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日記やエッセイを綴る場所

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日常の何でもないできごと、心を震わした瞬間を残したい。そんな想いでつらつらと文章を綴るマガジンです。
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#恋愛

夜のドライブ

夜のドライブ

夜のドライブが苦手だった。暗い車内には、彼の好きな曲が迷いなく流れ、街並みは容赦なく過ぎ去る。何もついていけない。何も捉えられない。

夜のドライブは、「どうせ終わる」ことの象徴だ。もうすぐデートが終わる。楽しかった時間が終わる。そのあと芋づる式に頭に浮かぶ言葉は、今度いつ会うのかわからない、もう会わないかもしれない、だった。

頭をぐるぐる......巡る、独りぼっちの感情たち。言葉にしてみれば

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愛おしい暮らしのコツ

好きな映画のサントラを聴きながら、文章を書く。寝れない夜は、好きな映画を耳元でかけると安心してまぶたを閉じることができる。何かをプレゼントしたいけれど、とくに理由が見当たらないときは、待ち合わせの駅で花を買って少し照れながら渡す。家でひとりでごはんを食べるときは、必ず自炊をする。雨の日は、家で雨音を聴くに限るし、晴れた日はとにかく散歩が良い。

書いて、書いて、また書いて。それに疲れたら、こころが

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自分を、恋人のように扱うこと。

自分を、恋人のように扱うこと。

「なんで、もっとこうしてくれないんだろう?」彼と付き合い始めて、いわゆる“不満”が心に浮かぶことが多くなったのは、ちょうどわたしが仕事のことで精神的に不安でいっぱいになってからだ。

なかなかタイミングが合わず、会えない日が続いていることや、生理前だということも相まって、むくむくと風船のように膨れる灰色のトゲトゲした気持ち。

彼からの悪気のない画面越しの文字に、イライラした気持ちをそのままぶつけ

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早く帰ってきてね。

早く帰ってきてね。

今頃、キャリーケースをゴロゴロ引いて慣れない空港をあっちでもないこっちでもないと、右往左往しているのだろうか。

2日前に彼の最寄駅で会ったときは、「まだキャリーケース買ってない!」と言うから驚いた。

何が必要かな?全然慣れてなくて...!とテンパりながら海の向こう、一週間の旅行に焦りまくる彼をケラケラと笑いながら見つめ、「夏休みの宿題は、最後にやる派?」と尋ねる。

すると、「うん!むしろ開き

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いつかじゃなく今、恋をしているから

いつかじゃなく今、恋をしているから

大きな手に吸い込まれるように手を繋ぐ。待ち合わせ場所まで走って向かうほど会いたい気持ちが膨らんでいたのに、いざ顔を見ると遠慮がちに言葉を選ぶ。嬉しさと、まだほのかに残る緊張が交差する時間。そうこうするうちに、もうすっかり「匂い落ち着く。」と甘えた声でぼやいている。

生ぬるい風とお酒の匂いが、ビルの間をすり抜ける夜。行ってみたかったカフェでご飯を食べ、公園でおしゃべりをして。デートの時間なんてあっ

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恋と戦争

“相手の本当の気持ちなんて、永遠にわからないのだから。”

深夜のテレビから流れる音が、エアコンの風で冷え切った身体に絡みついた。

捕まえたと思ったら指先をするすると通り抜け、おにぎりを握るようにふわり両手で優しく包み込んだ途端、しゅんと逃げていく。追いかけていたのは自分の気持ちだ。

恋をした日、恋が叶った日、恋に破れた日。

長い1日の中で、その瞬間だけが世界を止める。あれこれ心配したって、

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