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サンタなんていないんだ!

⚠︎この物語はフィクションです。

今年6歳になる息子のりゅうたは
サンタを疑っている。

『サンタなんていないんだ!友だちもみんないってるよ。パパもそう思うでしょ?』

『いや、サンタはいるんだ』

思いがけず、そう答えてしまった。

サンタがいると信じている子供は
いた方がいい。こんな時代だから
こそ。

『じゃあさ、パパ。サンタがいるって
しょうこ出してよ!』

息子は私に似て面倒くさい男になってしまった。

その日の夜、私は息子へ『サンタからの』意地悪な手紙を書いて枕元へ置いた。


りゅうたくんへ

サンタです。お父さんから聞きました。サンタさんはいないって友だちに
言われたんだね。

実はね、サンタさんは誰の元にも行くわけではないんだよ。

サンタさんは『いい子』のところに
しか行かないんだ。

りゅうたくんが、わるい子なら
サンタさんは今年きみの家に行かない
かもしれないね。

サンタより

〜〜〜〜

『パパ、ほんとにサンタはいるんだね。はじめて手紙が届いたよ。でもさ、いい子ってどうすればなれるの?』

息子にはいい薬になるかもしれない。

私は彼を放っておいた。

『さあね。それをパパに聞いたらダメなんじゃないかな?サンタはりゅうたを見てるから』

それから、息子はいいことをやって
回るようになった。

口ぐせのように

『サンタが見てるから!』と。

それを妻はよく思わなかったようだ。

クリスマス直前のある日、妻は息子に
想いを伝えた。

『りゅうた、サンタさんが見てるからいい子になろうとしてもダメなんだよ。分かる?』

『なんで?』

『いいことってのはね、りゅうただけが思っててもダメなのよ。相手が嬉しいと思わなきゃ』

息子は思ってもないことを言われて、
不意を突かれたような顔をしている。

それから息子はいい子になろうとするのをやめた。

ただ『本当に困っている人』にだけ声をかけるようになった。

成長したりゅうたの元にも、サンタは来るのだろうか。

絵本作家・福田光宏

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