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【意外と知らない】演劇の換骨奪胎から学ぶ「オリジナリティ」とは

換骨奪胎の本来の意味は「古人の詩文をもとに独自の作品を作ること。他人の詩文、または表現や着想などに創意工夫を加えて自分のものとして作り出すこと」ですが、演劇の戯曲(脚本)も同じように制作されることがあります。

また、昨今では換骨奪胎が誤用されやすい言葉になっており、他人の作品の一部を変え新作に見せかける「焼き直し」の表現として批判的に使われることがありますよね。

しかし、語源は「換骨」と「奪胎」を合わせた言葉のため「骨を取り換えて生まれ変わらせることで、古人の詩や文の語、意味・表現・構成を換え、それに新しい思想を加えて自分の作品にする」と言えます。

つまり、昔の脚本を換骨奪胎して現代風にアレンジするという場合は、批判的ではなくポジティブな意味で捉えるほうが正解でしょう。

では、戯曲・脚本の換骨奪胎は良いことなのか。メリットとデメリットを合わせて紹介していきます。


書き換えることの良さ!換骨奪胎の戯曲(脚本)のメリットとは?


まず「温故知新」という言葉の通り、昔の作品をもう一度調べて描き直すことで、新たな道理や知識を手に入れられます。それは劇団・脚本家・役者・観客も同じではないでしょうか。

次に、原案となる作品の知名度が保障されている場合は、観客を呼びやすい・宣伝がしやすいことが挙げられます。

人によっては戯曲の焼き直しに見えるかもしれませんが、現代風に書き換えたウケの良い作品として顧客から評価が貰えた時、劇団や役者の知名度も上がることでしょう。

また、以前に不採用となった古い戯曲・脚本を換骨奪胎することで「新しい作品」として公演が可能です。せっかく長い時間をかけて練りだした脚本を“破棄”するより“再利用”したほうが賢い選択のように思えますよね。

さらに、原案となる戯曲(脚本)が極端に古い場合、現代で台詞の意味が伝わらない・内容そのものを観客が理解できないことがあります。

例えば、歌舞伎・落語で使われる『四谷怪談』の場合。江戸が舞台のため、観客に一定以上の教養があり、古典や世界観・楽しみ方を理解できていないと厳しい作品になりますよね。

歌舞伎と落語、どちらも換骨奪胎の工夫を施すことが多い分野ですが、それでも観客視点から見ると「分かりづらい」となる部分があります。

しかし、原作のままだとさらに伝わりにくい内容となるため、オリジナルの演技や台詞を追加したほうがウケは良いでしょう。

そして、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』の場合。

冒頭には門番(警備員)同士の会話が入りますが、当時の時代背景が表現されているため、露骨すぎるほど下品な台詞が複数あり、子どもにとっては際どい作品に感じられます。

実際『ロミオとジュリエット』の戯曲自体はとても素晴らしいものですが「現代で公演するなら無くしたほうが良い台詞」や「書き換えたほうが良い部分」はあると考えられるでしょう。こういった場合に換骨奪胎は必要ですよね。

さらに、時代背景の違いで起こる“悪い印象”を変えるため換骨奪胎を行ったほうが良い戯曲・脚本もあります。

例を挙げると、男尊女卑・人種差別・同性同士の恋愛に対する考え方等。現代からすると「酷い作品」と認識される戯曲もあることでしょう。

特に、同性間での恋愛に対する価値観はここ数年で大きく変わりつつあります。そのため、批判的な台詞を用いてしまうと観客から悪い印象を持たれるかもしれません。

他にも、近年で起こった災害や疫病などを少しでも取り扱う戯曲・脚本は、遺族のことを考えて換骨奪胎したほうが、劇団へのクレームを減らせると考えられるでしょう。

よって、換骨奪胎のメリットは以下となります。

・宣伝効果が期待できる
・破棄した脚本原案の再利用
・古い作品から新しい見解を学べる
・物語や台詞を観客に伝えやすくする
・現代に合わせた風潮で描くことにより観客ウケが良くなる
・時代背景の違いで「悪い印象」となる部分を書き換えられる 等。

オリジナリティが無い?換骨奪胎のデメリットとは?


まず、換骨奪胎のデメリットとして「オリジナリティが無い」と評価されてしまう可能性が挙げられます。なぜなら、原作となる創作物(戯曲・脚本)に手を加えるからです。

次に、原作の物語構成に縛られ過ぎるあまり、脚本作家の視野が狭くなることも考えられるでしょう。作家本人の後のことを考慮すると、処女作の場合はオリジナルで作成したほうが良いかもしれませんね。

最後に、原作の戯曲・脚本と比較して換骨奪胎した作品が面白味のない物語になってしまった場合。観客にとっては退屈と感じられるものになることでしょう。

そのため、書き換えを目的とした作品は「原作を尊重しながら、現代の風潮を交えた広い視野で描ける脚本家」を採用する必要があります。

しかし、基本的に換骨奪胎の形式で脚本制作に用いる作品は「多くの人が面白いと感じた原案」を採用するケースが多いはずです。

よって、原作の良い部分を活かしている要素があるなら、書き換えを行っても素晴らしい作品として捉えられるでしょう。

また、自然と原作の良い点を引き出す脚本となる場合が多く、観客からの評価も一定以上高いことが保障されるため、換骨奪胎の戯曲・脚本は前向きに捉えたほうが良いでしょう。

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