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【連載企画】移住者目線 地方創生みやざき

 地方創生を考える上で、移住促進は欠かせない。とはいえ、移住者の目に本県はどう映っているか。県内各地の移住者に本県の魅力や移住における課題などを聞いていく。

年齢・職業は当時。宮崎日日新聞本紙に2016年5月12日から2017年3月23日まで掲載


1.農業・長崎純也さん(29)

京都市→五ケ瀬町

■農業のノウハウ習う
 「このカブの葉、甘いね」-。家族3人の笑顔が春の陽光に照らされている。広大な山々に囲まれ農村文化が栄えてきた五ケ瀬町。京都市に住んでいた同町鞍岡の長崎純也さん(29)=大津市出身=は4年前、旅の途中で立ち寄った同町の自然や人情にほれ込んで移住。今は同町などに計1・5ヘクタールの農地を借り農業に従事している。
 当初はNPO法人五ケ瀬自然学校(杉田英治理事長)でキャンプスタッフなどをして働いていた。杉田理事長の勧めもあり、農業法人「五ケ瀬自然農園」を設立。米、パプリカ、ピーマンなどを作り関東、関西方面に出荷した。「地元の人に農業のノウハウを習い、生活においても多くの支援をいただいた。集落ごとに組織があり、深い関わりが大事。そこに入っていくことで田舎の良さも見えてくる」とほほ笑む。
 同じく同学校で働いていた志穂さん(34)=大分県佐伯市出身=と2013年に結婚。長女江玖ちゃん(2)を授かった。有機JAS認定も取得し、現在はニンジンとカブに絞り経営も軌道に乗り始めている。

栽培するカブの花畑の中で会話を楽しむ長崎さん
一家。純也さん(右)は「いろんな人たちに助け
られている」と感謝する           

入居できる空き家不足
 一方、同町での住居は現在が3軒目。空き家探しにことのほか苦労したという。「すぐには貸せないというところや、老朽化し大幅な修繕が必要な家など、移住希望者が多い割にはすぐに住める空き家が不足している」
 同自然学校は15年度、同町の「五ケ瀬移住促進事業」の委託を受け、空き家の調査などを行っている。杉田理事長は「空き家と思われるものはかなりあるが、実際すぐに貸せるのは5、6軒。条件のいい物件は売れてしまった。しかし、以前は貸さないと言っていた人が高齢になり管理がきつくなって貸したいと言ってくることもある。これからはそういう人と移住者のマッチングも大事」と話す。
 長崎さんは「数年もすればさらに空き家は増えるだろう」としながら、「将来的には移住した人たちに無農薬の農業を広めたい」と見据えた。
 4月の熊本地震を受け同自然学校は物資搬入の拠点として活動。長崎さんもスタッフとして奔走している。長崎さんは「車中泊や自主避難者など行政の手の届かない所への支援をしていきたい」と話す。

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