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Stones alive complex (Boulder opal)

スモーク・オン・ザ・ウォー、だぁ・・・

喫煙能力者でもある「呪文字を造型し商いする男」は、特別に設置されたオシャレな室に危険分子として監禁されている。
あなたの喫煙能力は、この隔離された牢の中でのみ発揮してよいと、お盆にお冷を乗せてテーブルへ運んできてくれた「見えざるところで願いを待つ女」から言い渡されたのだ。

この特別室の特別な点は、他のエリアよりも強力な空気清浄機が巨人スルトが振り回す剣の勢いでぶんぶん稼働し、ラグナロクの危険分子を排出しているところだ。
ここほど大気の清浄さが徹底して保たれている決戦地は、どこにもないであろう。

大気中にふらうら漂うおぞましき黙示録のバケモノどもは、ほとんどが吸い込まれて、ヴァルハラへと消えてゆくはずだ。
昨今の事情を考えると、ここが最も安全な場所ではあるまいか。

それにつけても。
禁煙能力者たちからの静かな迫害は、日に日に熾烈さを極めてゆく。
近々この特別で安全で快適な王国も廃止されるという旨を「見えざるところで願いを待つ女」から、ほのかに念を押された。

その案件に対する個人的な予測だが。
今が①として、これからの対戦フェーズは5段階ある。

フェーズ①:見えざる敵
フェーズ②:見え見えな敵
フェーズ③:ぜんぜん見えてなかったのが、ようやく見えてきた敵
フェーズ④:ずっと見えてたのに、まるで見てなかった敵
フェーズ⑤:背後にずっと立ち、こちらを見ていた敵

そして。
喫煙能力者が、指数関数的に減らされてゆくように。
フェーズがひとつ進むにつれ、
参与者の数は半分になる。

つまり。
80億。
40億。
20億。
10億。
5億。

状況がどうなろうと、「呪文字を造型し商いする喫煙能力者の男」の見えざる特別室を探すスタンスが、変わることは無い。

特別室のガラス扉が音もなく開いて、
「見えざるところで願いを待つ女」が入ってきた。

おっ?
と驚いた目が悟られないように、慌てて伏せる。

「くす。
ここはお店のスタッフも、使用させていただいてますので・・・」

客足が見えざる天使となってしまい、
戦意を保つことこそが最優先課題なのだろう。
見えざるところでじっと待ってる役目も、酷だな。

彼女の百円ライターがカチカチとイカヅチを飛ばす。
しかし、その魂の灯火はいっこうに輝かぬ。

ヴァルキューレの出撃を照らすイカヅチを、どうか放ちたまえ。
そう願い、彼女の気丈な瞳の前へ、我が百円ライターを微笑んで差し出す。

(おわり)

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