二三四

プロフィールはご想像にお任せします。写真は「文字を持たなかった昭和」のメイン人物、ミヨ…

二三四

プロフィールはご想像にお任せします。写真は「文字を持たなかった昭和」のメイン人物、ミヨ子さんです。

最近の記事

文字を持たなかった昭和 鹿児島のお菓子(かからん団子)後編

(前編より続く)  鹿児島の庶民のお菓子「かからん団子」について述べている。庶民の、と言っても作るのに手間がかかり、日常的に登場する食べものではなかった。  わたしの記憶と近隣の習慣では、日本の他地域の柏餅のように、端午の節句に作っていただくものだった。手作りできるとは言え特別なお菓子だったのだ。それに、端午の節句にはどの家でも作っていた、という記憶がない。母親のミヨ子さんにも、作ってもらった(あるいは一緒に作った)ことは数えるくらいしかないと思う。  おそらく、鹿児島で

    • 文字を持たなかった昭和 鹿児島のお菓子(かからん団子)前編

       昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。  ごく最近、ミヨ子さんの様子を見に短い帰省をしたついでに、地元――と言ってももう実家は取り壊してないのだが――の物産を売る店に立ち寄った際に「かからん団子」(※写真)が目についたので、つい買い求めた。鹿児島では広く知られた、庶民のお菓子なのだ。  「かからん団子」は、米粉の団子をサルトリイバラや同属のサツマサンキライの葉で包んである。この、先端がちょ

      • 文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話2 進む認知機能の低下

         昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸に庶民の暮らしぶりを綴ってきた。  前項からは先日帰省した際のミヨ子さんの様子を書きつつあり、今回印象が強かったことのひとつめとして「思ったより元気」だったと述べた。ふたつめとして、さはさりながら認知機能の低下が進んでいることを挙げたが、本項ではそれについて詳しく述べたい。  ミヨ子さんが息子(兄)家族と同居するようになって早や10年ほど経つ。その間の変化を――逐一身近で見ていたわけでな

        • 文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話1 思ったより元気

           昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸に庶民の暮らしぶりを綴ってきた(最近はミヨ子さんの舅・吉太郎さん、わたしにとっての祖父について書き進めているが)。  これまでも日頃のミヨ子さんの状況を随時メモ代わりに書いている。つい先日ちょっとだけ帰省したので、その際のミヨ子さんの様子を本項からしばらく書いてみたい。昨秋にも帰省のエピソードを「続」として書いたので〈240〉、今回は「続々」である。  今回強く印象に残ったひとつは、思っ

        文字を持たなかった昭和 鹿児島のお菓子(かからん団子)後編

        • 文字を持たなかった昭和 鹿児島のお菓子(かからん団子)前編

        • 文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話2 進む認知機能の低下

        • 文字を持たなかった昭和 続々・帰省余話1 思ったより元気

          つぶやき 牛の餌

          テレビのニュースで、鹿児島県徳之島の循環型農業の取り組みについて紹介していた。 牛の餌代の高騰に悩む畜産農家への支援として、地元の特産であるサトウキビの葉や茎を飼料として提供する仕組みを、県が中心になって構築した。サトウキビの葉や茎は畑にそのまま廃棄していたもの、畜産農家は餌代を抑えられる代わりに、牛の糞をサトウキビ農家に還元する、というもの。 北海道の牧場で見かける、牧草を巨大なロールに巻いた「あれ」と同じようなものがサトウキビ畑で作られ、牛舎に運ばれて

          つぶやき 牛の餌

          つぶやき 買われるニッポン、の土地

           前項で、インバウンドの視点から日本が安売りされている、せざるを得ない状況を少し書いた。「明治から戦前にかけて蓄積したもの――物心両面の――を浪費した成れの果てが、いまかもしれない」とも。  モノにもいろいろあるが、わたしがいちばん心を痛めているのは、土地(不動産)だ。日本は言うまでもなく資本主義国で、農地など政策的に保護されている対象を除き、土地の売買も基本的に自由だ。頑張ってお金を貯めれば、あるいはローンの条件を満たせば、広さや立地はともかく原則として誰でも土地を買える

          つぶやき 買われるニッポン、の土地

          つぶやき 買われるニッポン

           コロナ禍が明けたゴールデンウイーク、街なかにはいわゆるインバウンドのお客さんが溢れている。インバウンドって言わなくても外国人観光客でいいじゃないか、と思うが、インバウンドと言うほうが新しい感じがするのだろう。  メディア、ことにマスコミは、それらの人々をつかまえては「日本は何回目か」「どこに行ったか」「何を食べたか」「何が印象に残ったか」などなど質問しては、いちいち喜んだり驚いたりして見せる。  「なぜ(旅行先に)日本を選んだか」と聞かれ、アニメ、特定の文化、特定の食べ

          つぶやき 買われるニッポン

          つぶやき スマホから見る世界

           「文字を持たなかった明治」になかなか戻れない。パソコンが手元にないからだ。しかしnoteの連続投稿記録が中断するのが悔しいので――これまで、ちゃんと準備していたのにうっかり中断してしまったことが何回もある――、他の話題でお茶を濁しておく。  自分の投稿でも、スマホからだと別世界に見える。やたら長いのが興ざめなのはともかく、ぱっと見の印象がまったく違う。スマホだけから読んでいる人にどう見えるのか、がわかると、レイアウト的に別のことをやってみたくなる。  しかし自分はパソコ

          つぶやき スマホから見る世界

          つぶやき 美しい光景

           昨年夏のできごと。  猛暑日のランチどきのファミレス、隣の席には70代後半の母親と50歳前後の息子。 「スパゲティでいいかな」 「何でもいいよ」と母親。 「飲み物がついてるから持ってくるよ。ジュース、コーラ、ジンジャーエールもあるよ。氷はいらないよね」 「何でもいいよ」とまた母親。ドリンクバーからはグラスがふたつ運ばれた。  料理が来た。 「おいしい?」 「うん、おいしい」 「けっこうおいしいよね」………。 「あれ、もう食べないの? カレーにすればよかったかなあ。もっと食

          つぶやき 美しい光景

          ミヨ子さん語録「うはがまんめし、こなべんしゅい」

           昭和中~後期の鹿児島の農村。昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を中心に、庶民の暮らしぶりを綴ってきた(最近はミヨ子さんにとっての舅・吉太郎の来し方に移った)。たまに、ミヨ子さんの口癖や、折に触れて思い出す印象的な口ぶり、表現を「ミヨ子さん語録」として書いている〈239〉。  タイトルの「うはがまんめし、こなべんしゅい」はもちろん鹿児島弁の言い方なのだが、漢字を交えれば「う羽釜ん飯、小鍋んしゅい」。ここまで書けば、おわかりだろう。「大釜の飯、小鍋の汁」であ

          ミヨ子さん語録「うはがまんめし、こなべんしゅい」

          文字を持たなかった明治―吉太郎27 息子の「入籍」

           昭和中期の鹿児島の農村を舞台にして、昭和5(1930)年生まれのミヨ子(母)の来し方を中心に庶民の暮らしぶりを綴ってきたが、新たに「文字を持たなかった明治―吉太郎」と題し、ミヨ子の舅・吉太郎(祖父)について述べつつある。  6人きょうだいだった吉太郎に家族が増えていく様子を追った(大家族①、②、③、④、⑤、⑥、⑦、⑧)あと、手元の除籍謄本のうち三番目に古いもの(便宜上【戸籍三】とする)を眺めつつ、引き続き吉太郎きょうだいの動向を見てきた。  そして前項でようやく吉太郎自

          文字を持たなかった明治―吉太郎27 息子の「入籍」

          文字を持たなかった明治―吉太郎26 「婚姻」

           昭和中期の鹿児島の農村を舞台にして、昭和5(1930)年生まれのミヨ子(母)の来し方を中心に庶民の暮らしぶりを綴ってきたが、新たに「文字を持たなかった明治―吉太郎」と題し、ミヨ子の舅・吉太郎(祖父)について述べつつある。  ここしばらくは「大家族」をテーマに、6人きょうだいだった吉太郎に家族が増えていく様子を追った(大家族①、②、③、④、⑤、⑥、⑦、⑧)。参考にしたのは手元の除籍謄本のうち二番目に古いもの(便宜上【戸籍二】とする)だったが、続いて次に古い謄本(【戸籍三】と

          文字を持たなかった明治―吉太郎26 「婚姻」

          文字を持たなかった明治―吉太郎25 妻死亡ニ因リ……(続)

           昭和中期の鹿児島の農村を舞台にして、昭和5(1930)年生まれのミヨ子(母)の来し方を中心に庶民の暮らしぶりを綴ってきたが、新たに「文字を持たなかった明治―吉太郎」と題し、ミヨ子の舅・吉太郎(祖父)について述べつつある。  このところは「大家族」をテーマに、手元の除籍謄本のうち二番目に古いもの(便宜上【戸籍二】とする)を参考にして、6人きょうだいだった吉太郎に家族が増えていく様子を追い(大家族①、②、③、④、⑤、⑥、⑦、⑧)、続いて次に古い謄本(【戸籍三】とする)について

          文字を持たなかった明治―吉太郎25 妻死亡ニ因リ……(続)

          文字を持たなかった明治―吉太郎24 妻死亡ニ因リ……

           昭和中期の鹿児島の農村を舞台にして、昭和5(1930)年生まれのミヨ子(母)の来し方を中心に庶民の暮らしぶりを綴ってきたが、新たに「文字を持たなかった明治―吉太郎」と題し、ミヨ子の舅・吉太郎(祖父)について述べつつある。  このところは「大家族」をテーマに、手元の除籍謄本のうち二番目に古いもの(便宜上【戸籍二】とする)を参考にして、6人きょうだいだった吉太郎に家族が増えていく様子を追った(大家族①、②、③、④、⑤、⑥、⑦、⑧)。  前項では、「前戸主」仲太郎の死去を受け

          文字を持たなかった明治―吉太郎24 妻死亡ニ因リ……

          文字を持たなかった明治―吉太郎23 新しい戸主

           昭和中期の鹿児島の農村を舞台にして、昭和5(1930)年生まれのミヨ子(母)の来し方を中心に庶民の暮らしぶりを綴ってきたが、新たに「文字を持たなかった明治―吉太郎」と題し、ミヨ子の舅・吉太郎(祖父)について述べつつある。  このところは「大家族」をテーマに6人きょうだいだった吉太郎に家族が増えていく様子を追い(大家族①、②、③、④、⑤、⑥、⑦)、手元にある除籍謄本のうち二番目に古いもの(便宜上【戸籍二】とする)について書き終えたところだ。【戸籍二】の戸主できょうだいの長男

          文字を持たなかった明治―吉太郎23 新しい戸主

          明治の(?)習慣 電気をつけない

           「文字を持たなかった明治―吉太郎」と題して、祖父・吉太郎について述べてきている。このところは明治から大正期に作製された戸籍(除籍謄本)とにらめっこしながらの作業でいささか疲れてきたので、気分転換する。と言っても、吉太郎と関係があるのだが。  わたしは夜の室内が昼間のように煌々と明るいのは、あまり好きではない。慣れている室内なら多少暗くてもかまわない。廊下を歩く、洗面所で定位置にある物を取る、あるいは置くぐらいなら、いちいち照明を点けなくても平気だ。そもそもが狭い家、電源を

          明治の(?)習慣 電気をつけない