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日記やエッセイを綴る場所

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日常の何でもないできごと、心を震わした瞬間を残したい。そんな想いでつらつらと文章を綴るマガジンです。
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#恋

早く帰ってきてね。

早く帰ってきてね。

今頃、キャリーケースをゴロゴロ引いて慣れない空港をあっちでもないこっちでもないと、右往左往しているのだろうか。

2日前に彼の最寄駅で会ったときは、「まだキャリーケース買ってない!」と言うから驚いた。

何が必要かな?全然慣れてなくて...!とテンパりながら海の向こう、一週間の旅行に焦りまくる彼をケラケラと笑いながら見つめ、「夏休みの宿題は、最後にやる派?」と尋ねる。

すると、「うん!むしろ開き

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いつかじゃなく今、恋をしているから

いつかじゃなく今、恋をしているから

大きな手に吸い込まれるように手を繋ぐ。待ち合わせ場所まで走って向かうほど会いたい気持ちが膨らんでいたのに、いざ顔を見ると遠慮がちに言葉を選ぶ。嬉しさと、まだほのかに残る緊張が交差する時間。そうこうするうちに、もうすっかり「匂い落ち着く。」と甘えた声でぼやいている。

生ぬるい風とお酒の匂いが、ビルの間をすり抜ける夜。行ってみたかったカフェでご飯を食べ、公園でおしゃべりをして。デートの時間なんてあっ

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星と、月と。本当は花火

星と、月と。本当は花火

夕日に染められたぬるい風に、締めつけられたお腹。浅い呼吸が混じる。浴衣を着て、巻いた横の髪を揺して。ちょこんとベンチに座り、イヤフォンを耳にした。

もう駅のホームで、かれこれ30分以上は待っている。それなのになぜか、ホームの時計の針はどんどん進み、次の電車に乗らないといけない、とおもむろに立ち上がった。

何本も電車を見送りながら、

「ごめん!浴衣、着る時間なかった!」

「スマホの充電器持っ

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恋と戦争

“相手の本当の気持ちなんて、永遠にわからないのだから。”

深夜のテレビから流れる音が、エアコンの風で冷え切った身体に絡みついた。

捕まえたと思ったら指先をするすると通り抜け、おにぎりを握るようにふわり両手で優しく包み込んだ途端、しゅんと逃げていく。追いかけていたのは自分の気持ちだ。

恋をした日、恋が叶った日、恋に破れた日。

長い1日の中で、その瞬間だけが世界を止める。あれこれ心配したって、

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