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エルフと人間

エルフは人間が使えない「魔法」を操る事ができます。炎や水、そして氷や雷の魔法をとても便利に使いこなします。その術式は高度すぎて人間には原理の理解すら出来ません。

エルフは、人間にはよく分からない食事を取ります。エルフ用の食べ物は味付けが違いすぎて人間には有害な場合すらあります。ときにエルフは中毒になりかねない程美味しい食べ物を人間に与える事があります。

エルフは人間と比べ起きている時間も眠る時間もとても長く、人間が3回や4回寝て目を覚ましてもまだ眠り続けている事が珍しくありません。あまりに長く眠るので人間は「エルフは死んでしまったのではないか?」と起こして確認したくなります。

エルフの平熱は人間より2℃ほど低いと言われています。その肌は冷え性の人間のようであり、人間はしばしば「エルフは寒くないのかな。共にいれば暖かく過ごせるよ」と体を寄り添って温めてあげたくなります。

エルフの寿命は人間の約4倍から5倍ととても長く、友である人間に先立たれます。エルフは人間の友を失う事をとても悲しみ、塞ぎ込みます。しかし友であるエルフの長寿をうらめしく思う人間は多くありません。人間は友であるエルフに残された痛みを味わってほしくないのです。

旅立つ人間はこう思います。
「あなたが覚えている限り、私はあなたの中で共に生き続ける。だから私よりも未来に生きる人間とも、また仲良くしてあげてね。」
 
 

(民明書房・刊「エルフの心情を理解したいなら猫を飼いなさい」より。)

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