ガザでの「ジェノサイド」を観て戦争マシーンからの脱却をアピールするアメリカの大学生たち
アメリカの学生たちは大学が軍需産業からの投資撤退(divest)することを求め、ガザ住民たちと同様にテント生活を送ることで、アメリカとイスラエルの軍事協力に対する抗議の意思をアピールしている。ブラウン大学、ノースウェスタン大学、エバーグリーン州立大学、ラトガース大学、ミネソタ大学、ウィスコンシン大学などでは、大学当局から投資撤退を検討するという言質を引き出すのに成功した。
ガザでの大量虐殺は、若者たちに、アメリカの戦争マシーンに対する疑問の声を上げさせることになっている。アフガン戦争やイラク戦争でも見られなかったほどの盛り上がりとなった。アメリカの政治社会は1960年のアイゼンハワー大統領の退任演説で軍産複合体の不当な影響力の行使に警鐘を鳴らし、またキング牧師が1967年にアメリカ政府を「世界最大の暴力の提供者」と呼んだ時から何ら変化していない。
アメリカの大学生たちなど若者は、パレスチナにおける虐殺の停止を求めるだけでなく、アメリカが軍産複合体(議会やメディア、シンクタンクなども一体となっているが)体質から脱却し、自らが払う授業料がイスラエルの戦費にならないことを求めている。
イスラエルのネタニヤフ首相は5月14日、イスラエルの独立記念日の日に、国民に向けてハマスという怪物が根絶されるまで戦争は止めないと語った。イスラエルは軍事力でハマスなどパレスチナ人の戦闘能力を奪おうとしてきたが、それでも昨年10月7日のハマスの奇襲攻撃に見られるように「根絶」はできていない。イスラエルにとってその生存や国益を護るためにはパレスチナとの和平を推進することしかないように思えるのだが、イスラエルはその逆の政策をとっている。
アメリカ・バイデン政権は、イスラエルのラファ侵攻に対して、1,700発の500ポンド爆弾と1、800発の2,000ポンド爆弾の供与を一時停止したと発表し、またイスラエルがラファへの全面侵攻を行った場合、さらなる武器供与の停止もあり得るという警告を発した。しかし、この決定を明らかにした2日後、アメリカ国務省は、イスラエルの人道援助を妨害しないという公約や国際人道法に従うという意思表示は信頼できるという矛盾する報告を明らかにしている。
アメリカはイスラエルが現在ガザ攻撃に使用する輸入兵器の70%を提供する国である。イスラエルがガザ住民に爆弾を投下する主力戦闘機のF-16はアメリカのサウスカロライナ州グリーンビルのロッキード・マーティン社が製造している。イスラエルはこのF-16を224機保有し、ガザ、レバノン、シリア空爆に投入してきた。また、イスラエルはF-16よりも重量のある爆弾を搭載可能なボーイングF-15を86機保有し、さらに核兵器も搭載可能なロッキード・マーティン社のF-35を39機保有し、さらに36機発注している。F-35の部品は、イスラエルや日本などアメリカの同盟国で製造されている。
アメリカは昨年10月7日にハマスがイスラエルを攻撃すると、12月1日までに15,000発の爆弾と57,000発の砲弾をイスラエルに供与し、さらにBLU-109「バンカー・バスター」や巨大な5.000ポンドのGBU―28「バンカー・バスター」などありとあらゆる種類や規模の爆弾を提供してきた。
アメリカの学生たちのガザとの連帯を図る運動は、イスラエルのガザ攻撃によってアメリカのイスラエルに偏重する外交の矛盾とともに、アメリカ政治を支配してきた軍産複合体体質に疑問の声を上げ、大学がボーイング、ロッキード・マーティン、ゼネラル・ダイナミクス、ノースロップ・グラマンなどの軍需産業との取引を放棄し、関係を断たなければならないことを訴えている。また、大学当局が兵器製造業者との関係を、戦争や兵器のない未来に向けて活動する企業との経済関係に変えるべきだと主張するようになった。このような若い人びとの声にアメリカのあらゆる世代が耳を傾ければ、アメリカはキング牧師が形容したような「世界最大の暴力の提供者」としての体質から脱却し、世界はアメリカの戦争経済の被害からようやく免れることができることは言うまでもない。
表紙の画像は軍需産業からの投資撤退を求める南カリフォルニア大学の学生たち
https://www.nbcnews.com/business/business-news/college-protesters-divest-from-israel-what-it-means-rcna149147
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