【現地観戦】スタジアムに行く意義 (PSV vs フェイエノールト)
PSV 2-2 Feyenoord
4’ Tillman (1-0), 22’ Minteh (1-1), 61’Gimenez (1-2), 71’ Til (2-2)
士気高く試合に入ることができたか、最初のプレーからイケイケのPSV。
すると、ティルマンが個人技でハンツコを躱して抜け出し、シュート。1-0。
しかし、PSVのディフェンスラインも大ポカをしでかす雰囲気満載。
嫌な予感の通り、ボスカリが落下点を見誤ってヒメネスに独走されるも、ベニテスがファインセーブで尻拭い。
直後、案の定とでも言うべきか、またもボスカリがミンテの寄せに自陣でボールを失いキーパーとの1vs1。キックフェイントでベニテスは膝をつかされてなす術なし。彼の横をミンテが易々と通り越し、ゴールにパス。同点。
以後のPSVは足元で受けたがり、玉離れの悪いバカヨコとティルマンでボールが滞ったり、ロサーノもボールを受けても中に向かうだけで切り込めず、ビルドアップを始めからやり直すばかり。
また、ボールの出し手たちの判断も悪く、SBたちの裏抜けに合わせてパスが出ず、仕方がないのでエリア内にフェイエの人数が揃った状態で投げやりなクロスを繰り返すばかり。
こういった湿気ったプレーにスタンドからの応援も萎み、モヤモヤとした空気に包まれ前半終了。
後半も攻撃の停滞は続き、相変わらずCBの2人も不安定。フェイエのチャンスが来るたびにベニテスがファインセーブで凌ぐ流れ。
やはり守備が試合終了まで持たずに遂に決壊。ヘールトライダに侵入を許し速いグラウンダーのクロスがファーへ。そこにはフリーのヒメネスがおり、無人のゴールへタップイン。1-2。
意気消沈のスタジアムが盛り返すのはティルが投入され、彼がミドルサードで精力的に顔を出しながらゴールまで上がり直す動きを繰り返すことで、バイタルの大渋滞が解消されてから。
70分、ティルがゴール前の混戦で生じたハイボールをヘッドでルークへ、ルークはダイレクトでロブをティルに返すワンツーが成功。ダイレクトで合わせ、ファーへ射抜いて2-2。彼の弓矢のセレブレーションに相応しいシュートでした。
その後も何度かエリアに迫りコーナーを得るも、最後まで噛み合っていない感が拭えず引き分け決着。
勝ち点差を保つことができ、リーグタイトルをまたひとつ手繰り寄せたものの、この試合フィーエマンとサイバリを欠いたことで、ボールの引き出し、回りがとても悪く、最後まで単調だったPSVには妥当な結果でした。
頭でっかちなファンでいた自分
本題です。
今回の観戦で、僕はとても貴重な経験をしました。
この試合では、オランダ在住の日本人一家と並びの席になり、小学生になりたての息子さんが隣に座りました。
自分の年代の日本人と話す機会が少ない彼の環境も手伝ってか、彼は自分に興味を示して今季観に行った試合を教えてくれたり、学校でサッカーをしていることだったりと、ずっとお喋りをしてました。
僕も彼も同じくスタジアムで観ていた試合が複数あったことを知ったり、彼がユニホームを着てくるくらい大好きなルークデヨングが1回目にPSVにいた頃のエピソード(前回のCLベスト16の時のルークがどれだけカッコよかったか)を教えたりなど、お互いのサッカー体験を話しながら、キックオフを待ちました。
スタジアムに通うであろう、次の時代もサッカーを観てくれるファンの卵に楽しんでもらいたくて、僕もピッチの一挙一動と同じくらい、試合中に彼から投げかけられるひとつひとつの問いかけに集中しました。
先制ゴールが決まったら、喜びをみんなで共有するEind-ho-ven!チャントをして、彼には、2点目決まったら一緒にやろう!と声をかける。
そういう意味で、チームの2点目(同点)を決めてくれて本当にありがとう、ティル。
おかげで彼もゴールチューンとともに全力でEind-ho-ven!と叫ぶことができました。
また、試合が硬直すると「今日勝てたらいいなぁ〜」と呟く彼に「いいなぁじゃないよ、このチームは勝つよ!」と声をかけてました。
他にも、彼の規格外の発想、無邪気な関心、無尽蔵の興味。
それを聞く相手と見做してもらえた、先輩ファン冥利に尽きる、何にも代え難い喜びと共に試合を眺めていました。
今回の経験ほど、リバプールやPSVを、サッカーを長く観て、サッカーが大好きでい続けて良かったなぁと思わせてくれたことは他にありません。
試合後「勝てなかったけど、今日は凄く楽しかった!!!」と笑顔で彼に言ってもらえる材料のひとつになったたこと。これこそ最高の栄誉です。
別れ際、次はいつ観に来るの?だとか、彼がお父さんに「その試合うちも行くの??」と聞く姿は可愛らしさ極まってました。
彼の顔の高さまで屈んで、お別れに目を合わせて手を振ると、彼はハイタッチをくれました。本当にありがとう。
戦術論や移籍、試合評など色々な楽しさがサッカーにはありますが、今季は大好きなPSVの試合に通う中で、サッカー観戦をどう楽しむかに関して考えが大きく変わったと思います。
昨季、試合を楽しめているか、特にリバプールを観ている時の自分は果たして楽しいと思っているのか、疑問だらけでかなり悩んでいました。
昨季のリバプールはそもそも勝てなかったので、楽しみは例年よりも少なかった(ここ数年がそもそも試合だけでも楽しすぎる)のですが、自分にそういった気持ちを抱かせたのはチームの低調ではありません。
それはこれまで身を置いていたSNS、海外サッカーの楽しみを広げてくれた環境がむしろ、今となってはマイナスに、つまらないものにするように働いていると感じた為です。
クラブやチーム、選手への過剰な自己同一視からなのか、勝てないチームに対し向けられる言葉や態度に、チームを思っている故のものなら何でも許されるという甚だしい勘違い、自己正当化の数々を感じて辟易し、自分がこれまで過ごしてきたSNSとサッカー観戦の組み合わせに限界を感じていました。
チームがこんなにもがいている時に、心無い言葉を浴びせ欠片も寄り添う気が見られない。そのくせプロフにはKOPだのYNWAだの書けるのは言動不一致が大きすぎて本当笑えてくるなと、チームでは無く同じチームのファンに大きな失望を抱いた試合も一度や二度ではありません。
今はスタジアムに行くことで、チームに声や気持ちが届くかもしれない場所の空気を体感したおかげで、テレビ越しで観る試合にも一層夢中になっています。
スタジアムで試合を観ると、うまくいかないときほど、その一連の流れに最も納得していないのはプレーしている本人たちであるのが伝わってくるのです。
だからこそ、そんな時ほど外からKom op, PSV!!と叫んで、まだ次があるぞと応援を届けずにはいられません。
どんな見苦しい失点をしようと、彼らはミスを犯そうとプレーしている訳がないことが分かるのです。相手だって全力で向かってきていることが伝わってくるのです。
本当に、去年浸かっていたあの後ろ向きな物事は、今ではなんと頭でっかちな悩みだったんだろうと思います。
そんなものからは直ぐに離れてしまえば良かったのです。自分自身の楽しみの追究が全く足りていませんでした。
好きなチームの関係者全ての頑張りが勝利やタイトルと言う形で報われること、それが自分のことのように嬉しいという思い。そして、彼らにおめでとう、ありがとうと言いたいエゴで応援しているという、自分のサッカー観の中心を改めて見つけました。
正解の追求者や斜に構えた理論武装に勤しむのは他に任せて、僕はチームの勝利を願うこと、FunなFanでいることにもっと真剣になろうと思います。
今回の観戦はそんな自分勝手、自分の好きや楽しみがまた誰かへリレーされたことの喜び、年齢、ファン歴を重ねたからこそできる振る舞いや矜持、過去の体験を次へ繋ぐ楽しさを教えてくれました。
PSVの試合を一層楽しんでくれた彼の姿は、ピッチの出来事すらも上回る僕の喜びになりました。
この試合の巡り合わせがもたらした感動が冷める間も無く、来月の試合で小さな友人と再会するのが今から楽しみでたまりません。
団結は力なりというPSVのクラブスローガンの導きに、心からの感謝を。
Eendracht maakt macht!
<了>
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