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まぼろしの弟犬 「夢で見ていた本当の飼い主」

私は10年以上前から夢日記をつけています。後に起こることや人の心を、夢の中で見せられていることに気づいたためです。そのときは気づかなくても、後で日記を読み返して納得したり謎解きにつながったりすることはよくあります。
今回は、ある人の思いが引き起こした子犬の騒動を紹介します。この記事は5〜6分ほどで読めます。

ペットショップで予想外に迎えた子犬

その子犬は、当時うちの近所だったペットショップにいました。うちのぷるさんも迎えたショップです。サロンやペットホテルも併設していて、サロンは16年間利用してきました。

近所だったこともあり散歩の途中で頻繁に立ち寄っていたわけですが、あるとき、ちょっと気になる子犬に会いました。犬種はチワワのミックス犬。見た目が可愛いのもありますが、その子は私たち家族をずっと目で追っていたからです。
「可愛い子だね。きっとすぐ家族が決まるね」
などと話していましたが、何ヶ月経っても決まる気配がありません。

ショップにいた当時の写真

遂に生後7ヶ月に達してしまい、ある日、生体価格が驚くほど下がっていたのです。
「このまま売れないと、最終的にどうなっちゃうの?」
夫と二人で流石に心配になりました。その子は、相変わらず私たちをじっと見つめてきます。

後から思えば、1歳を過ぎても販売はされていますし、どの子も最終的には家族が決まっていました。ところが、私と夫は急かされるように
(この子を救済しないと!)
という妙な正義感に支配され、その子を迎えることにしたのです。

もちろん、うちはぷるが一番ですから、兄弟犬を増やす気はまったくありませんでした。生活にも余裕が戻ってきたばかりで、ぷるを連れて旅行でも行こうと考えていた矢先の急な決断です。なので、二人で事前に大切なことは決めておきました。

  • ぷるを優先すること

  • ぷると合わないと感じたら責任を持って里親を探すこと

店内でぷると会わせてみたところ、嫌がる様子はありません。なので、ひとまず迎えることにしたのです。

たった一匹の子犬で家族がバラバラに・・・

子犬は男の子で、スパーキーと名付けました。名付け親は、近所に住む仲良しのTさんです。当時、Tさんとは頻繁に行き来していて、子犬のことを話すと真っ先に喜んでくれました。
そして、彼女のお気に入りだという映画『フランケンウィニー』のキャラクターの名前を提案されたのです。夫に話すと、彼が好きな海外バンドのメンバーの名前でもあり、すぐ決定しました。

ところで、7ヶ月にもなれば、すでに自我が芽生えています。初めての外の世界は恐ろしさでいっぱいだったのでしょう。散歩させようにもブルブル震え、地面に這いつくばってしまいます。ぷるに誘導してもらいながら根気よく歩行練習し、外に慣れさせるのに苦労しました。
「オスワリ」「マテ」「ヨシ」など最低限のコマンドやトイレのしつけも成功。

迎えてすぐ家族でお出かけもし、どうにか慣れていくだろうかという期待も束の間、我が家はどんどんおかしくなっていきました。

まず困ったのは、スパーキーの行動です。スパーキーとぷるを遊ばせていると、スパーキーがぷるを追い払うようになったのです。後ろ足で立ち、前足を使って器用にポンポンとぷるを叩きながら部屋の隅に追い払うスパーキー。
ぷるは当時5歳でしたが、2ヶ月から一人っ子で育っているので抵抗する術を知りません。

散歩では、ぷるの大好きな人たちのところに我先に走り寄って行きます。その様子を、離れたところで寂しそうに見ているぷる。何というか、ぷるの居場所を奪い始めたという感じです。ぷるは元気がなくなり、スパーキーの顔はどんどん険しく荒んだ表情になっていきました。

ぷるを追い払うようになった頃のスパーキー


抱っこしても常に顔が怖いまま


睨むような顔か寂しそうな顔しかしない

そして、二匹を挟んで私と夫の仲も険悪な状態に。ぷると私は二階、夫とスパーキーは一階というバラバラに過ごす時間が増えていきました。散歩も次第に別々になっていて、家庭内の空気は最悪でした。

出会った最高の居場所

(これは、予想よりはるかにまずいことになった・・)
スパーキーを優先しはじめた夫をよそに、私は独断で里親を探し始めることに。彼を迎えて数週間のことです。
サイトに登録すると、すぐに10組を超える応募者から問い合わせがきました。一軒ずつ丁寧にメールでやり取りし、そのうち一軒のお宅が候補に浮上。
車で30分ほどという近距離でもあり、すぐ会いに行きました。実際にスパーキーと合うかどうか確認するためです。

結果は正解でした。奥様がお店をやっていて、現在はそこの看板犬として皆んなに可愛がられています。前の家にいるときは何度か遊びに行っていますが、いつ行っても大喜びで迎えてくれます。何より、顔がすっかり可愛く戻っていたのが彼の幸せを物語っていました。

新しい家族との面会を終え、近くの海岸をみんなで散歩


新しい家族のもとで笑顔のスパーキー


お店に行くと大はしゃぎ。荒んでいた顔が嘘のようです。

スパーキーの家族は、以前はいくつかの問題を抱えていてバラバラだったそうです。子どもの希望で子犬を探していて辿り着いたのがスパーキー。彼を迎えたところ、家の中が賑やかになり、家族の絆が深まったそうです。
うちも、憑き物が落ちたかのように平和に戻りました。


夢で見ていた「本当に飼いたかった人」

落ち着きを取り戻し、
(一体、あの頃の刺すような家の中の空気は何だったんだろう?)
(どうして、急にあの子を迎えなきゃと慌てたんだろう?)
そう思いながら、騒動が起こる前の夢日記を読み直していた私は、驚くような発見をしました。

それはTさんが登場した夢で、私の家に訪ねてくるというもの。
「私も犬を飼うことになったの。いいでしょう」
とリードを引いてきたのは、トラ柄の小さな犬でした。その内容を読んだ私は夢の映像を鮮明に思い出し、気づいたのです。

(スパーキーだ!)

写真でわかるように、スパーキーはトラ模様のような柄が入っています。ブリンドルという柄で、チワワや秋田犬、ブルドックなどいくつかの犬種に見られる柄です。
私はここで理解できました。Tさんはショップでずっと見ていて飼いたかったのだと。恐らく、名前も勝手に決めていたのでしょう。我が家に迎えたものの、彼女の中では自分の犬だったのかもしれません。

実は、うちで飼い続けるのを断念したとき、Tさんにも声はかけています。Tさんは毎日のようにスパーキーに会いにきていましたから。ところが、飼えないと言うので里親サイトに登録したわけです。理由はご主人の強い反対でした。

きっと、スパーキーに長らく執着していたんでしょうね。
スパーキーの新しい家も聞かれたので教えてしまい、後で心配になりましたが、幸い悪い影響はまったくなく安心しています。




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