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日記やエッセイを綴る場所

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日常の何でもないできごと、心を震わした瞬間を残したい。そんな想いでつらつらと文章を綴るマガジンです。
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#エッセイ

親友 -旅のはじまり編-

親友 -旅のはじまり編-

からだを小刻みに揺らす新幹線の振動が、うつらうつらと瞼を重くする。となりでもうすでに目をつぶっているのは、いっしょに旅をする相棒だ。

「東京駅に7時集合で!」の約束通り、無事に合流した駅のホーム。見上げるとカラッと晴れた青空越しの電光掲示板が、博多までの停車駅をなんどもなんども教えてくれている。新幹線ってずいぶん遠くまでいけるんだなぁ。

するとなんの前触れもなく、目の前をスピードを緩めた新幹線

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親友 -うどんのねぎ編-

親友 -うどんのねぎ編-

「もしここが東北です。って言われても、わかんないかも」

岡山駅から乗った在来線の車窓から見える景色は、あまりに馴染みのない、それでいてどこか見慣れた"いつもの"風景だった。ゴトゴト、ゴトゴト、ゴトゴト。東京ではあまり聞かない、落ち着く不器用な音に身をゆだねながら、少々失礼な第一印象をひとり言のように呟いた。

「たしかに、日本ってどこも景色似てるよね〜。東京だけが特殊なのかも」

こんなふうに嘘

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愛犬との15年と約束。

愛犬との15年と約束。

「約束だよ?」

「うん、約束。」

2021年11月20日、愛犬ももちゃんが亡くなった。15才と11ヶ月だった。寂しいけど、悲しくはない。ある約束をしてお別れをしたからだ。

ここに、15年間の思い出と、これからのことを残しておく。明日からもものいない世界を、ももといっしょに、生きていくために。

***

わたしが10歳のときに、突然やってきた柴犬がももだ。あれはまだランドセルを背負っていた頃

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夜のドライブ

夜のドライブ

夜のドライブが苦手だった。暗い車内には、彼の好きな曲が迷いなく流れ、街並みは容赦なく過ぎ去る。何もついていけない。何も捉えられない。

夜のドライブは、「どうせ終わる」ことの象徴だ。もうすぐデートが終わる。楽しかった時間が終わる。そのあと芋づる式に頭に浮かぶ言葉は、今度いつ会うのかわからない、もう会わないかもしれない、だった。

頭をぐるぐる......巡る、独りぼっちの感情たち。言葉にしてみれば

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大好きな人たちのおかげで

久しぶりに、夜の日記を。わたしは、大好きな人たちのおかげで、元気に、自分らしく、生きられているのだなと。夜の瞑想をしていたらぶわっと涙がでて止まらなくなった。

会社の上司・先輩・同僚。フリーランスの仕事でお世話になっている先輩やクライアントさん、編集者さん。同じライター仲間の友達や先輩方。いつも見守ってくださっている、社会人になってから出会った方々、そして学生時代からお世話になっている先生や先輩

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このさえない現実を夢みたいに塗りかえればいいさ

このさえない現実を夢みたいに塗りかえればいいさ

“そう何度でも 何度でも 僕は生まれ変わっていける
そしていつか捨ててきた夢の続きを”
──Mr.Children 蘇生

イヤホンから流れるみずみずしいメロディーに背中を押され踏み出した一歩は、吹き抜ける春風とともに空高く舞い上がった。

仕方なく、交互に動かしていた足を止める。澄み切った空を眩しく見上げ、踏み出した一歩は「新しい」なんて言葉で表現するには大げさな、平凡な一歩だった。

それでも

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元気です、でも寂しいです

元気です、でも寂しいです

「ここではないどこかへ」行きたい衝動が、人よりすこーしだけ多い自覚はある。

そんなわたしが月〜金お家に引きこもっている。仕事に支障はない。なのにモヤモヤは膨むばかり。今朝目覚めて最初に心に浮かんんだ言葉は「一週間、なっっがっ!」。外に出ていろんな刺激をもらい帰路についていた数ヶ月前がなつかしい......。「会いたい人には会いに行くが、モットー!」と鼻息荒くに言っていたのに、いつまで続くんだろう

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しょうがない、と許していい空。

しょうがない、と許していい空。

いつもと変わらない朝。雲ひとつない。薄いカーテンに太陽がまっすぐに飛び込むけれど、風に揺れかわされる。床には木漏れ日がゆらゆらと。カーテンはふくらみ、しぼむ。まるで呼吸をしているみたいだ。

みずいろの空は、濃くなく、薄くもなく。チューブ絵具のキャップをくるくると開け、キャンバスにみずいろを押し出した。少し湿った筆を乗せ、迷いなく引く。すっと大きく、世界中すみずみまで。今日の空は、そんな色だ。

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愛おしい暮らしのコツ

好きな映画のサントラを聴きながら、文章を書く。寝れない夜は、好きな映画を耳元でかけると安心してまぶたを閉じることができる。何かをプレゼントしたいけれど、とくに理由が見当たらないときは、待ち合わせの駅で花を買って少し照れながら渡す。家でひとりでごはんを食べるときは、必ず自炊をする。雨の日は、家で雨音を聴くに限るし、晴れた日はとにかく散歩が良い。

書いて、書いて、また書いて。それに疲れたら、こころが

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どんなにダメな自分でも、この人たちは一緒に生きてくれる。

「元気そうでよかった」

この言葉を、何度かけてもらっただろう。

何も言わずに、コーヒー片手に隣に座ってくれた。喫茶店でなんでもない話に宿るやわらかい眼差しは伝わったし、笑わせようと、笑ってくれたんだと気づいた。

「あのね、」そうわたしが口を開くのを、待ってくれていたんだと気づいたときは、叶わないと思った。

愛されてるじゃん。ねぇ、ちゃんと愛されてる自分を見てあげてよ

きっと、何かを伝える

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元気がないです。とちゃんと言えるように

元気がないです。とちゃんと言えるように

身体が重い。ソファに倒れ込んで何時間が経つだろう。文字通り、「何もしたくない」以外の感情が浮かばない。

仕事と彼氏をいっぺんに失い、風邪をひいて寝込んでいます。

悲劇のヒロインにもないれない、もはやただの、悲劇が目の前に横たわる。

ひと昔前の教訓から、捉え方を変えたり、考え方を柔らかくすることを意識して一瞬の笑顔を取り戻すことはできた。何かや誰かに八つ当たりをすることもなく。しょうがないよね

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私はあの子になれないけど、あの子も私にはなれないから。

私はあの子になれないけど、あの子も私にはなれないから。

「どうして自分だけ...」物事がうまく進まないと、悲劇のヒロインになりがちだ。

新卒で入社した会社を早期退職してしまった。転職にも失敗した。友達は、就きたかった仕事に就いて楽しそうに仕事をしている。彼氏となんだかうまくいかない。でも友達は彼氏とも仲が良く、楽しそう。

「もう、どうして自分だけ!」

世の中の自分以外の全てが、冬のイルミネーションのようにキラキラして見える。いいなぁ。すごいなぁ。

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「不安」を分解すれば、自分だけの道を切り開く道しるべになるから

「不安」を分解すれば、自分だけの道を切り開く道しるべになるから

不安になると、夜が怖くなる。明日が怖くなる。生きるのが、怖くなる。

胸の奥で渦巻く逃げ場のない、悲しく暗い感情。LINEを開き、親友や彼に何か言葉を打とうとするけれど、指は画面に置いてあるだけ。とばかりに動かない。

「寂しい」「つらい」「苦しい」どれも正解で、どれも間違いだった。

「なんて自分はダメなんだろう...」「こんな自分に生きてる価値があるのだろうか...」自己重要感が低いことも相ま

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自分を、恋人のように扱うこと。

自分を、恋人のように扱うこと。

「なんで、もっとこうしてくれないんだろう?」彼と付き合い始めて、いわゆる“不満”が心に浮かぶことが多くなったのは、ちょうどわたしが仕事のことで精神的に不安でいっぱいになってからだ。

なかなかタイミングが合わず、会えない日が続いていることや、生理前だということも相まって、むくむくと風船のように膨れる灰色のトゲトゲした気持ち。

彼からの悪気のない画面越しの文字に、イライラした気持ちをそのままぶつけ

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