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第15回 カウンセラーのTシャツと言葉のサラダ アイドルとロールシャッハテスト

カウンセラーとスタッフの日常会話の記録です。

Mi代表:深層心理学が専門のカウンセラー。Mitoce代表。
すたっふ:カウンセラー見習いのスタッフ。少々オタクらしい。



すた:乃木坂46※をテレビで観たのですが、なかなか面白いですね。私は韓流アイドルをよく見るのですが、売り方がかなり違うなと思いました。

Mi代:どう違うのですか?

すた:韓流のアイドルをみていると、個々の能力がかなり高くて、それで見せていくという方法だなと思って。でも、乃木坂をみていると個々の能力を突出させるのではなくて、スタジオの演出とか、メイクや衣装に凝るとか、映像をきれいに撮るとか、そういった方法で惹きつけていると思いました。
個々のメンバーももちろん大事ですが、それ以上にパッケージでどのように見せるかという売り方だなと。

Mi代:個人よりもグループ中心だと。

すた:そうですね。メンバーもどこか身近にいそうなタイプの人が多くて。だからAKB※の元メンバーがYoutubeでメイク動画を出して、バズっているのも納得しました。視聴者が自分の延長上として親近感を持ってみることが出来るので良いのかなと。自分もグループに入れるかも、という夢も与えてくれそうです。
逆に芸能人のメイク動画でも、もともとの見た目が突出して優れている人はバズらないと思います。

Mi代:たとえばミランダ・カー※とか?

すた:そうです、そうです。私もVogueの動画※でメイク動画を見たことがあります。彼女はもともとが一般の人とはかけ離れているきれいな顔なので参考にならないなと思いました。きれいなのを見て終わるという感じで。でも元AKBの方だと、自分がメイクをするときにも参考になると思って、そこが良いですね。

Mi代:それは面白いですね。いわゆるビジネスとして考えると、どのように売るかという方法論なので。AKBはテレビ業界で活躍したプロデューサーの秋元康さんらしい方法なんでしょうね。
AKBが出てくるまでは、アイドルは個々のキャラクターをどれだけ表に出していくかが大切だったと思います。でもAKB以降のグループアイドルをみていると、個人の歌パートを際立たせることが少なくて、だれが歌っているのかわかりにくい歌い方になっていますよね。そのあたりも作戦なんでしょうね。入れ替えが効くという。

すた:世間に売り出すときにどうするかは大切だと思います。自分の延長上で身近に感じられるというのは人気につながるでしょうね。

Mi代:私はカウンセリングをどうしたら身近に感じてもらえるようになるかを考えているので、このあたりの話は興味深いです。一般の人の関心をどのように集めるかというテーマにつながるので。
私は以前から画家の奈良美智※さんに関心を持っていて、彼の作品を連想しました。奈良さんは現代を代表する画家ですが、かわいらしいアニメ調の子どもを描いた作品で有名です。
奈良さんが以前に話されていたことですが、自分の作品はアニメのようでかわいいといわれて、近づきやすいのだけれども、その裏にはたくさん積み重ねていることがある。かわいらしさの裏にあることまでみてもらえれば、というような内容を話していたことがあります。
奈良さんは美大の予備校の先生をしていたので、正確にデッサンを描くなどの基本的な能力は高いです。そういった基礎力や思想を積み重ねた上に、あのシンプルだけれども、かわいらしい絵の表現があります。そういう積み重ねが大事だなと私は思っています。接近しやすさの裏に、しっかりとした基礎がある。

すた:AKBにはどの程度の基礎的な力があるのか、私は良く知りませんが、奈良さんの絵には基礎力があるのはなんとなくわかります。
それを聞いて思ったのですが、カウンセリングにも基礎力ってありますか。

Mi代:そうですね、私は心理アセスメント力が基礎力のひとつだと思っています。成育歴や心理検査をきっちりと理解できることですね。知能検査やロールシャッハテスト※をしっかりと身に着けるのは大切だと思います。
カウンセラーというとカウンセリング能力ばかり強調されるのですが、それ以上に心理アセスメント力が大事ですね。アセスメントができないと、本来はカウンセリングはできません。カウンセリングは簡単にだれでもできると思っている人が多いようなので、私としては悩みますが。

すた:心理アセスメントって何ですか。

Mi代:相談に来られたことの悩みについて、心理的な側面から原因や背景についてアセスメントすることです。いわゆる精神病であるか、神経症であるか、発達障害であるかなどだけではなくて、その人の人生全体をみて、こころの悩みがどういった状況や背景があって起きたのかを見立てます。
実際には臨床心理学、精神医学などいろいろな知識をもとにした判断が求められるので、かなり難しいです。「カウンセリングできます」とおっしゃる援助職の人は多いのですが、「心理アセスメントできます」という援助職の人はあまり聞きません。これは心理職が特化した能力だと思います。
私も心理アセスメント能力の向上ができればなと日々研鑽を重ねています。いろいろな人物や芸術作品をみても、心理アセスメントをするクセがついていますね。

すた:そうなるとアイドルを見てもアセスメントをすると。

Mi代:たしかにそうですね。

すた:最近、Mi代表がずっと音楽をかけている、にっぽんワチャチャ※もですか?

Mi代:え?(ちょっと動揺しつつ)、そ、そうですね。性的な表現を含むパフォーマンスをしているアイドルグループなので、拒否反応を示す人もいると思うので、誰にでもおススメはできないのですが。私は性的な表現については関心がなくて、メンバーの個性について興味深いと思っています。
にっぽんワチャチャは、元地下アイドルをしていた遠藤Nozomiさんが、元吉本のお笑い芸人だった松村一平さんにプロデュースの依頼をして始まったグループです。そのためにいわゆる関西のお笑い芸人のノリが入っているアイドルグループです。
以前に私が働いていた職場の近くににっぽんワチャチャの事務所があるのを知って、それ以来、親近感を抱いています。メンバーのノリが関西人なので、なんとなく身近に感じるのもあります。
にっぽんワチャチャはパッケージとは程遠くて、個々のメンバーの個性をどれだけ出すかで勝負しています。一平さんも、いわゆるアイドルらしく可愛さを演じるのではなくて、とにかく飾らずに自分らしさを表現しろという方針だそうです。ほかのアイドルについてあまり詳しくないのですが、個性的という点では際立っていると思います。
たとえば、自称「女装が好きな36歳おじさん」の前田Matonさんがメンバーとして舞台に立つのもおもしろいですね。彼はアイドルになりたいと思っていたけれども、ほかのオーディションではすべて落とされたそうです。けれどにっぽんワチャチャのオーディションだけ書類選考が通って、加入できたという経歴の方です。
心理的に集団力動を分析すると、前田Matonさんのような方がどれほど活躍できるかが、グループの発展に左右すると考えています。グループのなかで一番不器用な人、異質な存在の人を活かすことができるかどうかが、いわゆるグループの器を決めることになります。Matonさんのような人の魅力を引き出し、活かそうとするグループはとても魅力的です。
ほかのにっぽんワチャチャのメンバーもそうですが、夢を諦めかけた人がもう一度、夢に向かって再挑戦するという意気込みがあるグループです。見ていると応援したくなりますね。
どうしても日本では個性を主張するよりも、「みんな一緒に」という同調圧力が強い傾向があります。にっぽんワチャチャのようにそれぞれのメンバーが個性を出しながら、大きな目標を実現できるかについて興味もあります。
そういった個性的な人たちが活躍できる社会になればなとも思うので。

すた:かなり、にっぽんワチャチャチャについて語りますね。それをハマっているというんですよ…。

Mi代:いえいえ、そんなアイドルオタクみたいに言わないでください。私は地元の応援団みたいなものです。

すた:それを推しっていうんです!



注釈
乃木坂46 (のぎざかフォーティーシックス、Nogizaka46)
日本の女性アイドルグループ。秋元康のプロデュースにより、2011年8月21日に結成した。乃木坂46はAKB48グループに所属せず、AKB48の公式ライバルとして存在する。AKB48グループが専用劇場を持つのに対し、乃木坂46は専用劇場を持たない。AKB48グループが選抜総選挙を実施するのに対し、乃木坂46は舞台『16人のプリンシパル』における配役決定で投票を実施するという差別化を図っている。
乃木坂46 - Wikipedia


AKB48(エーケービーフォーティーエイト)
日本の女性アイドルグループ。秋元康のプロデュースにより、2005年に東京・秋葉原を拠点として活動を開始した。「会いに行けるアイドル」をコンセプトに専用劇場にて、ほぼ毎日公演を行うことを特徴としている。マスメディアを通した遠い存在ではなく、ファンがメンバーを身近な存在として感情移入し応援して、その成長過程を共有するスタイルがファンの支持を得ている。
AKB48 - Wikipedia


ミランダ・カー(Miranda Kerr)
オーストラリア出身の女性ファッションモデル、実業家。下着ブランド「ビクトリアズ・シークレット」の特別広告塔にあたる“エンジェル”の一員としての活動が最も著名。オーストラリア人初の“エンジェル”となった2008年から同ブランドのショーの仕事を継続的にこなしてきたほか、テレビや雑誌など様々な分野で活躍してきた。
ミランダ・カー - Wikipedia


VOGUE(ヴォーグ)
コンデナスト・パブリケーションズが発行するファッション・ライフスタイル雑誌である。主に女性向けとされ、ファッション、ライフスタイル、デザインなどのテーマに関する記事を掲載している。
ヴォーグ (雑誌) - Wikipedia


奈良 美智(なら よしとも)
日本の画家・彫刻家。世界的に評価されている美術作家で、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やロサンゼルス現代美術館に作品が所蔵されるなど日本の現代美術の第二世代を代表するひとり。 特徴的なこちらを見返す人物をモチーフにしたドローイングやアクリル絵具による絵画で知られる。
奈良美智 - Wikipedia


ロールシャッハ・テスト(Rorschach test, Rorschach inkblot test)
投影法に分類される性格検査の代表的な方法のひとつである。被験者にインクのしみを見せて何を想像するかを述べてもらい、その言語表現を分析することによって被験者の思考過程やその障害を推定するものである。スイスの精神科医ヘルマン・ロールシャッハによって1921年に考案された。
ロールシャッハ・テスト - Wikipedia


にっぽんワチャチャ
2020年3月28日ににっぽんのウイルスという名称でデビューしたアイドルグループ。デビュー時のメンバーは、遠藤Nozomi、渡辺Lili、鈴木Mob.、田中Ruruの4人。田中Ruruの脱退後、2期メンバーとして中村Ame、高橋Yagura、前田Matonが加入。「日本で一番、体が張れるNG無しのアイドルグループ」を謳い、ライブ活動のほかにYoutubeなどSNSでも積極的に活動している。
にっぽんワチャチャ - Wikipedia

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