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日記やエッセイを綴る場所

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日常の何でもないできごと、心を震わした瞬間を残したい。そんな想いでつらつらと文章を綴るマガジンです。
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#みさとん日記

しょうがない、と許していい空。

しょうがない、と許していい空。

いつもと変わらない朝。雲ひとつない。薄いカーテンに太陽がまっすぐに飛び込むけれど、風に揺れかわされる。床には木漏れ日がゆらゆらと。カーテンはふくらみ、しぼむ。まるで呼吸をしているみたいだ。

みずいろの空は、濃くなく、薄くもなく。チューブ絵具のキャップをくるくると開け、キャンバスにみずいろを押し出した。少し湿った筆を乗せ、迷いなく引く。すっと大きく、世界中すみずみまで。今日の空は、そんな色だ。

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愛おしい暮らしのコツ

好きな映画のサントラを聴きながら、文章を書く。寝れない夜は、好きな映画を耳元でかけると安心してまぶたを閉じることができる。何かをプレゼントしたいけれど、とくに理由が見当たらないときは、待ち合わせの駅で花を買って少し照れながら渡す。家でひとりでごはんを食べるときは、必ず自炊をする。雨の日は、家で雨音を聴くに限るし、晴れた日はとにかく散歩が良い。

書いて、書いて、また書いて。それに疲れたら、こころが

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どんなにダメな自分でも、この人たちは一緒に生きてくれる。

「元気そうでよかった」

この言葉を、何度かけてもらっただろう。

何も言わずに、コーヒー片手に隣に座ってくれた。喫茶店でなんでもない話に宿るやわらかい眼差しは伝わったし、笑わせようと、笑ってくれたんだと気づいた。

「あのね、」そうわたしが口を開くのを、待ってくれていたんだと気づいたときは、叶わないと思った。

愛されてるじゃん。ねぇ、ちゃんと愛されてる自分を見てあげてよ

きっと、何かを伝える

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元気がないです。とちゃんと言えるように

元気がないです。とちゃんと言えるように

身体が重い。ソファに倒れ込んで何時間が経つだろう。文字通り、「何もしたくない」以外の感情が浮かばない。

仕事と彼氏をいっぺんに失い、風邪をひいて寝込んでいます。

悲劇のヒロインにもないれない、もはやただの、悲劇が目の前に横たわる。

ひと昔前の教訓から、捉え方を変えたり、考え方を柔らかくすることを意識して一瞬の笑顔を取り戻すことはできた。何かや誰かに八つ当たりをすることもなく。しょうがないよね

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私はあの子になれないけど、あの子も私にはなれないから。

私はあの子になれないけど、あの子も私にはなれないから。

「どうして自分だけ...」物事がうまく進まないと、悲劇のヒロインになりがちだ。

新卒で入社した会社を早期退職してしまった。転職にも失敗した。友達は、就きたかった仕事に就いて楽しそうに仕事をしている。彼氏となんだかうまくいかない。でも友達は彼氏とも仲が良く、楽しそう。

「もう、どうして自分だけ!」

世の中の自分以外の全てが、冬のイルミネーションのようにキラキラして見える。いいなぁ。すごいなぁ。

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「不安」を分解すれば、自分だけの道を切り開く道しるべになるから

「不安」を分解すれば、自分だけの道を切り開く道しるべになるから

不安になると、夜が怖くなる。明日が怖くなる。生きるのが、怖くなる。

胸の奥で渦巻く逃げ場のない、悲しく暗い感情。LINEを開き、親友や彼に何か言葉を打とうとするけれど、指は画面に置いてあるだけ。とばかりに動かない。

「寂しい」「つらい」「苦しい」どれも正解で、どれも間違いだった。

「なんて自分はダメなんだろう...」「こんな自分に生きてる価値があるのだろうか...」自己重要感が低いことも相ま

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自分を、恋人のように扱うこと。

自分を、恋人のように扱うこと。

「なんで、もっとこうしてくれないんだろう?」彼と付き合い始めて、いわゆる“不満”が心に浮かぶことが多くなったのは、ちょうどわたしが仕事のことで精神的に不安でいっぱいになってからだ。

なかなかタイミングが合わず、会えない日が続いていることや、生理前だということも相まって、むくむくと風船のように膨れる灰色のトゲトゲした気持ち。

彼からの悪気のない画面越しの文字に、イライラした気持ちをそのままぶつけ

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好きだけじゃない。生きるために、旅をする

好きだけじゃない。生きるために、旅をする

海沿いを走る。海沿いを歩く。
なめらかに、健やかに、海に囲まれたこの国が好きだ。

そういえばわたしの祖国も、海に囲まれた島国なんだっけ。この国で広げられた地図では、極東にちょこんと書き加えられたような国が日本だった。

思わず笑ってしまう。

何がなんでも、日本でやる必要はないと思って

好きな映画の台詞が頭をかすめた。

楽しいから海外を旅をするわけじゃない。むしろ旅は面倒だ。危険は伴うし、体

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きみに会いに、街を歩く inキューバ

きみに会いに、街を歩く inキューバ

明日からの仕事が、真っ白になった。自分で選んだとはいえ、頭の中のほうが、真っ白に。その日の晩は、新聞配達のバイクの音も消え薄っすらと外が明るくなったころ、力尽きるように眠りについた。

夜が怖い。不安で眠れない日が続くと、夜が怖くなる。それでもその日は何の気なしにやってきた。

中米、キューバ

わたしは今、この場所で呼吸をし、混沌とした匂いのなか生きている。

“いつか”行ってみたかっ

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なんでキューバに行くの?に対する答えは

なんでキューバに行くの?に対する答えは

旅を好きになってから、どれくらいが経つだろう。学生の頃からバイトを掛け持ちしては、貯めたお給料のほとんどを航空券に注ぎ込んだ。

流行りの服やブランドのバッグよりも、こっちがいい!といつも迷わず自分が“欲しいもの”を指差してきた。

それは今も変わらない。

見たことない景色を見たくて。出会ったことのない人に出会いたくて。匂い、風、音、人の声。その全部を身体中いっぱいに閉じ込めるように、深く息を吸

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早く帰ってきてね。

早く帰ってきてね。

今頃、キャリーケースをゴロゴロ引いて慣れない空港をあっちでもないこっちでもないと、右往左往しているのだろうか。

2日前に彼の最寄駅で会ったときは、「まだキャリーケース買ってない!」と言うから驚いた。

何が必要かな?全然慣れてなくて...!とテンパりながら海の向こう、一週間の旅行に焦りまくる彼をケラケラと笑いながら見つめ、「夏休みの宿題は、最後にやる派?」と尋ねる。

すると、「うん!むしろ開き

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いつかじゃなく今、恋をしているから

いつかじゃなく今、恋をしているから

大きな手に吸い込まれるように手を繋ぐ。待ち合わせ場所まで走って向かうほど会いたい気持ちが膨らんでいたのに、いざ顔を見ると遠慮がちに言葉を選ぶ。嬉しさと、まだほのかに残る緊張が交差する時間。そうこうするうちに、もうすっかり「匂い落ち着く。」と甘えた声でぼやいている。

生ぬるい風とお酒の匂いが、ビルの間をすり抜ける夜。行ってみたかったカフェでご飯を食べ、公園でおしゃべりをして。デートの時間なんてあっ

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会社に入社した。彼氏ができた

会社に入社した。彼氏ができた

社会人になったのは一年とちょっと前のこと。それなのに。正社員と転職とフリーランスと・・・半年ごとにわたしの背中に書かれた看板は次々と付け替えられた。

つい一年前まで恋い焦がれていたひと。今では元気にしているかどうかさえ全くわからないのに、出会って数ヶ月のだいすきな彼の手は、簡単に握ることができる。

少し疲れて足を止めると、ここがどこだかわからない徒労感に襲われる毎日。もう持てません!とお手上げ

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背負いすぎない 曖昧なものさし

背負いすぎない 曖昧なものさし

雨の音。雨の匂い。雨の風。

全部が憂鬱で、全部が落ち着く。雨はいつも、やっかいだ。

晴れていれば良いというわけでもないのは、雨が好きな人もいると知ったから。明るい場所が好きな人もいれば、暗い場所が好きな人もいる。自分が「良い」と思っている形ほど曖昧なものはないのかもしれない。

これを言ったら。これを書いたら。

相手はどう思うんだろう?自分はどう思われるんだろう?

そんな行ったり来たりの永

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