マガジンのカバー画像

甘野充のお気に入り

306
僕が気に入ったnoterさんの記事を集めます。
運営しているクリエイター

記事一覧

同級生S君の夢《Dream Diary 32》

xxxx年/05/27(x)  大型の宇宙船の船内で、大勢の女性達が沢山のお菓子と一緒に無重力遊泳をしていた。プカプカ浮かぶスイーツの中を、フワフワと上下左右に進んだり、斜め方向にクルクル飛び回ったりして、彼女達は皆何かが始まるのを待っていた。私も無重力遊泳をしながら、小学校時代の同級生のS君を探していた。色とりどりのスイーツをかき分けて、私は数人の女性にS君を見掛けなかったか尋ねてみた。彼女らは皆エクスタシーに達した表情をしていたが、S君の名前を聞くと急に顔をしかめたり、

夢の配役(短編小説;9,600文字)

悪夢から逃れたい、最初はその願いだけだったけれど……。  暗闇の中を、俺はずっと走り続けていた。ひたすら走り、逃げていた。何から? ── わからない。何かおどろおどろしいものだ。俺を喰い殺そうと追いかけてくる。速力を緩めると、そいつはすぐ追いついてきて、耳の後ろに生臭い息を吐きかけてくる。  もうだめだ。心臓が破れそうだった。立ち止まろうとしたとたん、強く腕をつかまれた。 「うわわわわっ!」  ふりほどこうと、腕を振った ── そこで、目が覚めた。 「どうしたのよ? ……

有料
100

黄色い月 《詩》

「黄色い月」 春が終わりに近づいた夜  空気は漠然とした湿り気を帯び 薄靄に包まれた 黄色い月がふたりを見ていた 僕の隣りで不規則に美しく揺れる 君のスカートの裾  僕は自分を失ってしまうほど 激しく君を求めていた はぐらかす様に微笑む君の唇に 静かに指先で触れた 少しの間の沈黙  其れは彼女の同意を意味している 全てが再び現実の位相に服すまで 彼女の長い睫毛が 僕の心の均衡を突き崩す 唇から漏れ出る無音の熱い吐息 其れは僕を深く濃密に凝視し続け

女たち/過去記事より

色のある風景|𝐎𝐜𝐞𝐚𝐧 𝐄𝐲𝐞𝐬

Ocean Eyes / Billie Eilish ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 君 には どうして 僕 が 見える の ? ほんとう の ほんとう だけど 不意 に 纏って いる こと 悟られて しまう 禁断 の 海 で 僕 を ひととおり 遊ばせた あと いつも 決 ま っ て ・ ・ ・ ・ ・ 僕 が すぐに とらわれ て しまうこと 君 は 知って いて けれど 慰め なんて 俗 な ことはせず 唯 ほどいて

写真詩「ときめき」

本当は気になって仕方ないくせに 声をかけることも 名前を呼ぶことすらできなくて ただ妄想ばかり働かせて 悶々といていたあの頃 振り返ると 切なくて 微笑ましい日々 そんな胸のときめきも はるか遠い昔のこと あの子は今 どうしているだろう 会ってみたい気もすれけれど やっぱり会わないほうがいい あの時のときめきが 消えてしまわぬために

菜の花の|詩

陽の眩しい田んぼの水路を囲んで あどけない菜の花の群れが 風に揺れている 柔らかな黄色が揺れている 春の空に透けて 胸いっぱいの朝日を吸い込んで 悪戯な風が水の上を吹き流すと 岸辺に向かい合う花同士 くちづけするように顔を寄せ合う じっと見るには眩しすぎるよ 水面の煌めきのせいか 幼げで無垢なその色のせいか 渋滞する車の列の真ん中で ハンドルを握るだけの私が 眩しい車窓の景色に取り残される なにかを落としてきたようで ただ毎日に目を背けているようで 心を侘しく縛るの

有料
100

正解はなんだ

朝日が登り始めた時間に 私は起きた そして二度寝 7時頃起きていつものことやりながらのんびりと過ごす朝 ポスターの件もあり、風呂に入りたかったので 昨日夜景だけ楽しんだ天神岬へ移動 天気は晴天、フィルター無しの日光で暑さはどんどん上がる一方だが涼しい風が気持ちよくしてくれるので過ごしやすい 銭湯は10時からで、私がついたのも同じくらいでちょうど開始と同時に入れた 海を見ながら入る壺風呂は最高だったなー 風呂の後は飯か…最近チョコチョコ外食が多い気がする 道の駅や観光

Someday my prince will come

【詩】心旅行

通り過ぎる青空を 通り抜ける感情を 追えば小さな心の隙間 残る寂しさでは埋まらない 風穴が寒いだけ 望む私を なれない私を そっと忘れる心旅行 私は一人だけでいい 眺める青空の眩しさに ただ心打たれる そんな私だけでいい

別垢より 1

指をからめあい 体を寄せ合い 腰に触れ くちづけ 濡れて あふれる 透き通る人肌 心も愛あふれる 逝くのはまだ後で 焦らす波 液溢れ 止まらない 心も体も 抱きしめる 極上の解放へ 正しく 美しく 輝いて 君がいるから 未来を あきらめない 孤独の中でも 愛があるから 見なければ良かった 初夢 を

記憶の宝物@心象風景的

いつ見たのかも、どこで見たのかも忘れてしまった月夜の晩。 北海道だったような気もするけれど 静寂に包まれた夜空に輝く月明かりだけが、まるでスポットライトのように、古びた塔を照らしていました。その塔自体も何の塔だったのか 覚えていませんし、こんな立派なものでなかったと思います。 とてもコントラストの高い金色の月の光があたって 明るいところと暗いところの差が、とても印象的で とても美しかった。 それだけは覚えています。 こうした「妙に覚えている景色」って無いですか? 断片的

七ならべ 夜の駅舎

寂れた町の 夜の駅舎は 孤独な星の 軌道のようで 今、離れたら 二度と会えない そんな気持ちが こみ上げてくる 電車が闇に 消えてしまえば 照らす相手も ない電灯が 視線の先を 泳がせたまま 永い時間を ただ持て余す 寂れた町の 夜はこうして ひとつの星を 守りつづける

【ピリカ文庫】『眠れない四月の夜に』

イントロ 真夜中の電話は、リオンからだった。 「前によく行ったあの映画館で例の映画がかかるみたいよ。見に行かない?」 年に数回、忘れたころにかかってくる電話。リオンと僕を繋いでいるものは、今はもうそれだけになった。 「悪いけど先約があってさ。ごめん」 いつも週末は散々暇を持て余しているくせに、予定が被る偶然を嘆く現実も時にはやってくるのだ。 次に彼女が僕に電話する気になるとしたら、たぶん半年は先になるだろう。 - K(ケイ) - BGM:中央線(矢野顕子、小田