PSVの2023年 振り返り②(23-24シーズン選手編)

前回の記事に続いて、今回は23-24シーズンのここまでで印象的に残った選手について。

前半戦MVP: イェルディ・スハウテン(MF、オランダ代表)

リーグ16戦全勝を牽引したFW陣から誰かを取り上げるべきと思う傍ら、彼らのセンセーショナルぶりはスタッツを見れば明らかだし、バカヨコなんてもう強豪クラブたちのレーダー上にいることもあり、SNS上にも山ほど動画があるし…

というわけで、PSVの魅力をより多く伝えたいという自身の欲求も満たすようで恐縮ながら、この金髪の賢人の素晴らしさはハイライトには映らないことも多いからこそ、前半戦のMVPとして彼を挙げたい。

昨季までアンカーを務めたサンガレもボールを持てばいい選手だったと思うけれど、スハウテンはボールを持つ前、彼が立つ場所がとんでもなく気が利いていて、今季から彼がアンカーを務めるようになってから、チームは大きく前進したと思う。

相手がセンターラインを超えた時、PSVはまずフィーエマンががむしゃらに食いつくのだけれど、その先で、彼はいつもボールを簡単に、足を少し伸ばすだけで簡単に掠め取る。そして、次のタッチでは前を向いている味方や広大なスペースでボールを待つFWたちにボールを預ける。

ボール保持時も、CBの間に降りるかボールを預かるのか、自分が相手を背負いながらサイドにはたいてリズムをつくるのか、どちらのパターンもまずミスをしない。

さらに、デストやフィーエマン、テゼが相手のプレスに捕まって苦しくなったとき、非常口として次にボールをフリーで受けるのはいつでも彼だ。

こういったプレーはリーグ戦ではもちろん、CLのグループリーグ、特にランスとセビージャと対戦した時に特に際立ち、加入2ヶ月でもう2〜3シーズンはこのチームに居たのではと錯覚してしまう頼もしさを覚えた。

こんなにスムーズにプレーするMFは、今季からアシスタントとして座るスハールス、前回のCL16強入りしたときのファンヒンケル以来で、毎試合、彼を見ては本当にいい選手が加わってくれたと感謝ばかり。

長く焦がれた正真正銘の6番の到来で、得点増と失点の激減に多大な貢献を果たしている。

PSVをタイトルへ導くプレーをひきつづきお願いしたいと共に、彼個人も来たるEURO本戦にたどり着き、スポットライトが当たってほしいと思う。そうなった日には来夏はまた新MF探しかぁ、、、という憂鬱に苛まれるのだけど、いつだって選手のステップアップを見届けるのは、このクラブを見る歓びのひとつでもあるので仕方ないですね。

ブレイク①:イスマイル・サイバリ(MF/FW、モロッコ代表)

23年の1月、アウェイのフォルトゥナ戦。1-2のリードを握り、数的有利で彼は89分に投入されると、アディショナルタイムに軽いプレーでボールを失い、そのロングカウンターが同点弾へとつながった苦い経験をした。

逆サイドで同じくヨングPSVで共にプレーしたバカヨコが着々と地盤を築くのとは対照的に、スキルもあり、身体は彼より出来上がっているはずのサイバリの停滞はもどかしいものがあった。

それから半年足らずで彼がこんなにも成長し、それもトップ下で輝くことになるのだから、若い選手を見るのは楽しい。

左右のWGが務まるドリブルのスキル、この一年でさらに強くなった体幹を武器に、ハーフライン近くからジグザグとドリブルでゴール前まで迫ったり、今季の強力な両WGからのクロスに飛び込むMFとしての役割がここまでぴたりとハマり、結果もついてきている。

何より、彼のクラッチぶりには舌を巻く。CLプレーオフ2ndレグのレンジャース戦、リーグでのアヤックス戦、CL第5節のセビージャ戦、いずれの試合でもチームに勢いを与えるゴールを決め、今季前半の貢献はとても大きい。

開幕前に、まさかアフリカネーションズカップで彼が離脱することを不安に思うとは想像もしていなかった。

時にジョーカー、時にスタメンと、まだまだ絶対的な存在とはなっていないため、まずは今のポジションで不動の存在となれるか注目しながら、後半戦もクラッチな活躍に期待したい。

ブレイク②:マリク・ティルマン(MF、アメリカ代表)

ここ数年、他リーグからの借り物は、シティからやってきたアンヘリーノ、怪我に泣かされながらもデカイプでの2試合で大活躍したトルガン・アザールを除けば軒並み期待外れであったので、彼もまぁ当たれば儲けものくらいに思っていた。

実際、彼のトランジションの遅さはなかなか酷くて、そりゃあバイエルンからは出されてしまうのも仕方なし、これでトップレベルでやっていくのは難しいよね、という選手だった。

一方で、身体のサイズと右足のキック力、顔が上がっているときのプレーの閃きには、ここが評価されて若くしてメガクラブの下部組織に加わったんだなという説得力があった。

喜ばしいことに、彼の長所はエールディヴィジでは通用しているし、特にフィジカルはそうそう負けないので、格下をホームに迎えた時に、昨季のサンガレがよくやっていた、相手選手をなぎ倒してゲインしていくMFとして活躍している。

前述のサイバリの台頭、ティルの奮起も合わさって、攻撃的MFのポジションに多くのオプションを与えてくれている点も◎。

欠点のほうも、エールディヴィジのレベルでは顕著に穴となる機会も少なく、PSVで試合に出続けるうちにそれが改善傾向にある。彼に足りなかったのはトップチームでの出場時間や競争だったのかもしれないし、同胞のペピやデストがいる今季のPSVの居心地の良さもよい方に働いているのかも。

近年の10番は、クラブ史に残る至宝から大問題児へ闇堕ちしたり、良い選手なのに怪我続きで中々見れなかったり、謎のナルシストに持ってかれたりでちょっと辟易してたぶん、10番が似合って継続してプレーしてくれるのもありがたい。

現状の活躍が続けば買取条項の行使は確実で、来季以後もPSVでさらに成長してほしいと思う。

後半戦の奮起に期待: イルビング・ロサーノ(FW、メキシコ代表)

このままだと温め直したスープはまずい、という格言が実現してしまう。
数字はそれなりに残しているし、良い時の彼は間違いなく期待通りの、僕らのチャッキーである。

問題は、秋を過ぎてから、彼ほどの選手なら決めなくてはいけないシーズンを外すこと、何よりも決定的なシーンで我を通し、フリーのチームメイトを使わずにシュートを撃ち、大チャンスを無駄にする場面の多さが目立つ。

この路線で行くなら、ゴール+アシストで30点はスタッツを残してくれないと説得力がない。

結局は、チャッキーなら決められるシーンで外すなという話だけど、前回の在籍時は欧州初挑戦の若い才能であったために、こういったプレーも見守れた。

しかし、現在の彼はただ点をとってればいいだけの存在ではなく、大きなクラブでの経験を経て帰ってきた貴重な存在であり、チームの中心人物のひとりとして、若手の見本であり、彼らの尻拭い、何より結果に対する責任ももう少し負ってもらいたい。

小言

23-24シーズン、ボスの手綱も素晴らしいし、選手補強が凄まじかったのもあるけれど、シーズンの分水嶺で活躍したのはPSVの下部組織でのプレー経験のある選手たち。

今後も伝説として語られるであろうセビージャ戦はその集大成であったし、彼らは前任のファンニステルローイ、それより前のファンボメルが、下部組織で指導したり抜擢した選手たちであることが、ただの一勝ではなくPSVのこの数年の連なりの勝利で心が震えた。

ボスも既にババディを抜擢しトップチームに帯同させるなど抜かりがないながら、台頭するのが攻撃的なポジションの選手ばかりなので、そろそろDFに才能が現れてほしいなどと贅沢をこぼして、シーズン後半、そして来年も楽しみたい。

23年途中で発信の形が変わりながらも、ひきつづき、PSVに関して少しでもお届けできていたら素晴らしいことだと思うので、無理のない範囲で今の形を続けたい。

みなさま、今年もありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。

<了>

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