。2回ほど寄り道したが、先日帰省した際のミヨ子さんの様子について続けよう(前々項、前項に続く)。

 前々項で「思ったより元気」だったことを述べたのだが、ミヨ子さんの元気の源は、まちがいなく「よく食べる」点にあると確信する。人間(動物)は口から食べられなくなったら終わり、とよく言われ

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文字を持たなかった昭和 鹿児島のお菓子(かからん団子)後編

文字を持たなかった昭和 鹿児島のお菓子(かからん団子)後編

(前編より続く)
 鹿児島の庶民のお菓子「かからん団子」について述べている。庶民の、と言っても作るのに手間がかかり、日常的に登場する食べものではなかった。

 わたしの記憶と近隣の習慣では、日本の他地域の柏餅のように、端午の節句に作っていただくものだった。手作りできるとは言え特別なお菓子だったのだ。それに、端午の節句にはどの家でも作っていた、という記憶がない。母親のミヨ子さんにも、作ってもらった(

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文字を持たなかった昭和 鹿児島のお菓子(かからん団子)前編

文字を持たなかった昭和 鹿児島のお菓子(かからん団子)前編

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。

 ごく最近、ミヨ子さんの様子を見に短い帰省をしたついでに、地元――と言ってももう実家は取り壊してないのだが――の物産を売る店に立ち寄った際に「かからん団子」(※写真)が目についたので、つい買い求めた。鹿児島では広く知られた、庶民のお菓子なのだ。

 「かからん団子」は、米粉

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文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話2 進む認知機能の低下

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸に庶民の暮らしぶりを綴ってきた。

 前項からは先日帰省した際のミヨ子さんの様子を書きつつあり、今回印象が強かったことのひとつめとして「思ったより元気」だったと述べた。ふたつめとして、さはさりながら認知機能の低下が進んでいることを挙げたが、本項ではそれについて詳しく述べたい。

 ミヨ子さんが息子(兄)家族と同居

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