親と子、一期一会のめぐり逢い~日本講演新聞

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認知症の母親との4年間の生活を描いた小冊子をご紹介します。
介護した男性は、今までの人生で一番幸せだったのでは思えたそうです。

 この4月、宮崎市在住の行本月廣(ゆきもと・つきひろ)さん(65)が、認知症のお母さんの介護の日々を綴った40ページほどの小冊子を自費出版した。
『婆あ様と俺とのつらつら日記』である。

 行本さんは地元の将棋界ではちょっと名の知れたアマチュア棋士である。ある年、将棋大会の賞品で「王将」という文字がたくさん入った日本将棋連盟謹製の大きめの湯呑をもらった。
行本さん自慢の湯呑だ。

 こんなエピソードがある。その日の夕食もいつものようにお母さんと2人。
90歳を超えたお母さんは総入れ歯だから食べるのが遅い。

 お母さんは、先に食べ終えた行本さんに言った。
「茶碗はそこに置いたままでいいよ。私が洗うから」

 「たまにはいいか」と思い、行本さんは席を立った。

 ひと仕事終え、台所に行って絶句した。
「サイズがちょうどよかったのかな」とも思った。「王将」の湯呑の中で入れ歯が泳いでいた。

 お母さんの認知症は2015年の夏に発覚した。92歳の時だった。
「財布がない」と電話が度々掛かってくるようになった。
様子を見にいった行本さんの奥さんが帰ってくるなり言った。
「お母さんが、危ない」

 翌日から息子である行本さんが一緒に住むことになった。
症状は「時々目の前の人が息子と分からなくなる」、はたまた「時々自分がボケていることが分かる」という中度認知症。
その狭間でもがいているお母さんを見ているのがつらい行本さんだった。

 介護を始めてから2年経った頃、行本さんはこんなことを書いている。「一緒に過ごしてて『気絶させて黙らせようか』と思うつらさは正直幾たびもあります」

 その気持ちをつい言葉にしてしまったことがある。

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