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サイバーネイル|ショートショート

「あ!キンジョウさん。それって昔のネイルってやつですよね!」

狭い宇宙船の中、突然後ろから声をかけられ、ビクリとしたアカネにたたみかけるよう、さらに言葉を重ねる。

「資料で見てネイルってどんなのかなーって思ってて。」

探索船ブラシュ号初の試みで、スペースアーティストとして搭乗したキンジョウアカネは、この宇宙船内にエンターテイメントを通して変化をおこすことが仕事だ。

搭乗前から様々なネタを仕込んでいたが、今回の「ネイル」は、新しい試みで退屈な船の旅を盛り上げるのに一役買うと考えていた。

アカネは昔の資料を参考にしながら見よう見まねで、宇宙向けのサイバーネイルとして使えるようブラッシュアップした。

現代ではネイルをするものは少なく、資料は紙でしか残っていなかったため、詳しい方法を調べるのは大変だった。

珍しそうに見つめるイソナにも実験台になってもらおうと手術室へ誘った。

まずは、指先を切開して、指の奥に埋もれている爪の骨を切り出す。
直接物に触れることがなくなった現代人は昔の人のように爪が必要なくなった。爪はどんどん退化し、私たちの指は、指の先までぷにぷにと柔らかい皮膚で覆われている。

しかし、爪骨と言われる退化した爪は、指先に埋まっているため、切開して取り出し、指先に移植できる。浅い切開の傷は治癒レーザーを当てると30分ほどで消える。

こうしてイソナの指にも爪が誕生した。

緑色のラメと、ピンクのオーロラの紙片、銀の丸いパーツをバランスよく爪の上に並べて、色鮮やかにネイルを施す。

スペースアーティストとして、サイバーネイルは流行らせたい。

イソナと自分の指を可愛らしく並べた写真を撮り、ユニバースSNSにあげると、アカネは満足そうに爪を眺めた。

かわいいは元気をくれる。手元にかわいいがくっついているサイバーネイルは、最強だと思った。


【あとがき】

今日ネイルを変えてきたら、めちゃくちゃサイバーネイルって感じのデザインになったので、お話にしてみました!

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