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「ふたりの天使」が教えるユダヤ教の義の世界 ―天使、チョムスキー、アインシュタイン、アーレント

 国連総会でパレスチナの国連加盟が採択された。イスラエルの国連大使は国連憲章をシュレッダーにかけてみせた。ガザで3万5000人の人々が殺害されているが、イスラエル人が信仰するユダヤ教の本来の姿はこれらとは異なってヒューマンなものだと信じたい。

パレスチナの国連加盟 安保理に再検討を求める決議を国連総会が賛成多数で採択(2024年5月11日) https://www.youtube.com/watch?v=UBdlQvYP0_Q


 1970年にダニエル・リカーリの歌で大ヒットした「ふたりの天使」はすべてのバージョンを合わせて1500万枚の大ヒットを記録した。ダニエル・リカーリの歌の動画は

https://www.youtube.com/watch?v=5Ojnl8atrsY

にある。
 天使は神の使者である霊的存在で、ゾロアスター教、ユダヤ教、キリスト教、イスラムで神と人間の中間的存在で、ゾロアスター教では善神と悪神の戦いで、天使は前者を、悪魔は後者を応援する。ユダヤ教ではバビロン捕囚以後、天使の概念が採り入れられたと考えられている。キリスト教では、天使はキリストの誕生を告知し、信仰者の祈りを神に届ける存在だ。イスラムでは、天使は信ずべき6つの対象「六信」のうちの一つとなっている。このようにガザでジェノサイドを行うイスラエル人が信仰するユダヤ教と、パレスチナ人の多くが信仰するイスラムとでは天使などについても少なからぬ共通性がある。

 イスラエル軍によるガザでのジェノサイドを見てユダヤ教にはヒューマニズムがないと思う人がいるかもしれない。しかし、ナオミ・クラインが言うように、ガザのジェノサイドを行うイスラエルの極右勢力のふるまいをもってユダヤ教の本質を見るような思いになってはならないと思う。イスラエルの極右はユダヤ教をナショナリズムに援用しているにすぎない。

 言語学者のノーム・チョムスキーによれば、「反シオニズム」とはパレスチナ人の人権を侵害するイスラエルの政府の政策を批判することで、ユダヤ人を差別、迫害、排除するナチス・ドイツが行ったような「反セム(ユダヤ)主義」と区別されるべきである。イスラエルを批判する者を「反セム主義」と形容することは、ナチス・ドイツの反ユダヤ政策を支持しているという印象を与えることになり、「反セム主義」の本質を正しく伝えず、その犠牲となった人々を冒涜することにもなりかねないとチョムスキーは主張する。

私は、イスラエルの占領とパレスチナ人の人権否定を隠蔽するためのイスラエルのナショナリスティックで、またはその他の誇示目的で利用するイスラエルのいかなる欺瞞にも反対する。 https://twitter.com/Art4PalestineUK/status/918434232871079936


 チョムスキーによれば、イスラエルはリベラルな市民の支持を失い、欧米の最も反動的な勢力や原理主義的な福音派の運動によって支持されるようになり、これらの運動は、反セム主義のイデオロギーをもちながらも、イスラエルの過激な行動を支持している。福音派の考えでは、イエスの復活によって成立する千年王国ではユダヤ人の特別的な地位を認めることはなく、アメリカの大統領選挙でトランプ前大統領を支持する福音派には白人至上主義者が多い。

 ユダヤ人の科学者アインシュタインは、ユダヤ人を数千年にわたって結びつけてきたものは民主的な社会正義の考えであり、それは相互扶助と寛容の理念にも基づくものであると書いたが、異教の者たちに対して社会正義、相互扶助、寛容の姿勢で接するべきと1938年に述べている。アインシュタインはまた、1929年にシオニズムの指導者ハイム・ワイツマン(イスラエル初代大統領)に「ユダヤ人にとって必要なのはアラブと共存することであり、それができないのであれば、我々は2000年の苦難の歴史から何も学んでいないことになる。」と語った。

これはアーレントらとともに出した意見広告の一部。 「ナチス・ドイツがユダヤ人にしたことと同様なことをシオニストがパレスチナ人に対して行っていることが最大の悲しみである」 Albert Einstein, Sidney Hook, Hannah Arendt and twenty-five other prominent Jews, in a letter to The New York Times (December 4, 1948), condemned Menachem Begin’s and Yitzhak Shamir’s Likud party as “fascist” and espousing “an admixture of ultra-nationalism, religious mysticism and racial superiority.”


 ドイツ出身のユダヤ人哲学者ハンナ・アーレント(1906~1975年)はアラブ人との合意なしにパレスチナのユダヤ人国家は生存できないと考え、シオニスト政党への批判を強めていった。パレスチナへの植民を進めるハイム・ワイツマン(初代イスラエル大統領となった人物)はイギリス帝国主義の下僕であり、ユダヤ人の領域から異民族を徹底的に排除することを考える修正主義者たちは「ファシスト」であると見なすようになった。

 第二次世界大戦以前、アメリカではシオニズムがユダヤ人の間で主流のイデオロギーになることはなかった。シオニズムはアメリカとは異なる国家への「忠誠」をユダヤ人の間に求めることになるからだ。アーレントも第二次世界大戦が終結すると、シオニストの指導者たちは植民地主義を追求し、またシオニズムを「血(兵士)」と「土(領土)」によるナショナリズムと考えるようになった。「血と土」によるナショナリズムは、ドイツのビスマルクやヒトラーが追求したナショナリズムと同質のもので、現在はパレスチナ人たちをひどい抑圧の下に置いている。



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