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小津安二郎監督の故郷で映画上映

 2019年に完成した自主映画「小名木川物語」を久しぶりに上映していただけることになった。それもあの小津安二郎監督作品上映のプレイベントとして。

 この映画の制作の経緯はとても長くなるので、公式サイトを見ていただければと思うが、2012年にひょんなことから「映画でもつくれるのでは!」ということで、私のかつての地元の町近くにあった「ブックカフェ・そら庵」に集まる人々とユルユルとはじまった。
 舞台は「小名木川」という川のある町。江戸時代、家康が命じて造らせた水運のためのまっすぐな河川。江戸と千葉などを結ぶ要所。私は少年時代、この川のそばで育った。東京大空襲の忌まわしい記憶のある川。
 映画づくりは、かつて8ミリ映画やビデオドキュメント作品を作っていた程度で、たまたま20年ほど前にNHKの土曜連続ドラマの出演と写真指導をやっただけだから、写真家といえど素人同然だった。しかも「そら庵」に集まった人々は何人かカメラマンやスタイリストや美術家などもいたが、全体としては「劇映画」は未経験の領域。さらに特別に俳優さんがいろいろいるわけでもなく、町のみなさんに手伝っていただこうという、無茶な予定しか立てていなかった。脚本らしい脚本も最初からなかった。
 しかし、それがかえってよかったのか、町の記憶と現在から自然に立ち上がってくる映画の輪郭がだんだん見えてきた。下町「深川」ならではの風景、歳時記、人々。あの東日本大震災の後だったこともある。町や人がどのように「再生」されていくかという深層のイメージができあがっていくことになる。
 喪失感を持つ彷徨う主人公の男と「水の精」のような女性との出会い、町の人々、空襲の記憶、、、、、この近辺に暮らした俳人「石田波郷」の句が重なる。

  撮影は結局4年以上もかかった。休日に集まれるスタッフだけで撮っていたから、本当にワンシーンづつ撮っていくという感じで、先も見えないものだった。カメラもデジタル一眼レフ1台。確かめながら、立ち止まり、また撮り、、、、そのことで時間の流れが余計に見え、物語に奥行きが出てきたと思う。 2017年にある程度の完成を見て、「江東区深川江戸資料館」ホールなど地元で上映開始。以後いくつかの場所で上映会を行ってきた。 今回は久しぶりの上映となる。

予告編

 上映は、1月12日(金)10時より無料上映。江東区古石場文化センターにて。

 「第17回江東シネマフェスティバル 小津安二郎監督生誕120周年 深川で生まれた世界の巨匠」1月12日から14日。という催しのプレイベント。

 かつてこの近辺に小津家の土地があり、今も「小津橋」がある。小津監督は深川生まれなのである。一度三重に移り、松竹に勤める頃には再び深川に住んだ。数々の名作もここから生まれた。そうした縁のある地。文化センターには小津監督の資料などを展示した、しっかりした常設スペースもある。なお、会場ではさまざまな関連企画も準備されている。地下鉄東西線「門前仲町」より徒歩約13分。フェスティバル映画上映は料金が必要。

古くから様々な読者に支持されてきた「アサヒカメラ」も2020年休刊となり、カメラ(機材)はともかくとして、写真にまつわる話を書ける媒体が少なくなっています。写真は面白いですし、いいものです。撮る側として、あるいは見る側にもまわり、写真を考えていきたいと思っています。