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優先艇保護違反について考える

☆規程のおさらい
まず、現在のモーターボート競走競技規程23条について。事故艇が出た際の航走指示違反は失格の規程(第26条)が明記されていますが、優先艇保護違反については細則として選手「自らの判断で航走する」ことが義務付けられているだけで、特に失格の規程は設けられていません。

モーターボート競走競技規程
 第23条 モーターボートは、スタート後ゴールインするまでの間、事故艇又は救助艇がある場合は、当該事故艇又は救助艇と安全な間隔を保って航走しなければならない。

2 モーターボートは、ターンマーク付近において救助艇又は事故艇がある場合は、審判委員長の指示により、その外側を(救助艇又は事故艇の外側に安全な間隔がない場合にあっては、その内側を)航走しなければならない。ただし、事故艇が移動している場合その他やむを得ない場合は、この限りでない。

第26条 審判委員長が次の各号の1に該当すると認めた場合は、そのモーターボートは失格とする。
(1)…第23条第1項、同条第2項の規定に違反したとき…

第23条の細則は三吉功明氏(@kinggegg)のTwitterから引用。

今日の戸田11R。また八百長と騒がれかねないので、書いておきますが、八百長でもなんでもありません。
ただ、ファンには分かりづらいですよね。そもそも内規の23条がファンにとって納得しづらいもの。以前から言ってるが見直すべきと。

※前に書いた原稿を載せておきます。
pic.twitter.com/nvK5lXYaDr

— 三吉功明@ボートライター (@kinggegg) June 16, 2020

☆優先艇保護違反を審判が判断するのは無理
皆様ご想像の通り、この件の問題点は「ルール順守が徹底されておらず、優勝戦でやったもん勝ちとなる場合があった」こと。内側の艇の舳先が少しでもかかっていれば内側が優先となるのに、それが守られないケースが散見されたからです。
そもそもこんな重要なルールを走っている選手に判断させるなよ、審判が判断しろよという話でもあるんですが、逆に審判がそれを判断するのも非常に難しいのです。

実際に優先艇保護違反となりうる事象が発生した際、仮に審判がそれを判断するとなると、選手にどちらの艇が優先かを迅速に伝達しなければなりません。
しかし、現在のレース場にはそれを伝える(航走指示灯のような)ツールがなく、やるとするならば新設する必要があります。この時点ですでにハードルが高いことが分かると思います。その上、作るにしてもどんな形で選手に優先艇を伝えるのか?これについては実際にやってみないと変わらない部分が大きいと思われます。

それに加え、審判が優先艇を決定する場合、選手が実際そのように動くまでに若干のタイムラグが生じる可能性があります。仮に審判が決定した優先艇が、選手に伝達される前に優先状態から解かれてしまったら(=舳先が切れてしまったら)、事故艇付近を航走するまでに順位を変動させなければなりません。これにより、ルールを順守しようとした動きが逆に「順位変動による騒擾を惹起させる航法」に見えてしまう危険性を孕んでいます。

☆なぜ優先艇保護違反は失格とならないか
ここで、なぜ優先艇保護違反は失格とならないかについて簡単に触れます。
優先艇保護違反は、失格となる航走指示違反の細則であり、「事故が発生した際に、要らん二次災害を発生させない」ための23条=大項目の下部に当たります。理念的には「選手の安全を守るための23条は守って当然、その上で順位変動はないようにこういう風に動こうな」というのが細則に当たる優先艇保護違反なのだと私は考えています。したがって、大前提を覆してしまったら失格を含むより重い罰則、細則違反は失格はないけど同様に重い罰則、という具合なのではないでしょうか。
まあ、そもそも「細則を破ったら失格」という条項が既定のどこにもないので、それが理由と言われればそれまでなのですが。

☆優先艇保護違反の降着の是非は?じゃあ確定後に「優先艇保護違反がありました」と発表し、当該選手を降着の上順位を変動して確定させれば良いではないか、という声も多く見られます。というより、この意見が多数を占めている可能性もあります。
これが実現しない理由に関しては、ボートレースが他の競技と違い、レース終了後の順位変動を良しとしない意識が理由にあると考えます
例として、妨害失格を考えます。場合によっては失格となるかどうかかなり際どいケースでも、それが決定されれば事象が発生してからほぼ数秒で審判から失格コールがあります。
競馬や競輪であれば、全選手がゴール後に審判から放送があり、そこから裁決委員によって審議が行われます。しかし、ボートレースにはそれがありません。その理由としては以下が考えられます。

①時間の問題(2回走りの問題)
レース後の審議によって確定に時間が取られると、後のレースの締切・発走時刻がどんどん押していきます。ボートレースは合間にも後のレースの準備や、選手のスタート練習、2回走りの選手は後半に向けた準備があり、1分1秒を争う事態となっています。そのため、なるべく確定に時間を取られたくないという事情があるのでしょう。

②得点制トーナメントの問題
ボートレースは競輪やオートレースと違い、トーナメントが得点制です。競輪の場合は着順それ自体が勝ち上がりに重要な意味を持つため、着順を決定するための審議はやむをえませんが、ボートレースは最終反則行為があった場合は減点という形でペナルティが付されるため、結局降着と同様の状況になります。これにより、トーナメントの公平性が保たれているのです。

個人的には、この②が大きいのではないかと感じました。あとは、そもそも降着によるハズレがファンにとって煩わしさを与えてしまうからうから、とか。以上の理由により、なかなか降着云々の議論は進まないのです。

以上、いろいろと優先艇保護違反について書き連ねてまいりました。何分私の浅い知識による考察のため、誤り等含まれていましたら先にお詫びを申し上げます。
いずれにせよ、ボートレースのルールがなるべく多くのファンを納得させる方向に動くことを切に願います。

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