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我が家が出遅れたワケ

数年前に和歌山のみかん農家さんのところに遊びに行ってからずっと思ってた。違う。何かが違う。でも、その何かが分からない。

今思えば無意識に逃げていたのかもしれないが、現実を知らなければ前には進めない。苦しいけどその何かを深掘りしてみた話です。

私が抱いていた漠然とした違いは「ビジネス思考の強さ」それはイチ農家だけじゃなく地域としてベースが違う。数年前まで直売所に出すだけで「一目」置かれていた地域の人間としては圧倒的に意識が高い。

なぜなのか。生産者であり農業をよく知る相棒(旦那)に聞くと「畑の大きさ違うからじゃない?売り先努力しないと生活に直接関わるから」と返ってきた。うーん、かすってる気もするが違う気がする。わが地域はかなり閉鎖的。「皆で足並み揃える」という謎のスローガンのもと"出る杭は打たれる"こちらの地域の方がよっぽど生活に余裕がない様に見えるからだ。

隣の芝生効果はあるだろうが、私から見たらあちら側の方が楽しそうに、豊かに見える。なぜなのだろうか自分なりに考えてみた。

我が家(中規模農家)の現実

全国の農家一戸あたりの平均農地面積は1.8ヘクタール。一方で北海道は11.1ヘクタール。(都道府県版ローカルSDG's指標より)
ちなみに我が家は22ヘクタール。
北海道の農地が広いのは知っていたが、それが販売先、経営の違いに結び付いていなかった。だが、農地が広いという事がやはりこの「何か」を生み出していた。

農地が広い故に「豊だ」と勘違いされやすいが現実は違う。広い農地に対して圧倒的な人手不足は過労を生み出し「販売」の意欲を消す。朝4時から23時まで休日なしで作業していれば根性の問題ではなく物理的に無理なのだ。

そして、収量の問題。もちろん十勝型農業の様に圧倒的な面積があれば話は違うが、北海道の中規模農家であれば、"農協に出せば買い叩かれて生活できない。が、個人販売するにはさばききれない量"さらに野菜は日持ちしない。広い畑はそれ相応の"維持費"が重くのしかかるため、少しでも高く取引できるBtoBの販売戦略が中心になる。

そんな中で個人への販売や発信に尽力しても収入に占める割合は伸びず「そんなことしてもムダ」という考えが蔓延しているのだ。ここに私の感じた「なにか」の答えがあった。

BtoBの販売戦略はもちろん大事だ。だが、本来、BtoBで経営を大きく伸ばすためには商品力(質のいい野菜)はもちろん、相手に「取引したい」と思わせる農家である事が重要だと思う。この情報社会の中で、「個人客から支持されている商品(農家)」は重要だと思う。取引して下さる企業様の先にいるのは結局「個人のお客様」なのだから。そうなると、目的は違えど、個人への発信や販売がムダではない、むしろ必要な事であると私は思う。何より個人への販売を本気で取り組めば自ずと時代の流れ、消費の動向など情報を取りに行くようになる。(その中で、自分の無力感や他県と比べて…と落ち込む事は多々あるのだが…。)そこが弱いから、結局はBtoBもさほど伸びずに、「顔なじみ」の中で供給過多になり商品力ではなくコネや価格で勝負する羽目になっている、と私は思う。

結論:過酷な労働の中で時代の早さに取り残された

ここまで一丁前に持論を展開してきたが私は、元々農家ではなく嫁いできた側。そして完全分業で販売や広報など舵取りをやらせて貰っているからこそ感じた事。私も早朝から夜中まで目の前の仕事をしていたら気付かなかった、考えもしなかったかもしれない。企業努力して前に進むことを「人を出し抜く、輪を乱すやつ」とされてきた土地で、毎日過酷な労働。一方で時代の変化は加速して気付けば取り残されていた。それが、答えじゃないかと思う。

とはいえ、苦悩は続くのだ

ここまで来てなんだが、私はど素人。何の知識も経験もない。子供たちが農家をやりたいと思った時のために、畑を守り経営基盤を作りたいと舵取り役を始めたが、先に書いた通り問題は山積みで、力不足を痛感する毎日。逃げ出したくなる事もある。先に書いたように性質的に小売りなけではなく、「多角経営」が必要となってくるため、はっきり言って本来素人が舵取りをするには限界があると思っている。だが、諦めるわけにはいかない。

今の時代に取り残されようと先代から130年受け継いだ土と技術は尊い。その尊さを100年先まで残したい。その熱は、私にしか持てない。だからその熱に向き合い、自分自身が熱狂していく。そう考えたら私が足掻いてる事なんてちっぽけな通過点。まずは、目の前のめんこい我が子の未来のために今日も足掻き続けよう。そして、願わくば、時代に取り残されても、職人が職だけに向き合える、そんな世の中になればいい。そのお役に立つことが私の密かな夢である。


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