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日記やエッセイを綴る場所

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日常の何でもないできごと、心を震わした瞬間を残したい。そんな想いでつらつらと文章を綴るマガジンです。
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#旅

親友 -旅のはじまり編-

親友 -旅のはじまり編-

からだを小刻みに揺らす新幹線の振動が、うつらうつらと瞼を重くする。となりでもうすでに目をつぶっているのは、いっしょに旅をする相棒だ。

「東京駅に7時集合で!」の約束通り、無事に合流した駅のホーム。見上げるとカラッと晴れた青空越しの電光掲示板が、博多までの停車駅をなんどもなんども教えてくれている。新幹線ってずいぶん遠くまでいけるんだなぁ。

するとなんの前触れもなく、目の前をスピードを緩めた新幹線

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親友 -うどんのねぎ編-

親友 -うどんのねぎ編-

「もしここが東北です。って言われても、わかんないかも」

岡山駅から乗った在来線の車窓から見える景色は、あまりに馴染みのない、それでいてどこか見慣れた"いつもの"風景だった。ゴトゴト、ゴトゴト、ゴトゴト。東京ではあまり聞かない、落ち着く不器用な音に身をゆだねながら、少々失礼な第一印象をひとり言のように呟いた。

「たしかに、日本ってどこも景色似てるよね〜。東京だけが特殊なのかも」

こんなふうに嘘

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「海の向こうにも人の人生が詰まっている」ということ。

「海の向こうにも人の人生が詰まっている」ということ。

PCR検査を受けずともチケット片手に自由に飛び立てた頃は、時間とお金ができるたびに海の向こうへと渡った。宿も行く場所も決めずに、ただ飛行機に乗るだけのときもあった。街を歩き、そこで感じたままに生きる。なにも決まっていない。ただ1秒、1秒、したいことをする。

道ゆく人と話し、売店で買い物をし、路面電車やバスに乗った。

今思うと、私にとって「自分の目で世界を見ること」がどれほど大切だったのかわかる

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私はあの子になれないけど、あの子も私にはなれないから。

私はあの子になれないけど、あの子も私にはなれないから。

「どうして自分だけ...」物事がうまく進まないと、悲劇のヒロインになりがちだ。

新卒で入社した会社を早期退職してしまった。転職にも失敗した。友達は、就きたかった仕事に就いて楽しそうに仕事をしている。彼氏となんだかうまくいかない。でも友達は彼氏とも仲が良く、楽しそう。

「もう、どうして自分だけ!」

世の中の自分以外の全てが、冬のイルミネーションのようにキラキラして見える。いいなぁ。すごいなぁ。

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好きだけじゃない。生きるために、旅をする

好きだけじゃない。生きるために、旅をする

海沿いを走る。海沿いを歩く。
なめらかに、健やかに、海に囲まれたこの国が好きだ。

そういえばわたしの祖国も、海に囲まれた島国なんだっけ。この国で広げられた地図では、極東にちょこんと書き加えられたような国が日本だった。

思わず笑ってしまう。

何がなんでも、日本でやる必要はないと思って

好きな映画の台詞が頭をかすめた。

楽しいから海外を旅をするわけじゃない。むしろ旅は面倒だ。危険は伴うし、体

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きみに会いに、街を歩く inキューバ

きみに会いに、街を歩く inキューバ

明日からの仕事が、真っ白になった。自分で選んだとはいえ、頭の中のほうが、真っ白に。その日の晩は、新聞配達のバイクの音も消え薄っすらと外が明るくなったころ、力尽きるように眠りについた。

夜が怖い。不安で眠れない日が続くと、夜が怖くなる。それでもその日は何の気なしにやってきた。

中米、キューバ

わたしは今、この場所で呼吸をし、混沌とした匂いのなか生きている。

“いつか”行ってみたかっ

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なんでキューバに行くの?に対する答えは

なんでキューバに行くの?に対する答えは

旅を好きになってから、どれくらいが経つだろう。学生の頃からバイトを掛け持ちしては、貯めたお給料のほとんどを航空券に注ぎ込んだ。

流行りの服やブランドのバッグよりも、こっちがいい!といつも迷わず自分が“欲しいもの”を指差してきた。

それは今も変わらない。

見たことない景色を見たくて。出会ったことのない人に出会いたくて。匂い、風、音、人の声。その全部を身体中いっぱいに閉じ込めるように、深く息を吸

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早く帰ってきてね。

早く帰ってきてね。

今頃、キャリーケースをゴロゴロ引いて慣れない空港をあっちでもないこっちでもないと、右往左往しているのだろうか。

2日前に彼の最寄駅で会ったときは、「まだキャリーケース買ってない!」と言うから驚いた。

何が必要かな?全然慣れてなくて...!とテンパりながら海の向こう、一週間の旅行に焦りまくる彼をケラケラと笑いながら見つめ、「夏休みの宿題は、最後にやる派?」と尋ねる。

すると、「うん!むしろ開き

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雨から逃げたくて、夢を編んだ

雨から逃げたくて、夢を編んだ

雨と雲に盛大に世界を支配され、花びらを広げられずにいるひまわりと、もう今年は出番ゼロなのでは?と土の中で嘆く蝉たちに同情していられないくらいわたしも限界だった...

世界一周する出発日を決めた。親友の誕生日の日にわたしは空港から旅立つ。会社のメンバーに応援してもらって見送られながら、約8ヶ月の旅だ。全大陸、30カ国以上を周って世界中の人の夢を聴いて発信をする。ときには大自然、ときには大都会を

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