水俣から阿蘇へ(仮)

飛行機の中で虹を見た。まん丸の虹。ブロッケン現象だと言われて、幸先いいなーと思う。降り立った熊本空港からレンタカーを借りて、まっすぐに水俣へ向かう。

昨年、「MINAMATA」という映画を観た。あまりにも美しい映像、光と影の印象、日本ではないところで撮られたのに、何とも懐かしく感じる景色。
田口ランディさんの「水俣 祈り」の本も読み、なんとも行かなくてはと思っていたところ。
熊本空港から1時間以上かけて到着したところは、天草がすぐ近くにあって、湾のようになっていた。海が当たり前の日常で魚を当たり前に食べる日常だったろう。
水俣資料館にお邪魔すると、子どもたちの集団に会う。小学校5年になると社会科見学で来るそうだ。
芝生が広々として、潮の匂いがして、安心して遊べるような感覚の場所でお弁当を広げる子供たち。
ここは埋め立てられた場所。たくさんの犠牲があったり闘争していた気配がどこにもない。
そっと海を見て、手を合わせた。

「水俣ちゃんぽん」というものがあるらしい。とすぐ近くのお店へ。
貝汁というのが有名だそうで、あさりがたっぷりの「あっさりちゃんぽん」を頼む。
めっちゃ貝の出汁が効いていて美味しい。みつばがまたいいアクセントだった。

そこから、阿蘇へ向かう。
2時間近くのドライブ。
熊本空港方面まで戻って、山に向かってぐんぐんと進んでいくと、ススキの大野原へ。
秋、が、やってきているのだな。
立ち寄った草千里が浜は、見渡す限りに山の上にこんな場所があるのか、と思うほどに大草原だった。あの世みたい、と思う。
湿地から池へ、葉っぱの奥から水が滲み出ているみたいに静かに満ちる水の気配。その水に空が写ってこの世のものとは思えないシンとした美しさ。カルデラに火が当たると、白っぽい砂地が現れる。もくもくとした煙と砂地のコントラスト。
あちこちに馬や牛の糞、夕暮れ時の光と生きている生々しさとがある。

そこから黒川温泉に向かう。山々が何ともエネルギッシュで生きているという感覚。奥にあるマグマを感じるような景色。
ホテルは大パノラマ、阿蘇の大地を存分に感じる空間。
あんまりにも気持ち良くてぐんと背伸びしたくなる。心が解けていく。

夕ご飯を食べて、24時間ラジオに出て、そこから温泉に入る。
夜の宴をして、星を見にワインを片手にプールの側で語り、飲む。
星を見て、しんとした夜の一部となる。

大きな存在に抱かれて眠るようなそんな時間だった。

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