LSD《リリーサイド・ディメンション》第47話「最後の戦い」

  *

 ――本当の意味で、これが最後だ。

 三体のみかどを倒すことができたら、この百合世界リリーワールドは永遠に平和になる。

 空を舞う三体のみかどを標的にして、オレたちは、ひたすら攻撃をおこなう。

 雷家臣らいかしん三体、光家臣こうかしん三体、天家臣てんかしん三体がオレたちの攻撃を止める。

 家臣かしんの魔物を突破する。

 それができなければ、三体のみかどに攻撃を当てることはできない。

 倒さなければ、いけないのに――。

 ――オレは思う。

 オレの心器しんきの花である百合には、まだ可能性があると信じている。

 オレの百合には、まだ隠された能力があるはずだ。

 オレは過去を振り返る。

 あの教会で、あの花を見た。

 鉄砲百合てっぽうゆりの花を。

 オレの誕生日は七月十三日だ。

 誕生花は鉄砲百合てっぽうゆりだった。

 鉄砲百合てっぽうゆりは英語圏ではイースターリリーと呼ばれ、日本が原産であるにもかかわらず、英語圏の教会で人気となり、その鉄砲百合てっぽうゆりまつりの主役の花になった――とある百合の代わりに。

 オレはリリアの代わりなんだ。

 とある百合の代わりに主役となった鉄砲百合てっぽうゆりのように、オレはリリアの代わりでしかない。

 オレは鉄砲百合てっぽうゆりなんだ。

 だから、その鉄砲百合てっぽうゆり心器しんきを作成する――。

「――け! 百合ゆりはなよ! 空想の箱エーテルボックス開錠かいじょう! い! 心器しんき――百合の銃剣リリーベイオネット!!」

 鉄砲百合てっぽうゆり由来の百合ゆり銃剣じゅうけんが作成される。

 これは銃と剣の能力が両方使える心器しんきであり、百本作成することが可能だ。

 口上したことにより、すでに百本は作成されている。

 一本はオレの手に握られている。

 技を唱える。

「くらえっ! 百合弾ひゃくごうだんっ!!」

 百合ゆり銃剣じゅうけんの刀身が割れ、銃口が現れる。

 その銃口から、真っ白な光の弾が出る。

 百ヒット分の白い光の弾だ。

 その弾の光は九体の家臣かしんにダメージを与える。

 みかどを守る家臣かしんを倒すことができれば、みかどにもダメージを与えることができる。

百合弾ひゃくごうだんっ! 百合弾ひゃくごうだんっ!!」

 百本ある百合ゆり銃剣じゅうけん百合弾ひゃくごうだんを発動させる。

 計一万ヒットの弾が家臣かしんたちを襲う。

 さらに追撃をおこなうため、オレは百合ゆり銃剣じゅうけん百本の顕現を解除する。

「――け! 白百合しらゆりはなよ! 空想の箱エーテルボックス開錠かいじょう! い! 心器しんき――白百合の銃剣ホワイトリリーベイオネット!!」

 白き銃剣である白百合しらゆり銃剣じゅうけんが顕現される。

 その銃剣の刀身が割れ、銃口が現れる。

 技が発動する。

百合弾斬ひゃくごうだんざんっ!!」

 百合弾ひゃくごうだんが放たれる白き光を刃にして固定する。

 そして、そのまま斬りつける。

 百合弾ひゃくごうだんの光は白き刃となり、空の魔物たち、家臣かしん九体を通り抜け、みかど三体にも斬撃を与える。

 雷家臣らいかしん三体、光家臣こうかしん三体、天家臣てんかしん三体は百合弾斬ひゃくごうだんざんにより消滅し、残りは雷帝らいてい光帝こうてい天帝てんていのみとなった。

 あとは、オレ自身の問題だ。

 オレがオレの中にある空玉の指輪エーテル・ダイヤモンド・リングを覚醒させなければいけない。

 空のエルフであるエルシー・エルヴンシーズはオレの中に存在する。

 だから、あとはオレが覚悟を決めなきゃいけないんだ。

 そのためには、すべてを結集させる――。

「アリエル、フラミア、ミスティ、ランディアっ! オレに指輪を貸してくれっ! 五光ごこう指輪ゆびわをっ!」

『了解!!』

 風玉の指輪エア・エメラルド・リング火玉の指輪ファイア・ルビー・リング水玉の指輪ウォーター・サファイア・リング地玉の指輪アース・トパーズ・リングがオレの左手の指に収まる。

 左手の中指には空玉の指輪エーテル・ダイヤモンド・リングが収まる予定だ。

 五光ごこう指輪ゆびわの内の四つがオレの左手にある。

 だから、あとは、ひたすら念じる。

 オレは、オレを信じる――。

「――来い! 空玉の指輪エーテル・ダイヤモンド・リングっ!!」

 白く輝くダイヤモンドの指輪がオレの中指に収まる。

 これで五光ごこう指輪ゆびわそろった――。

「――チルダ、アリーシャ、一緒に決めようっ! 心器しんきを構えるんだっ! オレたちの銃剣で、すべてを終わらせるっ!!」

『了解!!』

 チルダには透百合すかしゆり銃剣じゅうけんを、アリーシャには女王百合じょおうゆり銃剣じゅうけんを装備させる。

 雷帝らいていをチルダ、光帝こうていをアリーシャ、天帝てんていをオレが標的にする。

 空玉の指輪エーテル・ダイヤモンド・リングを含む五光ごこう指輪ゆびわが光り輝く。

 その瞬間、十秒間だけ真・魂の結合トゥルース・ソウルリンケージを発動させる。

 決めてやる――。

『――空天くうてん百合弾斬ひゃくごうだんざんっ!!』

 白く輝く光の刃が雷帝らいてい光帝こうてい天帝てんていを切り裂く。

 これで最後の戦いは終わった。

 天空はカラッと晴れ、瑞々しい青空が見える。

 五光ごこう指輪ゆびわ百合世界リリーワールドの平和を願い、呼応するように輝いていた。

 百合暦ゆりれき二〇XXにせんダブルエックス年七月十三日、オレの誕生日に百合世界リリーワールド薔薇世界ローズワールドの呪いから解放され平和な世界となった。

 これで、この戦いの物語は百合世界リリーワールドの歴史に記録されることになるだろう。

 薔薇世界ローズワールドの魔物の消滅を確認し、これでオレたちの物語は終わり、始まる――。

  *

 ――はずだった。

 百合世界リリーワールドと対になる世界では、ある出来事が発生しようとしていた。

「あいつは、あの世界へ行ったのか?」

「ええ、あいつは、あの戦いが終わったあとの世界へ行きます。そして、僕たちの呪いの解放をしてくれるでしょう」

「あいつは、あの女に恋しているからな。そのためなら、なんでもやるだろう。きっと俺たちの役に立ってくれるはずだ」

「僕たちも準備をしなくてはいけませんね。まだ物語は終わっていない」

「そうだな。すべての世界の物語を永遠に終わりのないものにするためには、あいつの力が必要になる」

「僕たちは待つことしかできない。でも、あいつはやる。この世界を救うために」

「今は、ただ、あいつの帰りを待とう。じっくりとな」

「僕たちには、時間がない。けど、あいつなら、やってくれるはずだから――」

 赤髪と青髪は、緑髪の帰りを待つ。

 あの世界へ行った彼の帰りを――。

  *

 ――マリナ、愛しているよ。

 だから、おれは来た。

 キミに恋するおれが来た。

 だから、もう少しだけ待っていてくれ。

 おれはキミのもとへ向かう。

 絶対に、もう離さないからな――。

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