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ちょっとだけ怖い話 「亡くなった人が急に見えるようになった知人」

私は不思議な体験をすることがあります。でも、亡くなった人は見えません。気配を感じ取れるだけです。
そんな私を見える人と誤解し、ときどき自身の心霊体験を話してくれる人がいます。今回は、その中からKさんの話を書いてみたいと思います。

Kさんの告白

Kさんは、私が在籍していた会社の取引先の担当者でした。そのうちKさんは独立。数年後、私も退職して起業すると、お互い何かと仕事で協力し合うようになりました。会社にいた頃から気が合い、仕事に関係のないくだらない話で電話することもありました。

そんなある日。
夜中の1時近いというのに、携帯電話に着信が。見ると、Kさんです。出てみると、何とも妙なことを言います。
「いねさんのせいで、俺まで変なの見ちゃいましたよ〜」
何が私のせいなのかわからず、
「え?何のことですか?」
聞き返すとKさんは
「いねさん、霊感あるでしょ?多分、仲良くしてるから俺も影響受けたんじゃないかな〜?さっき、変なの見ちゃって」

どうも、Kさんは私が見える人だと思っている様子。
そして、何かを見たようなのです。
「ちょっと待ってくださいよ。私は気配を感じるだけで、見えませんよ」
「えっ!!?じゃあ、俺だけ?」
Kさんは驚き、ついさっき体験したという話をしてくれました。

その日、仕事の終わりが遅くなったKさん。
機材だけでも戻して帰ろうと、事務所へ向かったそうです。着いたのは12時をとっくに回った時刻。当然ながらビルは人気がなく、閑散としています。
外灯を頼りにビルの入り口に車を停め、機材を出していると、前方から老夫婦が来るのが見えたそうです。

(こんな時間に、散歩かな?もう寒いだろうに)

そう思いながら作業を進めていると、老夫婦はいつの間にかすぐ横まで来ていました。意外にも足が速いことに驚いたものの、
「こんばんは」
と声をかけられたので挨拶を返しながら見ると、二人の顔が異常に暗い・・・。
気味が悪いなと思っていると、いきなりKさんの足元に鍵が落ちてきたそうです。老夫婦の落とし物だと思ったKさんは、すぐに拾って声をかけようとしました。ところが、老夫婦はもういなくなっていました。

「え?鍵はどうしたんですか?」
そう聞いてみると、Kさんはやや疲れた感じの声で
「それが、ないんですよ。確かに拾った気がしたのに」
Kさんは怖くなり、遅い時間でも起きている私に電話してきたのでした。当時、私はまだ独身で一人暮らし。そういう環境も話しやすかったのだと思います。

郵便局にいた女性

その後もKさんの不思議な体験は続き、あるときはこんな話も聞かされました。
それは、仕事の合間に立ち寄った郵便局でした。
意外に混んでいて、しばらく待つことに。すると、隣に居合わせた年配の女性から声をかけられたKさん。
「混んでますねえ」
といった内容から始まり、あとはたわいもない世間話をしていたそうです。

しばらくした頃、Kさんは別の女性に声をかけられました。
「あなた、霊に遊ばれてるんじゃありませんか?」
この言葉の意味がわからないKさんは、
「何が、ですか?」
と聞き返したそうです。女性は
「あなた、霊と話してましたよ」
と言うので慌てて隣を見ると、さっきまで会話していた女性の姿は消えています。見回しても、どこにもいませんでした。Kさんによると、生きている人とまったく区別がつかなかったそうです。

自分でも知らなかったKさんの体質

郵便局で霊の存在を教えてくれた女性。彼女は、さらに
「あなた、霊媒体質なんですよ」
「見えるのは悪いことではないけど、中にはよくない霊もいます。気をつけたほうがいいですよ」
そう教えてくれたそうです。

この話には私も驚きましたが、急に見えるようになったKさん自身は意外にもあまり困惑していない様子。
ただ、その後も気になることはありました。深夜に訪れた山奥の工業団地から電話をかけてきて
「こんな時間でも一人で歩いてる若い女の子がいるんですよ」
などと不可解なことを言ってきたことも。
「いやいや、Kさん、それ違うんじゃないですか?」
と、驚いて突っ込みを入れたこともあります。

私は少しずつ仕事の方向性が変わったためにKさんとは疎遠になってしまい、その後のことはわかりません。
去年だったか、Kさんが私の携帯に間違い電話をしてきて何年かぶりに話す機会がありましたが、元気そうでした。ひとまず、ホッとしています。


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