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猫の島に取り残された話

今回は自転車で日本一周をしているときに猫だらけの島に取り残された話。

日本には個性のある島がたくさんある。
海沿いは風が気持ちいいから自転車が早くなる。この日は猫だらけの島を目指して走っていた。

自転車を置いて島へのフェリーに乗り込む。
乗客は猫が好きそうな観光客3人と島民の方2人。

フェリーに乗ってゆらゆらと離島の時間に移り変わって行く。

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島着くとフェリーの音で猫がニャーニャーと集まってきた。
誰かがキャットフードを撒いて餌をやっていた。でも僕は自分の食費すら切り詰めているので餌は持ってない。
持ってきたメロンパンとカロリーメイトはなんとしても死守する。

フェリーの帰りの便は10分後。その次は7時間後だ。
10分は早すぎるので7時間島を楽しむ為に島を隅々まで探検する事にした。

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島には自動車もバイクも自転車も商店も自動販売機も無い。あるのは漁師の船と家だけ。
島民にとって船が車のようなものだろう。

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昔は賑わっていたらしいが今では数世帯あるのみ。年々と島を出て行く島民が続く。島の奥には小中学校が自然に帰ろうとしていた。
誰も近づく事のない島は廃校になった当時のままの時間が残っていた。

とりあえず島の灯台へ行ってみたが草木に囲まれて展望も悪くてすぐに引き返した。
歩くと結構距離があるので観光客も近づくことのない灯台は見晴らしを良くするほど手入れをする必要が無いのかもしれない。

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他にも島を探索したが島は小さい。あっという間に全てを歩いてしまった。

フェリーまで約4時間。猫と遊ぶ事にした。

猫じゃらしを拾って永遠と子猫と遊んだ。大人の猫はすぐに飽きてどっかへ消えていく。

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そういえば一緒にフェリーに乗っていた観光客は居なくなっていた。どうやら来て猫に餌をあげて、10分後の便で帰ってしまったらしい。この島にいる観光客は僕1人だった。

お腹が減って鞄からメロンパンを出すとビニールのガサガサした音に反応して猫があらゆる所から湧き出てきた。袋を開けた途端に猫が飛びかかってメロンパンを奪おうとする。
僕の手足に爪を立ててよじ登ろうとしてくる。

ナショジオの動画で見たことある光景だ。逃げ惑うシマウマに飛びかかるチーターの群れ。
僕はあのシマウマだ。
メロンパンが食べたかっただけなのに。このまま身体ごと食べられてしまうような恐怖を感じてフェリーの待合室に逃げ込んだ。

ドアがガリガリと音を立てて獰猛な肉食動物の鱗片を感じる。

少しだけ扉を開けてみた。

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どうやって重なってるんだ。

動物に襲われて扉が一つしかない密室に逃げるなんて映画の世界だ。
ジュラシックパークだったらトイレでパクりと食べれてしまいそうだ。

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この奥の猫なんて目つきが肉食動物だ。

でもよくよく考えたら猫が増えすぎて食料が行き届いて無い気もする。

フェリーを待っていると住民のお爺さんが声をかけてくれた。
「今日波があるからフェリー来ないらしいよ〜」
え…?そんな…

真冬に旅館も無ければ食べ物も無いこの場所で一体どうしたら…
そんな事も言えずに「わかりました〜」って言った。
寝袋も無いけど何とかなるだろう。
待合室で寝ていけばいいとの事。

突然暇になったけど、海があって、風があって、猫が遊んでくれた。

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夕陽が海に沈むのを猫と遊びながら過ごした。
自由気ままに心地いい暇だった。

お婆ちゃんがバケツ一杯の水を運んでいたので手伝ったりした。
布団を貸してくれると言ってくださったが、予報ではそんなに冷え込まないっぽいので自分の装備で何とかしますと伝えた。

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 今回の寝床。

日が落ちて猫もどこかへ消えてしまった。
夜お爺さんが訪ねてくれた。
「うちの婆ちゃんの手伝いをしてくれたって聞いて。これ少ないけど食べな」ってお稲荷さんと熱々のカップラーメンとお茶を持ってきてくれた。
漁師っぽいお爺さんで口数が少なくて渋い。カッコいい。

この島には人口減少を原因に繁殖しすぎた猫など様々な課題があるらしい。
今調べてみると様々な記事がヒットした。僕が訪れた時よりも猫が増えすぎていたり。一斉去勢手術をしたり。

冬の夜にしては暖かい方だ。でも少し寒い。
ダウンジャケットとレインウエアを着れるものを全て着込み、バックパックの荷物を全て出しバックパックを寝袋の代わりにして寝た。


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次の日、予定通りにフェリーが来た。

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フェリーに乗ってゆらゆらと時間に移り変わって行く。
乗客は猫が好きそうな観光客2人と島民の方2人。

置いていた自転車のカバーは風が強かったのかめくれ上がって落ち葉が沢山引っかかっていた。

千と千尋みたいに時間が戻ってきた。

現在この島の人口は片手で数えるほどまで減少してしまい、近い将来には無人島になる見込みだ。

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